質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第五三号

内閣参質一六六第五三号
  平成十九年七月六日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員紙智子君提出北見道路に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出北見道路に関する質問に対する答弁書

一の1の(一)及び(二)について

 北見道路(一般国道三十九号のうち北海道北見市北上から北海道北見市端野川向までの区間のことをいう。以下同じ。)の総事業費は、平成十五年時点で四百四十億円と算出しており、その内訳は、工事費三百二十二億円、用地補償費十九億円、設計費等二十六億円、共通経費(事務費、職員給与、営繕費、機械費等)七十三億円となっている。また、再評価原案準備書(以下「準備書」という。)に記載のある全体事業費三百二十三億円は、平成十八年度に実施した事業再評価のために、「客観的評価指標及び費用便益分析マニュアルの改定について」(平成十五年八月一日付け国都街第三十九号国土交通省都市・地域整備局街路課長・国道分評第十五号国土交通省道路局企画課長通達)に基づき、それまでに実施した詳細設計等を踏まえ算出したものであり、その内訳は、工事費二百八十一億円、用地補償費十八億円、設計費等二十四億円となっている。この詳細設計等において、五箇所のトンネルの断面を縮小する、一箇所の橋梁を土工にする等の設計の変更によりコストの削減を行っている。
 また、準備書に記載のある総費用三百十五億円は、費用便益比を算定する際に、全体事業費三百二十三億円及び維持管理費六十三億円について、北見道路の事業実施期間における年度ごとの事業費及び供用後四十年間の年度ごとの維持管理費を設定し、これらを評価年度である平成十八年度時点の現在価値に換算し合計した数値である。
 北見道路についてお尋ねの「事業費四百億円」については承知していない。

一の2の(一)及び(二)について

 国土交通省としては、道路の渋滞を表す指標として、事業再評価に用いるべき指標については、「客観的評価指標及び費用便益分析マニュアルの改定について」において「並行区間等の年間渋滞損失時間及び削減率」及び「並行区間等における混雑時旅行速度が時速二十キロメートル未満である区間の旅行速度の改善が期待される」ことを用いることとしており、これを踏まえ、北見道路の再評価原案準備書説明資料(以下「準備書説明資料」という)においては、北見道路に平行する一般国道三十九号の年間渋滞損失時間及び北見道路の周辺の道路で旅行速度が時速二十キロメートルを下回る地点の状況について記載したものである。
 財団法人日本道路交通情報センターのデータには、旅行速度が時速二十キロメートル以下となる道路の混雑の発生状況が年間を通じて記録されていることから、旅行速度が時速二十キロメートルを下回る地点の状況の説明に当たり、これを用いたものである。その際、北海道開発局では、既に入手していた平成十六年の同センターのデータを利用したものである。

一の2の(三)について

 準備書に記載のある北見道路の計画交通量は、平成十一年度に国土交通省が実施した道路交通情勢調査の結果を基に、一般的な交通量推計手法である「三段階推定法」により推計されたものである。
 御指摘の「北見―帯広間の北海道横断道路が全面完成した場合、交通量は四千台/日とされている」については、承知しておらず、「北見道路の交通量の算定根拠を、北海道横断道路との比較により」お示しするのは困難である。
 また、準備書に記載のある北見道路の費用便益比二・三については、総便益の七百三十六億円を総費用の三百十五億円で除した値であり、平成十八年二月七日に開催した第二回国土開発幹線自動車道建設会議の資料に記載のある北海道横断自動車道の足寄から北見までの区間の費用便益比一・三三については、総便益の千八百四十五億円を総費用の千三百九十一億円で除した値である。

一の2の(四)について

 お尋ねの「走行時間短縮便益」とは道路整備の結果短縮する自動車の走行時間に対応する機会費用の額を、「走行経費減少便益」とは道路整備の結果減少する燃料費、油脂費等の自動車の走行経費の額を、「交通事故減少便益」とは道路整備の結果減少する交通事故による社会的損失額(人的損害額、物的損害額及び事故渋滞による損失額)を、「総便益」とはそれらの合計を意味するものである。
 また、これらの便益は、「客観的評価指標及び費用便益分析マニュアルの改定について」に基づき算出している。

一の2の(五)について

 北見道路の事業についての説明は、国土交通省において必要に応じ適切に行うものである。

一の3について

 準備書説明資料に記した道内周遊観光のルートは、旭川、美瑛、富良野等から層雲峡、温根湯温泉等を経由し、知床方面へ至るルートであり、当該ルート上にある北見道路の整備により、利便性の向上が期待されるとの説明には問題がないと考えている。

一の4の(一)について

 準備書説明資料においては、北見道路の整備による具体的な救急搬送の短縮時間については言及していないが、オホーツク圏における北見赤十字病院への搬送実績の図示とともに、自動車専用道路の整備による緊急搬送中の患者の体への負担軽減効果、訓子府町や置戸町等、周辺地域からの救急搬送の時間短縮への期待等について記されており、事業効果の説明としては適切になされているものと考えている。
 なお、事業効果の説明に当たっては、より分かりやすいものとなるよう今後とも改善に努めてまいりたい。

