質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第八一号

婚外子の差別撤廃に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月五日

福島 みずほ   


       参議院議長 扇 千景 殿



   婚外子の差別撤廃に関する質問主意書

 婚外子相続差別撤廃を盛り込んだ民法改正は、法務大臣の諮問機関である法制審議会から一九九六年二月二十六日に答申されたが、十一年過ぎた現在も法改正が実現していない。唯一、差別を法律で規定しているのが民法九〇〇条四号ただし書とされ、法務省によると、相続差別規定の民法を持つ国は日本とフィリピンのみという。
 相続分の同等化は、国連の自由権規約人権委員会や子どもの権利委員会、女性差別撤廃委員会などが勧告してきた。とりわけ、子どもの権利委員会は、「嫡出(正統を意味する)でない子」という差別的用語を改めるよう求めた。また、ユニセフは、世界にある子どもに対する差別を六つ挙げているが、その一つに日本の婚外子相続差別を挙げた。世界の流れは嫡出概念を無くす方向にある。
 島田仁郎最高裁判所長官は、婚外子の相続分を規定した民法九〇〇条四号ただし書が、法の下の平等を定めた憲法一四条に違反するのではないかと争われた裁判の二〇〇三年の判決で、「非嫡出子が本件規定によって受ける不利益は、単に相続分が少なくなるという財産上のものにとどまらず、このような規定が存在することによって、非嫡出子であることについて社会から不当に差別的な目で見られ、あるいは見られるのではないかということで、肩身の狭い思いを受けることもあるという精神的な不利益も無視できないものがある」と補足意見を述べている。さらに「相続分を同等にする方向での法改正が立法府により可及的速やかになされることを強く期待する」と結んでいる。
 法改正を行わない立法府の責任は極めて重大であるが、社会的差別の解消は政府としても早急に行う責任があると考える。婚外子への差別や偏見の解消のために政府が最大限の努力を払われるよう、以下質問する。

一 法務省は、昨年二月二十八日に行われた省庁交渉で「あらゆる差別は許されないという観点からいろいろ啓発活動を行っている。すべての人の人権が尊重される社会の実現を目指して積極的に啓発活動を継続していきたい。」と回答しているが、これまで婚外子の社会的差別撤廃に言及したことはない。啓発活動を実効性のあるものにするために、具体的な対応策を示し婚外子の社会的差別の解消に努めるべきと考えるが、政府の見解と今後の取り組みについて明らかにされたい。

二 婚外子の社会的差別を解消するために様々な方法で啓発することが重要である。人権課題として取り上げることが重要であり、人権白書に婚外子の社会的差別解消を特記すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 国連の各文書では、原文で「children born out of wedlock」という表現をしている。外務省及び内閣府は「非嫡出子」と訳しているが、不正確であるだけでなく、子どもの権利委員会から差別的であるため改めるよう求められている用語である。今後は改めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。