質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第二九号

地球温暖化問題等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年四月十九日

荒井 広幸   


       参議院議長 扇 千景 殿



   地球温暖化問題等に関する質問主意書

 地球温暖化について、本年二月のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第一作業部会評価報告書は、温暖化が間違いなく起こっていることを明らかにするとともに、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因であるとほぼ断定している。また、二十一世紀末には、平均気温が最大で六・四度C上昇し、台風やハリケーンなどの強大化や海水面の上昇、集中豪雨、熱波の増加などを予測している。このように、地球温暖化は、今や人の健康、食糧、水資源、居住地、生態系など、あらゆる分野に関する脅威であり、「気候安全保障」の問題だけでなく、「人間の安全保障」そのものであるとして対処されるべき緊喫の課題である。
 地球温暖化への取組は国際社会共通の重要課題であり、来年の二〇〇八年は、京都議定書の第一約束期間が始まる年であるとともに、日本で開催されるG8サミットにおいて、米国、中国、インドを含む主な国々が参加している気候変動対話(いわゆるG20対話)の成果が報告されることになっている。したがって、本年は、これらの準備を行う極めて重要な年である。このため、政府は、国内外挙げて取り組むべき環境政策の方向を明示し、今後の世界の枠組みづくりへ我が国として貢献する上での大きな指針となる「二十一世紀環境立国戦略」を六月までに策定することなどを推進している。
 こうした状況を踏まえ、これまでの政府にない環境政策への安倍内閣総理大臣の姿勢を評価しつつも、以下提案を含めた質問をする。

一 政府は、地球温暖化問題は、「人間の安全保障」であり、人類の生存基盤そのものに係る基本的重要課題との切実な認識を持っているか明らかにされたい。

二 京都議定書における温室効果ガス排出の削減義務がない途上国、特に成長著しいアジア諸国では、エネルギー効率の悪さが温暖化の元凶である二酸化炭素の急増に拍車をかけており、その対策として、世界一とされる我が国の省エネ技術への期待が大きい。こうした観点を踏まえ、地球温暖化問題への戦略の一つとして、地球温暖化対策関連ODAの充実強化が是非必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 地球温暖化問題を始めとする地球規模問題への取組は、「政府開発援助に関する中期政策」の中の四つの重点課題として位置付けられてはいるが、この際、京都議定書の約束期間である二〇〇八年から二〇一二年の五年間を集中期間と位置付け、ODAを地球温暖化対策に傾斜配分すべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 世界の中の日本の役割の量と質に応じて、現在の途上国の在外大使館の充実強化が必要である。そこで、現在の在外大使館の各国別員数と派遣(出向)員の省庁別内訳を示されたい。また、世界に対する日本の役割、特に地球温暖化対策を考慮しても、在外大使館における環境省等からの派遣員増やその構成を見直す必要があるのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 国連安全保障理事会は、本年四月の議長国である英国の提案により、四月十七日、気候変動問題をテーマに公開協議を行った。地域紛争や大量破壊兵器拡散などを議題としてきた安保理が気候変動問題を取り上げるのは初めてである。私は、既に本年三月の環境委員会において、地球温暖化問題を人間の安全保障上から安保理での議題にする必要性を説いた。今後、来年の日本で開催されるサミットに向けて、安保理で、本年と同様地球温暖化問題を集中協議するよう働きかけることが、京都議定書を取りまとめた議長国としての責任と考えるが、政府の見解を示されたい。

六 政府は、一から五をもって、地球温暖化問題を来年日本で開催されるサミットの最重要テーマとして位置付け、地球温暖化対応の具体策を決定付けるようにすべきではないか。その際、我が国のポスト京都議定書の進め方について温室効果ガス排出削減量の数値を含め具体的に示し、世界をリードしていく姿勢が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

七 安倍アクションプランとも言うべき「二十一世紀環境立国戦略」については、我が国が地球温暖化問題へのリーダーシップを取ることにより、日本の顔を見せるべく、世界の動きとスケジュールを念頭にタイムリーかつ有効な戦略的行動を行えるよう、地球温暖化問題に特化した世界戦略にしたものにすべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

八 地球温暖化問題と関連して、今月、安倍内閣総理大臣と中国の温家宝首相との間で合意した「環境保護協力の一層の強化に関する共同声明」については、北東アジアのみならず世界規模で見ても大きな前進であり、安倍内閣総理大臣の見識と実行力に敬意を払い、高く評価する。その実効有らしめるために次の四点について提案するので、これに対する政府の見解をそれぞれ示されたい。

 1 環境共同声明における「二〇一三年以降の実効的な枠組みの構築に関する過程に積極的に参加する」との文言は、中国の温室効果ガス排出の削減義務化に向かう第一歩であり、高く評価する。政府は、こうした中国の責任ある姿勢を大切にするためにも、米国やインドの両国にも京都議定書やポスト議定書への責任ある参加をさらに働きかけるべきである。
 2 渤海・黄海区域及び長江流域などの重要水域における水質汚濁防止は喫緊の課題であり、すぐに行動すべきである。産学官共同及び技術と資金をパッケージにして直ちに実行あるのみである。それには、ポストODAの資金と技術支援の新枠組みを早急に決めるべきである。
 3 産学官の共同作業が大事である。産学官による実行委員会を設置するとともに、企業とNGOなど具体的参加による行動計画を作成するべきである。
 4 日中に加え、日中韓で環境対策事業を支援する環境ファンドを創設することにより、地球温暖化対策を始め環境対策事業において、民間の活力を利用し効果的成果をあげるべきである。

  右質問する。