一の4の(二)について

 準備書説明資料においては、三次医療施設へのアクセス向上について参考となる情報としてオホーツク圏の各市町から北見赤十字病院への搬送実績を示したものであり、事業効果の説明として不適切ではないと考えている。
 なお、北見道路が完成した場合、北見赤十字病院への救急搬送時にどの市町からの搬送が北見道路を利用してなされるかについては、救急搬送の出発点の具体的な位置、オホーツク圏におけるその他の道路の整備状況や交通状況、冬季の積雪等の気象条件によっても異なるため、一概には言えないものと考えているが、御指摘の四市町以外にも広くオホーツク圏の市町からの搬送に利用される可能性があるものと考えている。

一の5の(一)及び(二)について

 北見道路の整備による自動車からの二酸化炭素の排出量の削減量は、北見道路の整備が行われない場合と行われる場合のそれぞれについて、北海道内の全体の道路網を走行する自動車から一年間に排出される二酸化炭素の量の総和を推計し、両者の差を算出したものである。
 北見道路の整備が行われる場合における自動車からの二酸化炭素の排出量の推計値には、北見道路を走行する自動車からの二酸化炭素の排出量の推計値を含んでいる。また、北見道路の整備後に北見道路を走行する自動車からの二酸化炭素の排出量は、一年当たり約七千九百トンと推計している。

一の5の(三)について

 国土交通省が道路事業について実施する事業再評価は、事業に要する費用と事業によって得られる様々な効果を勘案し、事業の必要性等について評価を行うことを基本としている。北見道路の事業についての再評価に当たって、当該事業の実施に伴う樹木の伐採が樹木の二酸化炭素吸収量に与える影響については道路整備によって得られる効果とはならないことから、勘案することとはしていない。
 なお、道路の整備に当たっては、二酸化炭素の排出量の削減等環境への負荷を軽減するため、道路の法面の緑化等を積極的に進めるとともに、地形の改変や生態系への影響を最小限に抑える工法の採用等、自然環境に配慮した道路の整備に努めることとしている。

一の6について

 道路事業の評価に当たっては、十分な精度の計測及び貨幣価値への換算が可能な走行時間短縮便益、走行経費減少便益及び交通事故減少便益について費用便益分析を行うとともに、それ以外の効果や事業の必要性についても、生活環境の改善等に係る指標を用いて幅広い評価を実施することとしている。
 また、事業の実施が環境に及ぼす影響については、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に基づき、大気環境、植物、動物等環境の構成要素に係る項目ごとに、調査、予測及び評価を実施しているところである。
 これらにより、現時点において、道路事業の評価は適正に行われているものと考えており、その在り方を抜本的に見直すべきとは考えていない。
 なお、道路事業の評価の手法等については、評価技術の向上等を踏まえつつ、今後更なる改善を図ることとしている。

二の1について

 環境影響評価法第二十一条第二項の規定により平成十三年三月に作成した北見道路の事業に係る環境影響評価書において、「工事着手前及び工事中において希少な鳥類の繁殖行動等が確認された場合、学識経験者の意見を聞き必要な調査を実施し、営巣に影響を及ぼす可能性があると判断された場合は、適切な保全対策を講ずる。」と記載しており、環境影響評価の実施後、オジロワシの繁殖情報を得たこと等から、国土交通省では、学識経験者の意見を聴くために、「北見道路整備における環境保全対策を考える懇談会」(以下「懇談会」という。)を設置しているところである。
 現在までに開催された懇談会においては、北見道路の工事がオジロワシに及ぼす影響について、トンネルの坑口とオジロワシの生活上重要な場との距離が十分に離れていることや工事に伴う騒音がオジロワシの営巣地付近に達するまでに十分に減衰すると考えられること等を勘案して、当該工事がオジロワシの繁殖活動に与える影響はないと考えられるとの意見が示されているところである。
 北見道路の供用後のオジロワシへの影響についても、当該環境影響評価書において「予測し得なかった著しい影響の発生がみられる場合等は、必要に応じて保全対策を実施する」こととしており、必要に応じ適切に対応してまいりたい。

二の2について

 国土交通省では、現在の懇談会の委員として、鳥類に関する学識経験者及び水圏生物に関する学識経験者を委嘱しており、オジロワシ及びニホンザリガニのモニタリング結果に関しての検証は可能であると考えている。

二の3について

 第一南ヶ丘トンネル等のトンネル工事に当たっては、周辺の湧水箇所の分布状況、水量等について継続して調査を実施しているところであり、工事が本格化する平成十九年度以降においては、北海道開発局において、調査結果を定期的に公表することを考えている。
 また、常呂川の水質、水位及び水量については、北海道開発局が定期的に調査を行い、調査結果を公表しているところである。

二の4について

 動植物の生態等に関するモニタリング調査については、モニタリングの対象ごとに、毎年度の調査を開始する前に調査方法、内容等について学識経験者の意見を聴いた上で実施している。また、平成十三年三月に作成した北見道路の事業に係る環境影響評価書において、「予測し得なかった著しい影響の発生がみられる場合等は、必要に応じて保全対策を実施する」こととしており、必要に応じ適切に対応してまいりたい。