質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第六九号

改正介護保険法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月四日

岡崎 トミ子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   改正介護保険法に関する質問主意書

 平成十八年度から改正介護保険法が施行されたが、平成十七年十月から実施された施設給付の見直しを含め、多岐にわたる新設、変更などにより、介護保険サービスの利用者及び介護者、保険者である市区町村、介護保険指定事業者には少なからず混乱が生じているとの報告が相次いで届いている。高齢期の利用者の尊厳を守り、国民に信頼される制度の存続が重要な課題と考える。
 そこで、以下質問する。

一 介護保険法改正の効果について

1 改正介護保険法施行後一年が経過したが、その費用対効果、「重度中心型への転換」の進捗状況について具体的な数値を把握することは、今後の制度検証の作業のためにも重要である。改正後一年間の検証データを具体的に示されたい。
2 「平成十八年介護サービス施設・事業所調査結果速報」においては、平成十七年九月調査に比べて平成十八年九月時点の利用者数が、介護予防支援と居宅介護支援において約五万人、介護予防訪問介護と訪問介護において約四万人、介護予防福祉用具貸与と福祉用具貸与において約十六万人、介護療養型医療施設においては約一万人とそれぞれ減少しているが、高齢者人口の増加とともに介護ニーズが増える中、看過できない数字と考えられる。各サービスの利用者数減少の理由を具体的に示されたい。

二 介護保険料について

1 第三期における第一号介護保険料の全国平均は、第二期より二十四パーセント上昇した。介護保険法施行以降、低所得層の第一号被保険者の普通徴収未納付率が増加傾向にある。未納付者が介護給付の償還払いを利用することは想定しづらく、要介護状態になっても介護保険サービスを利用できない層の問題は深刻と考える。制度施行以降平成十八年度までの各年度の普通徴収未納付率の推移について示されたい。また、未納者の増加と低所得者への対策の関連に関して、サービス未利用の実態把握とその対応について、これまでの調査データ、取組及び今後の予定を示されたい。
2 平成十九年五月七日、厚生労働省老健局より「介護支援ボランティア活動への地域支援事業交付金の活用について」の通知が出されたが、第一号被保険者が要介護者等に対して介護予防に資する介護支援ボランティア活動を行った場合に、市区町村はその活動実績を評価してポイントを付与し、第一号保険料を軽減できるとされている。同通知では「保険料賦課自体を減額又は免除するものではない」とされているが、その理由を示されたい。また、ボランティア活動に対する報酬的性格が強いポイント制の導入、個々人の自発性に基づくボランティア活動を「介護支援ボランティア活動」に限定すること、またボランティア活動を提供する第一号被保険者とボランティア活動を提供される第一号被保険者という分離が生ずることなど、一般のボランティア活動との乖離が生じていることから、ボランティア活動並びに「介護支援ボランティア活動」に対する具体的な政府の見解を示されたい。

