第166回国会(常会)
答弁書第八号 内閣参質一六六第八号 平成十九年二月二十七日 内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 扇 千景 殿 参議院議員福島みずほ君提出兵庫県南あわじ市諭鶴羽山中小型航空機墜落事故及び同事故についての航空事故調査報告書に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島みずほ君提出兵庫県南あわじ市諭鶴羽山中小型航空機墜落事故及び同事故についての航空事故調査報告書に関する質問に対する答弁書 一の1について お尋ねの主管調査官及び航空事故調査官の所属する部署は国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(以下「委員会」という。)事務局である。委員会は航空・鉄道事故調査委員会設置法(昭和四十八年法律第百十三号。以下「設置法」という。)に基づく合議制の機関であり、報告書の議決、国土交通大臣への提出及び公表等は委員会の責任で行われているため、特定の事案を担当した事務局の職員たる主管調査官及び航空事故調査官の経歴、立場及び専門分野を明らかにすることは差し控えたい。 一の2について お尋ねの口述聴取の場所及び方法については、口述聴取の対象者の勤務地、居所等における面接又は電話によるものである。 また、お尋ねの口述聴取の対象については、委員会は設置法第十五条第一項の規定に基づき、国際民間航空条約(昭和二十八年条約第二十一号)の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続(以下「国際民間航空条約の規定等」という。)に準拠して調査を行っているところであり、口述については事故調査の目的以外では原則として開示してはならない旨国際民間航空条約の規定等に規定されており、また、事故調査に支障を来すおそれがあることから、御指摘の航空事故報告書(以下「報告書」という。)に記載しているもの以外についての答弁は差し控えたい。 一の3について 意見聴取については、設置法第十九条第一項の規定に基づき当該事故等の原因に関係があると認められる者(以下「原因関係者」という。)に対して行っている。御指摘の遺族は原因関係者に当たらないことから、当該遺族からの意見聴取は行っていない。 二の1の(一)について お尋ねの定時航空気象実況及び指定特別航空気象実況の内容は、御指摘の事故日の十五時四十八分ごろに入手が可能であった気象実況である。 二の1の(二)について 機長から求められた気象情報及び徳島飛行場の管制員が伝えた気象情報が高松空港の気象情報であったことは、徳島飛行場の管制交信記録に基づき認定されたものである。 二の2について お尋ねの「機長が南紀白浜空港で定時航空気象実況及び指定特別航空気象実況情報を入手した十五時四十八分ごろに取得できる徳島飛行場及び飛行経路上のレーダーエコー図」とは、報告書2.1.1で言及されている和歌山地方気象台南紀白浜空港出張所で入手可能であった気象情報に含まれるレーダーエコー図のうち十五時のものと考えられる。委員会は、この資料については入手している。 委員会は調査の過程で数多くの資料を入手するが、報告書には事故の直接の原因を説明するために必要と委員会が判断したもののみを添付し、公表しているところである。 二の3について お尋ねについては、事故原因の究明に直接関係がないことから調査を行っていない。 二の4の(一)について 御指摘のMTIビデオがレーダー・スコープ画面に出力されていたか否かについては記録が残らないため、確認することは不可能であり、報告書には管制員の口述聴取の結果から、「レーダー・スコープ画面には、航空機を確実に掴むためにMTIビデオが出力されていたものと推定される」と記載したものである。 二の4の(二)について お尋ねの事故当時のMTIビデオの記録は存在しない。また委員会は設置法第十五条第一項の規定に基づき国際民間航空条約の規定等に準拠して調査を行っているところであり、交信記録は事故調査の目的以外では原則として開示してはならない旨国際民間航空条約の規定等に規定されているため、答弁は差し控えたい。 二の5の(一)について 報告書の中で管制員が「当時は、徳島の南西に強いエコーがあった」と口述したと記載されているが、その理由は承知していない。 二の5の(二)について 御指摘のような事実関係は承知していない。 二の5の(三)について 交信記録によれば、管制員が機長に対して徳島の南西に強いエコーがあったことを伝えた事実は確認されていない。 二の6について お尋ねの「事故の発生した同時刻ごろ、他に徳島管制内に有視界飛行方式で低空飛行していた航空機」が存在していたか否かについては、記録がないため確認することができない。また、日ごろ、低空で飛行する航空機の高度が、諭鶴羽山より低いか否かについては承知していない。 二の7について 徳島飛行場の定時航空気象実況の観測値は徳島飛行場におけるものであり、異なる場所では気象が異なることはあり得るため、御指摘の観測値と報告書に記載されている「雲のため有視界気象状態を維持することができなくなり」という推定とは矛盾しない。 