質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第七五号

郵便局のネットワークの維持とサービス低下に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月四日

吉川 春子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   郵便局のネットワークの維持とサービス低下に関する質問主意書

 今年十月一日に日本郵政公社(以下「公社」という。)は、日本郵政株式会社を親会社とする民間会社に再編・民営化が行われる。政府は、〇四年九月十日に閣議決定した「郵政民営化の基本方針」において、「郵政公社の四機能が有する潜在力が十分発揮され、市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多様なサービスが安い料金で提供が可能となり、国民の利便性を最大限に向上させる。」としていた。
 また、〇五年十月十四日参議院郵政民営化に関する特別委員会で可決された附帯決議では、「政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。」として、「国民の貴重な財産であり、国民共有の生活インフラ、セーフティネットである郵便局ネットワークが維持されるとともに、郵便局において郵便の他、貯金、保険のサービスが確実に提供されるよう、関係法令の適切かつ確実な運用を図り、現行水準が維持され、万が一にも国民の利便に支障が生じないよう、万全を期すること。簡易郵便局についても郵便局ネットワークの重要な一翼を構成するものであり、同様の考え方の下で万全の対応をすること。」外十四項目の事項を掲げている。
 しかし、現状においては、郵政民営化以前においても、利便性の低下と指摘せざるを得ない事態が進行しており、さらには、民営化会社から提供される予定となっているサービスについても、利便性の低下と指摘せざるを得ない内容が発表されている。
 こうした事態は、政府の掲げた基本方針及び国会の附帯決議から見ても、許されない事態であると考えられることから、以下質問する。

一 公社は郵便集配業務等の集約を行い、その結果、千を超える郵便局が集配郵便局から無集配郵便局となった。これに伴い、無集配となった郵便局では、郵便及び貯金・保険の外務職員が移動し、地域への利便性が低下し、しかも、地方の郵便局を中心に集約されている。これにより、例えば、これまで行っていた時間外窓口(ゆうゆう窓口)が閉鎖となっている。

1 郵便集配業務が集約され無集配となった郵便局数、そのうち郵便局株式会社法が想定する過疎地に存する郵便局数及び閉鎖された時間外窓口(ゆうゆう窓口)数を示されたい。
2 郵便集配業務の集約及びそれに伴う時間外窓口(ゆうゆう窓口)の閉鎖は、利便性の低下ではないのか。政府の認識を示されたい。

二 公社は、局外に設置されたATMについて再配置を進めている。この中には、病院や学校など社会的に必要と考えられるATMも含まれている。公社も、長期療養施設のATM等については、その必要性を認めている。病院や学校など社会的に必要と考えられるATMの撤去は、利便性の低下ではないのか、政府の認識を示されたい。また、公社も必要性を認めているATMについては、民営化によって判断基準が変更となり、撤去されるようなことがあれば、利便性の低下となると考えるが、政府の認識を示されたい。

三 郵便局ネットワークについては、郵政公社法第二十条によってその設置が郵政公社に義務付けられており、総務省令は、その設置基準として「公社は、法の施行の際現に存する郵便局ネットワーク水準を維持すること」を求めている。しかし、郵便局数は、公社発足時から後退しており、簡易郵便局においては、一時閉鎖が増加を続けており、郵便局ネットワークの水準は、後退を続けている。

1 公社発足時から、郵便局ネットワーク水準はどの程度後退しているのか。郵便局の減少数及び一時閉鎖によってサービス提供を停止している郵便局の増加数を郵便局の種別ごとに示されたい。また、そのうち郵便局株式会社法が想定する過疎地に存する種別ごとの郵便局数も示されたい。
2 郵便局株式会社に設置が義務付けられる郵便局のネットワーク水準は、民営化の際、現に存する郵便局ネットワーク水準が基準とされると聞いている。現行では、民営化時の郵便局のネットワーク水準は、公社の発足の水準より後退している可能性が高い。郵便局数が公社発足時より後退していた場合、郵便局株式会社に設置が義務付けられる郵便局のネットワーク水準を「(郵便局株式)会社発足の際現に存する郵便局ネットワーク水準」と規定することは、郵便局のネットワーク水準の切下げとなるのではないか。政府の認識を示されたい。

四 日本郵政株式会社は、先日、発足する郵便貯金銀行の手数料についての発表を行った。これによれば、例えば、振替口座への送金料金は、現行では、一万円まで百円、十万円まで百五十円であるものが、三万円未満が百二十円、三万円以上が三百三十円と改定される。全体として値上げになるのではないか。政府の郵政民営化の基本方針は、「多様なサービスが安い料金で提供が可能となり」としており、手数料の値上げは、基本方針違反ではないかと考えるが、郵便貯金銀行に限らず、郵便保険会社、郵便事業会社、郵便局会社において、現行料金が変更になるものについて、それぞれ示されたい。また、そのうち、値上げになると認識しているものについて、併せて示されたい。

五 六月十日付日本経済新聞は、「本年十月の郵政民営化で発足するかんぽ生命保険が簡易保険の特徴である『即時払い』の適用範囲を縮小する検討に入った」旨を報道した。手数料等の料金の変更だけでなく、こうした適用範囲の縮小も、利便性の低下になると考えるが、郵便保険会社に限らず、郵便貯金銀行、郵便事業会社、郵便局会社において、現行サービスの縮小が予定されているものについて、それぞれ示されたい。また、そのうち、値上げになると認識しているものについて、併せて示されたい。

  右質問する。