質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第七六号

社会保険庁の機構改革の在り方等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月五日

山本 孝史   


       参議院議長 扇 千景 殿



   社会保険庁の機構改革の在り方等に関する質問主意書

 社会保険庁改革の在り方等については、衆参厚生労働委員会などの質疑においても明らかとなっていない点が少なくない。そこで、以下質問する。

一 法案の立案過程について

 「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」第一回(平成一七年七月八日)において、尾辻厚生労働大臣(当時)は「…その検討に当たりましては、役所のお手盛りの改革になることがないように、国民に開かれた場で御議論をいただくことが必要と考えまして、この『社会保険新組織の実現に向けた有識者会議』を設けることといたしました。」と述べている。にもかかわらず、社会保険庁の廃止と日本年金機構の創設という制度設計の基本が与党内での議論だけで決定されたため、日本年金機構法案の立案過程が不透明となっている。
1 「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」は第一二回(平成一八年八月一〇日 社会保険庁国年保険料免除問題に関する検証委員会報告等を聴取)以降長期間開かれず、第一三回は日本年金機構法案の国会提出後の平成一九年四月三日に、法案について事後的に説明を聞いている。同会議を平成一八年八月一〇日(第一二回)以降、日本年金機構法案の国会提出後の平成一九年四月三日(第一三回)まで開催しなかった理由を明らかにされたい。
2 日本年金機構法案の立案過程は、国民に開かれた場で議論されたと考えているか。政府の認識を示されたい。
3 日本年金機構法附則第二条には、施行後三年を目途として、機構の在り方等について全般的な見直しを行う旨の検討規定が設けられている。機構の在り方を再検討するためには、立案過程を透明化し公的な記録を残しておくことが必要である。よって、「日本年金機構法案」の立案過程を透明化するために、政府・与党における議論について、議事要旨を公開すべきではないか。政府の認識を示されたい。

二 天下り問題について

 「年金の福祉還元事業に関する検証会議報告書」(平成一七年九月二〇日)には、「三つの年金福祉還元事業に関連した公益法人が厚生労働省及び社会保険庁の職員の再就職先となっており、国民の目から見て、これら事業の必要性及びそのあり方について疑いをもたれる一因となった。」との記述がある。一方、柳澤厚生労働大臣は、日本年金機構の幹部職員の再就職について、現行の公務員並みの規制が必要であるとの認識を表明している。
1 具体的にどのような形で規制を掛け、どのように実効性を担保するのか明らかにされたい。
2 第一六六回国会で成立した国家公務員法等の一部を改正する法律と同様に、営利企業のみならず非営利法人への再就職も規制対象とすべきではないか。また、「現行の公務員並みの規制」では不十分ではないか。政府の認識を明らかにされたい。

三 設立委員、第三者機関の在り方について

1 日本年金機構の設立委員はどのような者を、どのような手続きで任命するのか明らかにされたい。
2 日本年金機構の役員、設立委員、基本計画策定の際に意見を聴く学識経験者、職員の採否決定について意見を聴く学識経験者については、厚生労働省出身者や年金業務の民間委託に関し利害関係を有する可能性がある民間企業関係者は排除するべきではないか。政府の認識を示されたい。

四 日本年金機構の人員削減の在り方について

 日本年金機構の職員数について、政府は、平成一七年一二月に策定した社会保険庁の人員削減計画を上回る削減を検討する趣旨の答弁をしている。しかし、年金記録問題が浮上した現時点では状況が大きく異なっている。年金記録の確認等の作業によって業務量の増大は必至であり、人員削減の在り方は抜本的に見直すべきではないか。政府の認識を示されたい。

五 民間からの職員採用について

 政府は日本年金機構の職員について、社会保険庁職員のみならず、民間からも積極的に採用するとしているが、年金業務の委託先企業等、年金事業と密接な利害関係を有する企業からの職員の採用には一定の制限を設けるべきではないか。政府の認識を示されたい。

