第166回国会(常会)
質問第四八号 京都議定書の目標達成に向けた政府の認識等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成十九年六月十五日 福島 みずほ
参議院議長 扇 千景 殿 京都議定書の目標達成に向けた政府の認識等に関する質問主意書 地球温暖化が加速度的に進む中、地球規模で気候変動が起きている。この状況に対処するために先進国を中心に京都議定書が制定され、世界各国は実効性のある政策の立案と実施が求められている。日本は、京都議定書を守るために六パーセントの二酸化炭素削減を求められているが、現在、具体的な目標達成に至る対策が提示されていない。 そこで、以下質問する。 一 日本経団連などの環境自主行動計画は、純粋な任意の計画ではなく国の政策である京都議定書目標達成計画(以下「達成計画」という。)に位置付けられている。しかし、達成計画は「日本経団連自主行動計画目標が十分に達成され、また、個別業種が自らの自主的な目標達成に向けて積極的に取り組むことが奨励される」などと記述され、あいまいな点が多い。目標未達成の場合に、誰がどのように責任を取るのか、政府の見解を示されたい。また、責任関係を明確にするため、経団連自主行動計画については、政府と協定を締結することが考えられるが、政府の見解を示されたい。 二 経団連自主行動計画には原単位目標をとっている業界も多く含まれているので、各業界が目標を達成したとしても、「二酸化炭素排出量を一九九〇年度レベル以下に抑制する(一九九〇年度比ゼロ)」という経団連の産業・エネルギー転換部門三十五業種全体の二〇一〇年度の目標が達成できない可能性がある。この点に関し、政府の認識を示されたい。 三 「一九九〇年度比ゼロ」という経団連の産業・エネルギー転換部門三十五業種全体の目標はその水準が高くなく、各業界の目標も多くは余裕を持って達成可能であり、まだまだ削減できる余地が大いにあると考えるが、政府の認識を示されたい。また、削減する動機付けが乏しいので、削減余地のある企業に対して削減を動機付けるような経済的手法が必要だと考えるが、政府の認識を示されたい。 四 「平成十九年度電力供給計画」の概要によると、二〇〇六年度の石炭火力による発電量は一九九〇年度と比較すると三倍以上となっている。エネルギー価格や安全保障のことを考え、石炭も必要であることは認める。しかし、一九九二年には気候変動枠組条約、一九九七年には京都議定書が採択され、温室効果ガスの排出量を削減しなければいけない状況下であれば、単位当たり二酸化炭素排出量の大きい石炭火力の発電量増加に対し、抑制する方向での何らかの政策・措置が必要だと考えられるが、政策的に特に何も講じていなかった理由を含め、政府の認識を示されたい。 五 発電部門の二酸化炭素削減には、石炭火力発電を抑制・削減し天然ガス(LNG)発電などへシフトさせることが必要不可欠であると考えるが、政府の認識を示されたい。また、そのためには、石炭課税の強化、炭素税(二酸化炭素排出量当たりの税)の導入、発電量当たりの二酸化炭素排出量に上限を設ける規制などの政策が必要であると考えるが、これらの政策についての政府の認識を示されたい。 六 原子力発電の設備利用率の八十七パーセントから八十八パーセントは、過去にも一度も達成したことがない高い数字である。また、ごく常識的に考えても、当初見込んでいた耐用年数を超えて使用する以上、これまでよりも頻繁に何らかの停止が起こる可能性が高まると思われるが、二〇〇八年から二〇一二年にこの設備利用率を達成できるという根拠を示されたい。 七 二〇〇二年度以降、原子力発電の設備利用率は六十パーセントから七十パーセント程度で推移しており、今後急に上がる可能性があるとは考えにくい。確実に目標達成するためには、この程度の現実的な設備利用率の想定に改め、不足する分は別の対策を講ずるのが常識的だと考えるが、政府の認識を示されたい。 八 仮に二〇〇八年から二〇一二年も二〇〇五年度と同じ二酸化炭素排出原単位であった場合、目標達成には毎年七千六百万トンも不足すると見られる。 1 電気事業連合会は、不足分について海外からクレジットを買ってくると述べているが、このような膨大なクレジット調達が可能であるのか。政府の認識を示されたい。 