質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

地方公共団体の債務に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年一月二十九日

大久保 勉   


       参議院議長 扇 千景 殿



   地方公共団体の債務に関する質問主意書

 地方公共団体の債務における政府保証及び償還条項並びに財政再建団体制度に関して疑義があるので、以下の質問をする。

一 国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する特別措置に関する法律(昭和二十八年法律第五十一号)第二条第二項の規定によって、外貨建て地方債に政府保証がなされている。これに対して、円建て地方債には政府保証を行うことができる法令は存在せず、また、予算による裏付けもなされていない。財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十五条にかんがみれば、円建て地方債に対する政府保証は、現行において行われていないのみならず、そもそも行うことが許されないと考えられるが、このような解釈でよいか、政府の見解を示されたい。なお、地方債において、外貨建てのみ政府保証を行っている理由についても政府の見解を示されたい。

二 民法においては、講学上、債務不履行は「履行遅滞」、「履行不能」及び「不完全履行」の三つに分類されている。総務省が発行している「地方債の購入をご検討の方へ」というパンフレットでは、十一ページのQ&Aにおいて、「デフォルトすることはありません」と述べられているが、この「デフォルト」が民法の債務不履行と同義語であるとすれば、デフォルトとの表現に対する留意事項が書かれていないことからしても、前述三分類のいずれもが全く起こり得ないことを意味し、地方債においては、元利が確実に満額償還されることはもちろん、償還の方法や時期その他、合併等で償還主体が形式上変更される場合を除き、当初の発行条件がいささかなりとも変更されないこととなるが、このような解釈でよいか、政府の見解を示されたい。なお、この解釈が誤りであり、当初の発行条件の変更があり得るとすれば、金融業界一般の慣行等を考慮すると、「デフォルトすることはありません」等の表現を留意事項がないまま掲載されたパンフレットを使用して金融商品取引業者等が顧客を勧誘することは、証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)その他の法令における不当な勧誘行為(虚偽説明)に該当すると解釈できるが、政府の見解を示されたい。

三 北海道夕張市(以下「夕張市」という。)においては、不適正な財務手法により、一見したのみでは市の財政状況全体を把握することが困難になっていた。このような事態を防止するため、包括外部監査をすべての地方公共団体に対して義務付ける考えはないか、政府の見解を示されたい。

四 国及び北海道庁が夕張市の財政状況を正確に把握できていなかったことは、地方公共団体の財政状況及び国の地方財政政策全体に対する疑念を市場に惹起させたと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 過去十年間における、国及び北海道庁から夕張市へ出向した者の人数、夕張市在籍時の役職及び現在の役職を明らかにされたい。

六 夕張市は、地方財政再建促進特別措置法(昭和三十年法律第百九十五号、以下「本法」という。)によって財政再建計画の策定に取組んでいるところであるが、市民生活に大きな負担をもたらしかねない政策変更も報道されている。地方公共団体の中には、本法による夕張市の財政再建計画が国に承認されることをもって、いわゆる「ナショナルミニマム」の基準が実質的に定められ、今後、他の地方公共団体が本法による財政再建計画を策定する際の指標となると考える向きもあるが、政府の見解を示されたい。

七 本法第六条は、「国、他の地方公共団体及び公共的団体その他これに準ずる団体は、財政再建計画の実施について、当該財政再建団体に協力しなければならない。」と定めているが、この「公共的団体その他これに準ずる団体」とは、いかなるものを指すのか、政府の見解を示されたい。また、財政再建計画への協力について、協力を求められた団体の議決機関においてこれを否決することが可能か、政府の見解を示されたい。

八 過去十年間において、総務省(旧自治省を含む)から都道府県、政令指定都市、中核市に部長相当職以上で出向した者の出向先団体名、人数、出向時の役職及び現在の役職を明らかにされたい。

九 一般に、法人及び自然人の債務整理過程においては、融資等を行った金融機関等に対し、いわゆる「貸手責任」の観点から、元利の減免や期限の猶予等が求められる。準用財政再建団体の指定等、地方公共団体の財政再建過程においても、融資や地方債の引受等を行った金融機関等に対し、元利の減免や期限の猶予等を求めることのできる政策について検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

十 これまで準用財政再建団体に指定された地方公共団体及び現在の財政状況からして準用財政再建団体に指定される可能性のある地方公共団体の多くは、産炭地域に位置している。今後、産炭地域振興臨時措置法(昭和三十六年法律第二百十九号)又は同法の経過措置の復活等を含め、産炭地域に位置する地方公共団体に対する地方債の発行及び償還における特別措置を講ずる考えがあるか、政府の見解を示されたい。また、地方債の発行及び償還以外に、産炭地活性化基金の取崩しの許可とは別に、財政上の特別措置を講ずる考えがあるか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。