三 介護認定について

1 要支援認定、要介護認定の一次判定における基準は、施設入所者を対象とする高齢者実態調査に基づき樹形モデルが作成されているが、要支援・要介護認定者全体のうち、施設サービス利用者は十七パーセントである。多くの要支援・要介護認定者が居宅で生活している中で、居宅要介護者を対象とした調査データによる樹形モデルでなくして、判定結果の妥当性に疑問があるとの声が寄せられているが、認定基準の在り方について、政府の見解を示されたい。
2 介護保険法改正により、要支援認定が実施されている。見直しの検討段階で身体に不安定さのない認知症高齢者の取扱いが議論となったが、認知症自立度Ⅱ、及び半年以内に悪化が明らかな状態不安定の二点のみに該当する者が介護給付となり、非該当者は予防給付に移行し、更新認定により順次対象者が増えている。しかし、改正介護保険法施行後、医療機関への通院などが困難な認知症高齢者であっても要支援認定を受けているとの報告がある。要支援認定、要介護認定における認知症の取扱いが周知されていないために引き起こされている事態と考えられる。市区町村の介護認定審査会の委員並びに審査経過の公表による認定審査の透明性の確保とともに、認定結果についての検討、介護認定審査会への認知症高齢者の取扱いの周知が重要と考えられるが、これらの今後の具体的な方針を示されたい。あわせて、現行の認定基準が対象者の生活実態と合致しているか、一律の要支援認定が行われていないかの実態把握と検証が必要と考えられるが政府の見解を示されたい。また、認定審査会の変更率、区分変更申請率、行政不服審査請求の件数などのデータを明らかにされたい。
3 改正介護保険法では、要支援認定に基づく予防給付と要介護認定に基づく介護給付が実施されているが、要介護一の判定に関しては、一次判定の段階で要介護認定を行い、その後介護認定審査会における二次判定で要支援認定を行う構造となっている。六十五歳以上が中心となる認定申請者に対して、要支援認定になった理由を理解することができるよう、法的な根拠についての説明が必要と考えられるが、要支援認定者に理解できる具体的な説明について政府の見解を示されたい。
4 改正介護保険法が施行された平成十八年度以降、介護給付と予防給付の有効期限が六箇月との認定通知を受け取る高齢者が増加しているとの報告が寄せられている。認定期間の実態把握と高齢者の心身の状況変化についての検証が必要と考えられるが、政府の見解を示されたい。

四 介護報酬について

1 介護報酬改定によりターミナルケアが重視され、訪問看護と介護老人福祉施設を対象とする看取り加算が新設されたが、医療制度改革の中で「在宅死」が重視される中、訪問介護、認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護などにおける看取り加算も必要と考えられるが、政府の見解を示されたい。
2 平成十八年度の介護報酬改定により、介護職員の雇用条件と賃金、退職状況など介護サービス事業者の経営にどのような変化が及んでいるのか、また六年間赤字が続いた居宅介護支援事業所の経営的自立が達成されたのか、介護支援専門員の労働条件の改善が進んでいるのか、そして居宅介護支援と訪問看護に特定事業所加算、事業所減算が設定されたが、事業所の実態はいかなるものか、それぞれの実態把握が重要と考えるが、具体的な実態をそれぞれ示されたい。
3 現行の居宅介護支援には他の給付における利用者一割負担の設定がなされていないが、その理由を明らかにされたい。

五 支給限度額について

1 改正介護保険法により、介護保険サービスの支給限度額は要支援認定者で約二割から四割減となり、要介護認定者は現状維持となったが、支給限度額の縮小及び現状維持の妥当性について、明らかにされたい。
2 要介護認定者のうち実際に介護保険サービスを利用する者は、支給限度額に対する利用率が五割前後、軽度認定者は四割前後で、一割負担の厳しさから利用率が低いことが想定される。介護保険サービスを利用したくても利用できない高齢者についての実態調査が必要と考えられるが、政府の見解を示されたい。

六 居宅介護支援について

1 介護保険法改正により地域包括支援センターに主任介護支援専門員が配置された。居宅介護支援事業所の介護支援専門員への支援の効果並びに東京都国民健康保険団体連合会「苦情白書」に見られるように利用者の苦情が二番目に多い居宅介護支援事業所に対する苦情の軽減という効果が表れているのかどうか、主任介護支援専門員の新設の効果について明らかにされたい。また、明らかにできない場合には、今後明らかにするかどうか示されたい。
2 介護保険法では、要支援・要介護認定者による介護サービス計画(ケアプラン)の自己作成が認められているが、生活保護受給者に自己作成が認められていない理由を示されたい。
3 介護報酬改定では居宅介護支援事業所の介護支援専門員による介護予防支援担当件数が八件までと制限が加えられ、居宅介護支援事業所と契約を結ぶことができない要支援認定者が出ているとのことだが、その実態と具体的な対応策について示されたい。