2 電気事業連合会の目標は二酸化炭素排出原単位であるため、取得したクレジットの量だけ原単位の「分子」となる二酸化炭素排出量からマイナスするものと考えられるが、そのような見方でよいか。そのようであれば、現実に国内で流れている電気の実際の二酸化炭素排出原単位と、海外から取得したクレジットを充当して見かけ上で目標を達成した二酸化炭素排出原単位の二つが存在し、様々な混乱が生じると考えるが政府の認識を示されたい。 九 達成計画の運輸部門対策にある「アイドリングストップ車導入支援」、「テレワーク等情報通信を活用した交通代替の推進」については、ほとんど進捗がないようであると考えるが、その理由を含め政府の認識を示されたい。 十 国土交通省所管の運輸関係業界と建設関係業界の自主行動計画に対するフォローアップは不十分である。運輸業界については、二〇〇二年度又は二〇〇三年度の数字を記載した二〇〇五年一月十九日発表の「地球温暖化防止ボランタリープランの第四回フォローアップ結果」が最後であり、本年の審議会において国土交通省より最新結果を報告するとの発言があったが現時点まで公表されていない。建設業界については、二〇〇四年五月二十日の社会資本整備審議会で二〇〇二年度の数字が報告されたのが最後であったが、先日の本年六月十一日の同審議会で二〇〇五年度の数字が報告されたとはいえ、この間三年間ブランクがある。公開の審議会で毎年漏れなく行っている経済産業省所管のフォローアップに比して著しく差があり、問題と考える。この点についての政府の認識を示されたい。 十一 環境省のDVD「主婦の節約術 エコドライブ」や省エネルギーセンター、運輸会社などのエコドライブに関する情報によると、エコドライブを実行すると概して一割から四割程度の燃費向上となるという。仮に全自動車が一割の燃費を向上させれば、二千三百万トン、九〇年度比一・八パーセント分の削減が可能であり、コストをかけなくとも、すぐに大きな効果を上げられる。エコドライブ推進による削減余地についての政府の認識を示されたい。またチーム・マイナス六パーセントで呼びかけるだけでなく、経済的な動機付けなどの施策が必要だと思うが、政府の認識を示されたい。 十二 民生部門の対策として「建築物の省エネ性能の向上」、「BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)・HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の普及」、「住宅の省エネ性能の向上」があり、達成計画では四千五百二十万トンの削減が目安となっている。確かに建築物の省エネ化による削減余地は大きく、積極的に促進していくべきであるが、現状で省エネ性能の高い建築物や住宅の普及が加速されていない原因について、政府の認識を示されたい。 十三 建築物や住宅への省エネ基準を義務化することは、削減効果が大きい。全国温暖化防止活動推進センターの「省エネルギー住宅ファクトシート」によると、旧住宅金融公庫基準と次世代省エネ基準では、冷暖房にかかる光熱費は三分の一程度になるとのことである。耐震基準が義務化できているので、同様に省エネ基準も義務化できると思われるが、省エネ基準を義務化できない理由について、政府の認識を示されたい。 十四 世界一だった太陽光発電の導入量がドイツに抜かれ、風力発電は相変わらず低迷しているなど、二酸化炭素削減の柱になるはずの再生可能エネルギーの拡大が進んでいない。これは、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(いわゆるRPS法)の目標値が低いことなど、政府の政策が不十分なためと考えるが、政府の認識を示されたい。また、産業育成という観点からも、国際競争力の低下につながりかねない状況と考えるが、これに対する政府の認識を示されたい。 十五 二〇〇五年度で基準年比八・一パーセント増と、日本の温室効果ガス削減は進んでいないが、その主因は、各種の対策を推進する政策・施策が弱くて不十分であるからと考えるが、政府の認識を示されたい。また、現在行われている達成計画の評価・見直し作業では政策強化の方向が不十分であり、今こそ炭素税などの実効的な政策の導入・強化が必須であり急がれると考えるが、政府の認識を示されたい。さらに、達成計画に示されている国内削減・吸収源・京都メカニズムの割り振りで、実際に削減量の不足が生じた場合の政府の対応を示されたい。 右質問する。 |