質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

視覚障がい者のための選挙公報の音声データ化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年二月二日

福山 哲郎   


       参議院議長 扇 千景 殿



   視覚障がい者のための選挙公報の音声データ化に関する質問主意書

 公職選挙法(以下「公選法」という。)第百七十二条の二の規定により、都道府県の議会の議員、市町村の議会の議員又は市町村長の選挙については、任意での選挙公報の発行が認められており、多くの自治体選挙で導入されている。一人一票の民主的投票制度が日本に根づいて間もなく六十年を迎えようとしているが、投票価値の平等については様々な議論はあるにせよ、少なくとも投票権の平等は確保されているように思われる。視覚からの情報を全く得ることのできない者(以下「視覚障がい者」という。)についても、点字投票の導入により、実質的な平等が確保されていることは評価したい。
 しかしながら、視覚障がい者は紙媒体による選挙公報を自ら読むことはできない。国政選挙及び都道府県知事選挙については公選法第百五十条により政見放送が確保されているため、こうした問題は比較的意識されないものの、それ以外の首長選挙・地方議会議員選挙においては政見放送が認められていないことから、視覚障がい者は自ら進んで候補者情報を得ることに困難を強いられている。啓発の一環として都道府県選挙管理委員会の「選挙のお知らせ版」による候補者氏名等の点字化の取組もなされているが、情報量としても不十分と言わざるを得ない。投票権は憲法にも保障されている基本的人権のうち最も重要な権利であり、その行使のためには権利者が能動的に情報を得て自ら判断するという過程が不可欠である。そのためには、団体・個人等によるボランティア・善意による選挙公報の点字化・音声テープ化という対応で終わらせるのではなく、総務省・各自治体選挙管理委員会の責任において権利を保障することが強く求められる。
 そこで、以下質問する。

一 以前より、選挙公報の点字化の問題点は、「選挙公報の強調文字や写真・イラスト等を点字化することができないため、選挙管理委員会(以下「選管」という。)による調製では公平・公正を期すことができないこと」が挙げられている。一方、選挙公報の音声テープ化の問題点は、「選管が調製する場合、読み方の強弱や順番についての公平・公正を期すことができないこと」及び「テープでは頭出しが難しく、数十人規模が予想される基礎自治体選挙においては、特に最初から聞いていても途中で疲労してしまうため、テープの順番により不公平になると考えられること」とされている。選挙公報の点字化及び音声テープ化の問題点について、政府の見解を示されたい。また、併せてこれまでの取組も明らかにされたい。

二 選挙公報の点字化に関して、小川勝也参議院議員提出の「点字による選挙公報発行等に関する質問主意書」への答弁書(内閣参質一四三第三号)において、選挙公報は、掲載文又はその写しを原文のまま掲載しなければならないとされているため、現行法上これらを点訳して発行することはできない旨を答弁している。

1 「原文のまま」との表現について、写真・イラスト、文字の太字化・下線等による強調等が含まれると考えているか。政府の見解を示されたい。
2 1で「含まれる」との答弁をするならば、視覚障がい者が写真・イラスト、文字の太字化・下線等による強調をどのように認識すると考えているのか。政府の見解を示されたい。
3 障害者が認識できないことを表現できない限り視覚障がい者向けの選挙公報を発行することができないというのは、法が不可能なことを強いているのではないか。不可能なことを強いることにより、法が視覚障がい者向けの選挙公報を許さないというのは、憲法第三十一条に定める「適正手続の保障」に違反するのではないか。政府の見解を示されたい。
4 1で「含まれない」と答弁するならば、視覚障がい者向けの選挙公報を発行できない理由を詳しく示されたい。

三 音声テープ化についても問題点が指摘されているが、大別すると、「選管の調製では公正性を必ずしも期せないこと」及び「テープでは頭出しが難しく、不公平になること」の二点であると思われる。これらの問題を解決する方法として、候補者自らが音声データを記録し、それをテープではなく頭出しが容易なコンパクトディスク、ミニディスク、CD-ROM等(以下、「音声記録媒体」という。)への音声ファイルの保存等により希望者へ配布するという方法が考えられる。質問主意書や国会答弁等で見る限り、政府及び総務省は、音声データへの吹き込みを選管が調製することに拘泥しているように思われるが、選管が調製する限り、人手不足、時間不足、公正性が保てない等の問題が生じることは容易に想像できる。

1 政府及び総務省が、選管において音声データを調製することに拘泥する理由を示されたい。
2 候補者自ら(事情により代理人でもあることも含む)が音声データを記録し、それを「原文のまま」音声データによる選挙公報に掲載することについて、提出しない候補者がいた場合に不公平が生じるとの見解もあるが、紙面による選挙公報についても提出がない場合は掲載しないだけであり、問題はないと考える。どのような問題があり得るのか、法律的な側面も含め政府の見解を示されたい。
3 視覚情報である紙面による選挙公報でも、掲示場所による不公平が生じているが、なぜ音声テープの場合に生じうる順番の不公平さについて殊更問題とするのか。政府の見解を示されたい。
4 音声テープによる順番の不公平さは、インデックスの工夫も必要であるが、音声記録媒体を活用することで頭出しが容易になり解決できると考えるが、政府の見解を示されたい。
5 地方自治体が、視覚障がい者のための音声記録媒体による選挙公報を実現するための条例を制定することは許されるのか。また、許されないとすれば、その理由は何か。それぞれ政府の見解を示されたい。
6 条例制定が許されない場合、視覚障がい者のための音声記録媒体による選挙公報を実現するためには公選法改正が必要ということか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。