七 介護給付費適正化について

 介護給付費適正化事業が進められているが、居宅介護支援事業所より医療保険と介護保険の受給について、要介護者の通院による人工透析治療に関して、病床における介護(透析室への移動や履物交換、透析衣への着替えの支援、透析のための体重測定、透析ベッドへの移乗やタオルなどの準備)が医療機関職員ではなく、介護保険法に基づく訪問介護員に依頼されている実態が具体例として寄せられている。介護保険と医療保険を組み合わせた給付についての実態把握と、受給者に不利益を及ぼさない介護給付費適正化事業実施のための適切な指導が必要と考えられるが、政府の見解を示されたい。

八 地域包括支援センターについて

1 改正介護保険法により新設された地域包括支援センターは、開設より一年が経過した。整備状況(対人口比)と交付金の現状(金額別状況)、平成十九年度以降の介護予防支援の契約件数増加への対応状況、そして地域支援事業である(一)介護予防事業、(二)総合相談・支援事業、(三)権利擁護事業、(四)包括的・継続的ケアマネジメント事業の各事業への資金投与による効果の具体的検証が必要と考えられるが、政府の見解を示されたい。
2 要介護者の医療機関退院時の相談先は、医療機関、地域包括支援センター、保険者が対応するのが適当と考えられるが、現実には入院前に契約していた介護支援専門員に多くの相談が寄せられている実態があるとの報告がある。地域包括支援センターの創設による地域ケアシステムの構築状況と総合相談機能の実態把握、常勤する社会福祉士、保健師あるいは看護師、主任介護支援専門員の配置数、構成割合など業務実態と三職種の専門性による効果の検証などが必要と考えられるが、これらについて、政府の今後の取組予定を示されたい。
3 地域包括支援センターは保険者の介護保険事業計画に基づいて整備が進められているが、日常生活圏域に一箇所の設置が目標とされ、要支援認定者にとって介護予防支援事業者は選択の対象とならないため、被保険者から自己選択を事実上否定するものではないかとの疑問が寄せられているが、政府の見解を示されたい。
4 地域包括支援センターは保険者である市区町村から介護予防支援を受託し介護予防ケアプラン作成支援を行っているが、要支援認定者の心身の状況の悪化により居宅介護支援事業所の居宅介護支援に移行する場合のケアマネジメント担当者の交替による課題の把握が必要と考えられるが、これらについて政府の今後の取組予定を示されたい。

九 介護予防事業について

1 介護保険法改正では、地域支援事業に介護予防事業が創設され、特定高齢者施策に基づく介護予防の推進が行われているが、平成十八年十一月現在、特定高齢者把握事業による特定高齢者の把握は高齢者人口の五パーセントの目標に対して〇・四四パーセントとの報告が行われている。このため、平成十九年度より特定高齢者把握のための基本チェックリストの基準を緩和したとのことだが、当初想定されていた特定高齢者が対象から除外、放置される可能性が高いと思われるが、これらについて政府の見解と具体的対応策を示されたい。
2 介護保険法は平成十二年度の施行から要介護と要介護の前段階として要支援までを対象としていたが、改正では可能な限り要介護とならないことを目的に認定非該当者のほか認定未申請者を対象に介護予防事業として一般高齢者施策、特定高齢者施策が実施されている。介護保険料の参酌基準は変わらないまま対象者が増える構造にあり、要支援認定者への給付が全般に抑制されることによる生活実態の悪化、家族介護の負担増による家庭内虐待の増加を懸念する意見が寄せられているが、これらについての政府の具体的対応策を示されたい。
3 介護予防事業における特定高齢者施策では、運動器の機能向上、栄養指導、口腔機能向上、認知症予防・支援、うつ予防・支援、閉じこもり予防・支援のプログラムが設定されているが、事業実施一年が経過し、各プログラムの対象者数、プログラムによる予防効果、プログラム終了後のフォローアップの実態についての中間報告が必要と考えられるが、これらについて政府の今後の取組予定を示されたい。