六 不当労働行為の排除について

 日本年金機構に移ることを希望する社会保険庁職員は、設立委員が、人事管理の学識経験者から成る第三者機関の意見を聴いて採否が決まることとされている。この点に関し、労働組合(職員団体)に加入していることを理由に採用を拒否されるようなことがあってはならないが、政府の見解を明らかにされたい。

七 保険料財源流用問題について

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律(いわゆる「国民年金事業等運営改善法」)では、①事務費を全額国庫負担するという原則を見直し、平成二〇年度予算から保険料財源の充当を制度化する、②いわゆる福祉施設規定を見直し、公的年金事業の円滑な実施のために必要な事業(例えば年金教育・広報、年金相談、情報提供、オンラインシステムの運用等)には引き続き保険料財源を充てることができるとしている。しかし、保険料財源充当の理由付け(「受益と負担の明確化」、「公的年金事業の沿革な実施のために真に必要なもの」)が抽象的であり、新たな保険料濫費の温床となるおそれが大きい。平成一七年九月の「年金の福祉還元事業に関する検証会議報告書」が「まとめ」において指摘した事項を政府はどう具体化していくのか明らかにされたい。

八 年金事務所の新設・廃止について

 日本年金機構の発足に伴い、現在の社会保険事務所は「年金事務所」となる。その新設は、国会承認事項から外れることになるのか。また、今後、年金事務所の再編について地元自治体の理解と協力を得ることが必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

九 年金記録確認作業に必要なマンパワー等について

 マイクロフィルムや紙台帳の記録とオンラインシステムの記録との照合に掛かる費用・時間及びマンパワーを、それぞれ明らかにされたい。

十 時効特例法が年金財政に及ぼす影響について

 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(いわゆる「時効特例法」)により、記録訂正がなされた場合は時効を適用しないこととした。これに伴う給付費増は約九五〇億円(うち国庫負担約六〇億円)との粗い試算が示されているが、今後、記録訂正が広範に行われるようになると、金額は更に膨らむことが予想される。このことによる年金財政への影響をどのように見込んでいるか。また平成二一年までに行われる財政検証への影響について、それぞれ政府の認識を明らかにされたい。

十一 年金記録確認第三者委員会について

1 保険料納付記録がない場合の判断基準を「年金記録確認中央第三者委員会」が策定することとされているが、五〇の地方委員会が地域差なく判定できるのか明らかにされたい。
2 「年金記録確認地方第三者委員会」は総務省行政評価局の地方出先機関に設置することとされているが、特に管区行政評価局以外の地方事務所の行政相談担当は、ごく限られた人員体制しか有していない。十分な対応は可能なのか明らかにされたい。
3 本年六月一九日の参議院厚生労働委員会において、行政評価局長は、第三者委員会への申請に際し、全国に約五千人いる行政相談委員を活用すると述べた。しかし行政相談委員は、年金制度については全く素人である。適切に対応するためには、年金制度について一定の知識を持つ必要があり、そのための研修などを行うべきではないか。政府の認識を示されたい。
4 他方、行政相談委員は基本的にボランティアであり、負荷をかけ過ぎると引き受け手がいなくなり、本来の行政相談活動に支障を来すおそれも考えられるが、政府の認識を示されたい。

十二 社会保険審査官の在り方について

 日本年金機構の発足とともに、現在、地方社会保険事務局に置かれている社会保険審査官はブロック単位に設置される地方厚生局に置かれることとなる。年金記録問題への不安が高まっていること、年金記録確認第三者委員会が都道府県ごとに設置されることを考えると、当分の間、社会保険審査官は現在のように都道府県単位に設置するのが妥当ではないか。政府の認識を示されたい。

十三 NTTデータとの契約の在り方について

 会計検査院の調査により、社会保険庁とNTTデータとのデータ通信サービス契約においては、平成一八年度まで正式な契約書を交わさないまま「約款」のみで運用されてきたことが明らかにされた。正式な契約書を交わさなかった理由及び本年より長期利用計画に切り替えた理由を明らかにするとともに、この間の経緯を明らかにされたい。

  右質問する。