二の8の(一)について お尋ねの有視界航法機とは、有視界飛行方式で飛行する航空機(以下「VFR機」という。)のことを指すと考えられるが、VFR機は有視界気象状態を維持し、地表及び障害物からの間隔を維持して飛行しなければならないものとされている。機長からの要求によりレーダーモニターが実施されているVFR機が、明らかに有視界気象状態を維持できない状態であるのかどうか、また、地表及び障害物からの間隔を維持することが困難かどうかについては、VFR機からの通報がなければ管制官は把握できない。VFR機から管制官に対して、そのような状況について通報があった場合には、情報提供等の支援を行うことが管制官に期待される。 お尋ねの「通常」でない場合とは、天候が急変して有視界気象状態を維持できなくなった等の場合を想定している。その場合、機長が緊急状態を宣言すれば、レーダー誘導等の支援が行われることが管制官に期待される。 二の8の(二)について お尋ねの「レーダー交通情報「サービス」」とは、航空機に対して周辺を飛行する航空機に関する情報を通報することである。他方、「AIM-J(二〇〇五年後期版)」の第二百九十項に記載されている「ウェザーエコーをレーダーで観察した場合は情報を提供し、・・・協力」とは、航空機に対して気象情報を通報すること及び当該情報に基づき航空機から悪天候回避の要求があった場合に当該要求に対応することである。 二の8の(三)について VFR機に対するレーダーサービスは、あくまでも管制官の業務上支障のない範囲でのみ行われることが期待される業務であり、徳島飛行場の管制員についても気象に関する情報提供・協力の義務はない。 二の9について 報告書2.6.2に記載されている徳島飛行場の十六時及び十六時三十分の定時航空気象実況の観測値はいずれも、航空機が有視界気象状態を維持して飛行できる気象状態であると考えられる。 二の10について お尋ねの過去の事故例については、調査を行っていない。 三の1について レーダーエコー図からは、雲底の高さを知ることはできないため、お尋ねについてお答えすることは不可能である。 三の2について 御指摘の「南紀白浜空港出発前の十五時四十八分ごろに、徳島飛行場や、飛行経路上のレーダーエコー図等の気象情報」のうち、委員会は必要なものを入手している。 委員会は調査の過程で数多くの資料を入手するが、報告書には事故の直接の原因を説明するために必要と委員会が判断したもののみを添付し、公表しているところである。 三の3について 機長が徳島飛行場の定時航空気象実況を求めた事実は確認されていない。お尋ねの「機長が徳島飛行場の気象情報を求めなかった理由」については承知していない。徳島飛行場の管制員が、沼島付近の気象状況を把握していたとは承知していない。 三の4について 御指摘の事実については、レーダー航跡記録により確認できるが、徳島飛行場の管制員が、この事実を把握していたかどうかについては承知していない。 三の5について 報告書の中で管制員は「日頃より事故現場付近の海岸線を有視界飛行方式で低空で飛行する航空機が多い」と口述したと記載されていることから、事故機の飛行航路を進めばそのまま諭鶴羽山に衝突するとは認識していなかったものと考えられる。 三の6について 管制員の交信記録に、機長がレーダーモニターを要請したことが記録されていること及び報告書の中で管制員が「日頃より事故現場付近の海岸線を有視界飛行方式で低空で飛行する航空機が多い」と口述したと記載されていることから、事故機は自機との間隔確保を目的としてレーダーモニターを要請していたと考えられる。 三の7について 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第九十四条の規定から、VFR機は有視界気象状態を維持して飛行しなければならないため、機長から有視界気象状態が維持できない旨の連絡がなければ、管制員は当該VFR機は有視界気象状態を維持していると推定するものと考えられる。 三の8について 機長が徳島飛行場の管制員にレーダーモニターを要請したことは確認しているが、機長が自らの進路の安全についてもモニターされていると思っていたか否かは承知していない。 三の9について 御指摘の「他のモニターにおいて地形や雲が映るエコー図などが表示されていた」という事実については承知しておらず、お尋ねの調査は行っていない。報告書には、「管制員は同機は高度千四百フィートで飛行しており、VMCを維持できているとの前提でモニターを継続していたものと推定される。」と記載している。 四について お尋ねの解剖は、その解剖に係る死体についてその死亡が犯罪によるものである疑いがあったことから死因等を解明するために行ったものと承知している。 司法解剖は、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百二十三条第一項の規定に基づき関係当局から鑑定の嘱託を受けた鑑定人において、同法第二百二十五条第一項の裁判官の許可を受けて行うものである。また、司法解剖は、その司法解剖に係る死体について、その死亡が犯罪によることが明らかな場合又はその死亡が犯罪による疑いがあり、死因等を明らかにするため必要である場合に行うものである。 |