十 予防給付について

1 改正介護保険法により、要支援認定の判定を受け予防給付の対象となった要支援者の介護予防支援、介護予防サービスについて、利用者の満足度はいかなるものか、「介護予防」の中心的サービスと位置付けられた介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーションについては、平成十七年度以前の軽度者の通所介護、通所リハビリテーションの利用率との比較による効果の検証、そして選択的メニューの運動器の機能向上、栄養指導、口腔機能向上について、(一)要支援認定者の選択的メニューの実施事業者数把握と実施効果検証、(二)選択的メニュー実施期間終了後の利用者の中止、継続、効果ありなどの介護予防効果の検証、(三)選択的メニュー利用者、保険者へのアンケート調査などによる評価の把握がそれぞれ必要と考えられる。また、「要支援者の潜在力を引き出し、ヘルパーが共に家事を行いながら、できるように指導し、本人の自立につなげる」という要介護状態を水際で阻止する介護予防の方向性、そして給付費削減という予防効果についての検証と評価が行われるとされているが、これらについての中間報告を示されたい。
2 平成十八年度以降、要支援認定を受けた要支援一、要支援二の介護予防サービス利用率が低いが、(一)地域包括支援センターによる介護予防支援計画の作成が間にあわない、(二)作成した介護予防支援計画が要支援者のニーズと合致せず利用に至らない、(三)福祉用具貸与のみを利用していた要支援認定者が利用できなくなった、(四)予防給付の必要度が低いと判断されたなどの理由が寄せられている。現状を把握する必要があると考えられるが、これらについての政府の具体的対応策を示されたい。
3 予防給付では介護予防訪問介護の介護報酬が月額定額制となったが、(一)対象となる要支援一、要支援二の利用者の利用時間及び利用金額の変化、(二)介護予防訪問介護に変更されたことによる「利用者の要介護状態への効果」の実態、(三)国会においては、介護予防訪問介護になっても「必要なだけ訪問介護は利用できる」との厚生労働大臣答弁があったが、「必要な利用が制限された」「自費利用に変えられた」「地域包括や市町村から、制度が変わり利用できなくなったと説明された」との報告がある。介護予防訪問介護の週ごとの介護報酬別(週一回、週二回、週三回以上)の利用時間の実態把握と、介護予防訪問介護の利用者及び予防訪問介護事業者へのアンケート調査などに基づく評価などその意義と課題の抽出が必要と考えられるが、これらについて政府の見解と具体的対応策を示されたい。

十一 訪問介護について

1 平成十八年度の介護報酬の改定により、訪問介護の生活援助では、同居家族がいる場合の利用に一律に制限が加えられるケースが増えている。「具体的な運用については、一律の基準で判断を行うものではなく、個々の事情に応じ、介護支援専門員、市町村等現場の良識ある判断によるべきものである」との留意事項が徹底されていないと考えられる。同居家族が障害者である場合、疾病がある場合、その他の必要がある場合には利用可能とされているが、ケース別の具体的定義と利用実態を示されたい。また、同一集合住宅の別階、別室、同一敷地内の別建物など世帯が別であっても「同居」と定義され、生活援助が利用できない実態があるが、「同居」の定義を明らかにされたい。
2 訪問介護では、通院時の院内介助は、原則医療機関の職務であり、訪問介護事業所の介護報酬とはならないのが原則だが、現実には院内介助に対応している医療機関はないとの報告が寄せられている。病院内での待機、診察室への移動、トイレ介助などが利用者負担となる実態もあり、また、医師に対して本人が病状を説明できない、服薬指示を理解できない時など、訪問介護員の同行が必要な場面も多々ある。利用者、事業者にとって深刻な課題であり、医療機関との連携が必要と考えられるが、これらについて政府の具体的対応策を示されたい。

