質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一六六第一号
  平成十九年二月六日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員大久保勉君提出地方公共団体の債務に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大久保勉君提出地方公共団体の債務に関する質問に対する答弁書

一について

 法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定により、政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができないとされているところであり、他の法律に特段の定めがない限り、地方債のうち円貨で支払われるものに係る債務について、政府が保証契約をすることはできないと解される。
 地方債証券のうち外貨で支払われるものに係る債務については、外資の受入れを促進するため、国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する特別措置に関する法律(昭和二十八年法律第五十一号)第二条第二項の規定により、特に政府が保証契約をすることができることとされているところである。

二について

 地方債については、当事者間で合意した場合等を除き、当初の約定通り支払われるものと承知しており、御指摘のパンフレットの記述はこのことを記載したものである。
 また、現行の証券取引法令においては、証券会社等が有価証券の売買等に関して虚偽の表示をする行為等を行うことが禁止されているが、証券会社等が行う勧誘が当該禁止行為に該当するかどうかは、個別事例ごとに判断されることとなる。

三について

 地方公共団体の監査機能は、一義的には監査委員が担っていることから、御指摘の事態を防止するためには、監査委員制度の運用の改善を図ることが肝要と考えており、包括外部監査をすべての地方公共団体に対して義務付けることは考えていない。
 総務省では、平成十八年八月三十一日に策定した「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針」において、各地方公共団体に対し、「当該地方公共団体の常勤の職員であった者の監査委員への選任は特にその必要がある場合以外には行わないこととし、地方公共団体外部の人材を登用することを原則とするなど、住民の理解と支持が得られる監査委員制度の運用に努めること」を要請しているところである。

四について

 夕張市の実質収支の状況を把握することができなかったのは、北海道企画振興部が平成十八年九月十一日に公表した「夕張市の財政運営に関する調査」で指摘されているように、同市において年度をまたがる会計間の貸付け・償還という手法がとられ実質的な赤字を見えなくする不適正な財務処理が行われてきたためと考えているところであるが、このことにより直ちに「地方公共団体の財政状況及び国の地方財政政策全体に対する疑念を市場に惹起させた」とは考えていない。

五について

 平成九年以降の過去十年間において、国から夕張市へ出向した例はない。
 また、過去十年間に北海道庁から夕張市へ派遣された者は、平成十八年九月から現在まで派遣されている三名であり、その役職は、財政再建対策室長、同室財政再建課長及び同課調整係長であると承知している。

六について

 財政再建計画においては、財政の再建を行おうとする団体の赤字の額、財政力、行財政規模、その他の事情を勘案して、個別の団体ごとに再建に必要な具体的措置が定められるべきものであり、特定の団体の財政再建計画が、他の地方公共団体において財政再建計画を策定する際の基準となるものではない。

七について

 地方財政再建促進特別措置法(昭和三十年法律第百九十五号)第六条の「公共的団体その他これに準ずる団体」とは、各種協同組合等の産業経済団体、社会事業団体、文化事業団体等公共的な活動を含む団体が広く含まれるものである。
 また同条は、罰則等の制裁措置の伴わない訓示規定であり、本条に基づく協力を拒むことは可能である。

八について

 平成十一年度より、毎年八月十五日時点の「国と地方公共団体との間の人事交流状況」について調査を実施し、その結果を総務省ホームページ等に公表してきたところであるが、当該調査は、お尋ねの事項を網羅したものではなく、お尋ねのすべての事項について調査を行うことは、膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。

九について

 地方公共団体の財政再建の過程において、地方公共団体への融資や地方債の引受け等を行った金融機関等に対し、元利の減免や期限の猶予等を求めることについては、総務省の研究会報告書(「新しい地方財政再生制度研究会」報告書(平成十八年十二月八日))において、地方行財政制度の抜本改革が進展した場合における選択肢として評価できるとしつつ、それを導入する場合には、様々な課題を解決する必要があると指摘されている。
 これを踏まえ、総務省では、新たな調査研究会を設置し、更に債務調整を導入する場合の課題について具体的な検討を深めていくこととしている。

十について

 産炭地域振興対策については、平成十一年八月の産炭地域振興審議会の答申「産炭地域振興対策の円滑な完了に向けての進め方について」において、石炭鉱業の構造調整という特殊な要因による影響の是正という産炭地域振興対策の目標をおおむね達成しつつあるものと認められたため、平成十三年に産炭地域振興臨時措置法(昭和三十六年法律第二百十九号)が時限を迎えるに際し、一般的な地域振興対策に移行させることとし、平成十八年度までの激変緩和措置期間後には同法の経過措置を終了することとされたところである。
 したがって、国としての産炭地域対策にかかる政策支援の枠組みは完全に廃止されることとなり、今後、産炭地域対策のために財政上の措置等を講ずる考えはない。