質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第五八号

公的年金の時効特例と戦没者等の妻に対する特別給付金の時効特例に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月三日

浅尾 慶一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿



   公的年金の時効特例と戦没者等の妻に対する特別給付金の時効特例に関する質問主意書

 間もなく会期末を迎える第一六六回国会(常会)においては、公的年金の時効消滅特例に関する与党衆議院議員提案による特例法が衆参両院における二度の強行採決で成立した。この法律で消滅時効の特例が適用されるのは政府の年金保険料納付記録等の管理に手落ちがあった場合であり、そもそも政府の側から時効消滅を主張すべき事例ではない。しかし、そのような場合に公的年金の時効消滅に特例を設ける法律が成立した以上、同じく政府の不手際で時効消滅した戦没者等の妻に対する特別給付金(以下「特別給付金」という。)についても時効特例を設け、法の下の平等を図るべきである。
 このような観点から、以下質問する。

一 特別給付金の時効消滅に関しては、平成一〇年三月一九日の参議院国民福祉委員会で、当時の小泉厚生大臣は「これからは(中略)行政側で把握できる特別給付金の対象者に対しては、新たな措置として未請求者の方々に個別に制度の内容を送付する。」と答弁しており、また、平成一五年三月二七日の参議院厚生労働委員会では政府参考人(河村博江君)が「今回の特別給付金の対象者、(中略)該当される方に対して制度案内の通知を漏れなく通知したいというふうに考えておりまして、(中略)この請求漏れ防止に万全の体制を整えたい」とも答弁している。
 平成一五年支給の特別給付金に関しては、支給対象者の実数は何人だったか、また、政府が制度案内の通知を個別に行ったのは何人だったのか、都道府県別に明らかにされたい。

二 平成一五年の特別給付金支給事務において、制度案内の通知が特別給付金対象者全員に漏れなく出されたのではなかった場合、右の国会答弁に沿った対応をしなかった理由は何か、また、その結果特別給付金を時効消滅させてしまった方が多数生じたことに対して政府はどう認識しているか、それぞれ明らかにされたい。

三 特別給付金については、制度創設時の衆議院社会労働委員会(昭和三八年三月二〇日)において、山本政府委員が「万一にも権利の上に眠るというようなことがあっては、せっかくの法律をつくった役割を果たし得ませんので、(中略)所定の時間に十分請求ができるように、御指摘の点は十分心して行政に当たっていきたい」と答弁している。かかる答弁に、一で指摘した政府答弁も合わせ鑑みれば、政府は特別給付金の対象者に制度案内の通知を個別に送付すべき作為義務が制度創設時からあったのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

四 公的年金の時効特例法については、平成一九年五月三〇日の衆議院厚生労働委員会における内閣への意見聴取に対し、柳澤厚生労働大臣は「政府としては異議はありません」と答弁している。なぜ異議がないのか、政府の見解を明らかにされたい。

五 さきに民主党参議院議員が参議院に提出した「戦没者等の妻に対する特別給付金支給法による特別給付金の支給に係る時効の特例等に関する法律案」に対しては、政府は異議があるのかないのか、理由を付して政府の見解を明らかにされたい。

六 公的年金の時効消滅も、特別給付金の時効消滅も、政府が被保険者や支給対象者に関する情報管理や該当者への通知という作為義務を怠ったことに原因がある点は共通すると考えられるが、それぞれの時効特例について政府の対応に差があるとすればどのような理由に基づくのか、政府の見解を明らかにされたい。

七 戦没者等の妻の方々は「夫への召集令状は漏れなく個別に配達され、戦死した。残された妻を見舞う給付金ならば丁寧な案内があって当然ではないか。」とご高齢にもかかわらず残念な思いをされている。政府は、特別給付金の通知が来ないことによりその受給権を時効消滅させてしまった戦没者等の妻の方々に、陳謝の意を表すべきではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。