十二 地域密着型サービスについて

1 改正介護保険法で新設された地域密着型サービスは、原則として当該保険者の地域の被保険者のみが利用することになったが、日常生活圏域ごとの設置計画では利用者の選択に資することができないと、事業者間の競争によるサービスの質の向上も果たせない可能性が高いとの指摘があるが、政府の見解を示されたい。
2 地域密着型サービスに移行した認知症対応型通所介護では、子世代の居宅への一時滞在時に利用可能だったサービスが地域限定となり、認知症高齢者の可動範囲が限定される可能性が高いとの指摘があり、また利用開始時には短時間利用から始め、マンツーマンの職員対応により段階的に慣れていく必要があるため初期加算が必要との意見も寄せられている。認知症対応型通所介護を含め認知症高齢者へのケアを充実させるための政府の見解を示されたい。
3 地域密着型サービスに新設された小規模多機能型居宅介護は指定事業者は微増状況にあるが、包括サービスであるにもかかわらず、介護報酬では、訪問介護の通院等乗降介助が除外されるほか、独居や高齢世帯の利用者にニーズの高い生活援助において、一日一人の訪問介護要員では人員不足、また介護報酬が低い、あるいは加算が少ないとの指摘がある。在宅認知症高齢者のニーズに応えるために再検討が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。
4 認知症対応型共同生活介護は地域密着型サービスに再編されたが、(一)市区町村指定により地域外サービスの選択ができず利用者がサービスの質を問えない、(二)都市部では地価を反映した家賃などが高額にもかかわらず、補足給付の対象外のままであるため低所得者の利用ができない、(三)一人夜勤体制では、医療連携加算の算定条件を満たしても、ターミナル加算などで職員配置増ができない限り看取り介護はできない、(四)現行の介護報酬とケアマネジャー不足の中で計画作成担当者を確保できず、介護報酬の減算により閉鎖する事業者が出ているほか、介護職員のパートが進んでいる、などの課題が寄せられている。今後増加することが推定されている認知症高齢者へのケア体制の再検討が必要と考えられるが、その具体的対策を示されたい。

十三 介護職について

 居宅サービス、施設サービスともに介護職、看護職の人材不足から社会資源の減少が指摘されている。介護保険並びに医療保険にかかわる人材育成と支援の現状把握、退職理由などの全国実態調査が必要と考えられるが、これらについて政府の今後の取組予定を示されたい。

十四 福祉用具貸与について

 福祉用具貸与では平成十八年十月より、要支援一、要支援二、要介護一の利用者に対する利用品目の制限が実施され、介護認定により一律に電動車いすや特殊寝台の利用を打ち切られた者に対する自治体調査の結果、平成十九年四月より「例外給付」が認められた。軽度認定者の利用品目の制限による抑制効果、打切り後の利用者の動向、平成十九年四月以降の「例外給付」の利用状況について、具体的数値を示されたい。

十五 施設給付について

1 平成十七年十月より施設入所における家賃(居住費)と食費が全額利用者負担となり、平成十八年三月現在、施設入所者七十九万人のうち低所得者対策の対象とならない全額自己負担の利用者が四十五パーセントとの報告がある。平成十七年十月より平成十八年九月までの一年間に、「経済的理由」による施設退所者数、退所後の転居先、また現在の介護福祉施設の待機者数、そして施設入所が可能になっても経済的理由により入居できない者の数などの実態把握とともに、経済的理由により入居不可能な利用者に対する具体的対策が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。
2 平成十七年十月から実施された施設給付の見直しにより、利用者の居住費(滞在費)と食費の自己負担が増加したが、在宅介護者による高齢者虐待の表面化、摘発された千葉県の無届有料老人ホームに見られるような介護保険制度外の施設の増加などとの関連があると考えられる。平成十七年十月から実施された施設給付の見直し以降、退所した要介護者の人数と移転先の環境などについての具体的実態を示されたい。
3 平成二十四年度の介護療養型医療施設の廃止に向けて、介護老人保健施設や高齢者専用賃貸住宅などへの転換が促進されているが、具体的な転換状況について把握しているか。また、介護療養型医療施設利用者の平均要介護度四・二との報告による転換施設での対応について懸念があるとともに、介護老人福祉施設への入所が適切と思われるが、同施設における医療ニーズの高い利用者への夜間の安全確保のための介護職員配置増、看取りのための医療的ケアを整備するため看護職員増による二十四時間勤務体制の検討が必要と考えられるが、政府の見解を示されたい。

十六 家族介護者について

1 在宅介護において介護者が高齢者あるいは障害者であったとしても、介護老人福祉施設の入所基準が要介護者の介護度によってのみ判断される傾向があることに課題があると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 介護保険法創設時には家族介護者の負担の軽減も期待されていたところだが、改正介護保険法により家族介護者の負担が増加するのではないかとの懸念がある。介護放棄などの高齢者虐待、介護心中や介護殺人など介護をめぐる犯罪、介護支援専門員による支援困難の事例、そして働きながら介護する者の介護・育児休業法に基づく介護休暇の取得状況などの実態把握が必要と考えられるが、これらについて政府の具体的対応策を示されたい。

十七 サービスの質の向上について

 平成十八年度より都道府県において介護サービス情報の公表が実施され、同年度にまず九サービスの公表が行われたが、利用者の選択に資するという目的について、目的外利用への懸念とともに、利用者調査を含めた具体的な実態把握と検証が必要であり、また調査情報については書類の有無を確認するのみの調査に対して四万円前後の事業所負担が生じていることに対して事業所から不満の声が寄せられている。介護サービス情報の公表の効果と課題の検証が必要と考えるが、これらについて政府の今後の取組予定を示されたい。

十八 株式会社コムスンの不正行為への対応について

1 平成十九年六月六日、厚生労働省老健局振興課、介護保険指導室より都道府県、市区町村介護保険主管課に事務連絡「株式会社コムスンの不正行為への対応等に係る記者発表について」(以下「本事務連絡」という。)が出された。これにより株式会社コムスン(以下「コムスン」という。)の新規事業所指定が不許可となり、五月末現在、全国二千八十一事業所の指定更新が平成二十年度より順次、不許可となり、平成二十三年度には同社事業所は四百二十六事業所になることが予定されている。コムスンは関連会社に全事業を譲渡する対抗策を講じたが、厚生労働省の指導により譲渡凍結を検討することになった。譲渡凍結後、コムスンの新規指定、指定更新について、本事務連絡の内容に変更あるいは追加が行われたのかどうか、明らかにされたい。
2 コムスンの平成十六年五月末現在の都道府県別と市区町村別の利用者総数、都道府県別と市区町村別の利用者数、サービス別の利用者総数、都道府県と市区町村別のサービス別利用者数、都道府県別と市区町村別の更新指定の年度別減少数について、具体的数値を示されたい。
3 本事務連絡では、「利用者のサービスの確保」として、平成二十年四月以降に順次到来する指定更新時期までの間、利用者がサービスを継続できるよう自治体等を通じてコムスンの事業所への指導を徹底するとしているが、具体的な徹底内容を示されたい。
4 本事務連絡では「利用者の円滑なサービス移行」として平成二十年四月以降、利用者のサービス利用に支障が生じないよう、他の事業者への紹介など計画的な円滑移行を自治体等に指導を徹底するとしているが、具体的な指導内容を示されたい。特に、「利用者の受け皿となる代替サービスの確保」については、厚生労働省の具体的対応策とともに、利用者に不利益が生じた場合の具体的な対策について示されたい。
5 本事務連絡では「コムスンへの指導」として、コムスンに同社従事者の雇用確保への配慮を指導するとしているが、具体的な指導内容を示されたい。
6 本事務連絡では「再発防止のための対策」として有識者等からなる検討の場を設けるとされているが、厚生労働省担当局、検討委員の選考基準など具体的内容を示されたい。

  右質問する。