質問主意書

第165回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

北朝鮮によるミサイル実験及び核実験と日朝平壌宣言等との関係等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年十月十二日

白 眞勲   


       参議院議長 扇 千景 殿



   北朝鮮によるミサイル実験及び核実験と日朝平壌宣言等との関係等に関する質問主意書

 北朝鮮による本年七月五日のミサイル実験及び十月九日の核実験は、世界の平和と安定に対する重大な挑戦であり、断じてこれを看過することはできない。日本はこれまで二〇〇二年の日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との関係を捉えてきたところであるが、過去二回の実験を踏まえて次のとおり質問する。

一 ミサイル実験について

 ミサイル実験を受け、本年七月十五日、国際連合安全保障理事会は決議一六九五(以下「本決議」という。)を採択しているが、本決議の解釈について以下の質問をする。なお、答弁に際しては、解釈権の有無を理由に答弁を控えることなく、政府としての解釈をそれぞれ明らかにされたい。
1 本決議は、拘束力のある決議か。
2 本決議は、国連加盟国に拘束力ある形で国連憲章第七章に基づく強制的措置を採ることを求めたものか。
3 本決議採択の際、伊藤外務大臣政務官(当時)はそのスピーチにおいて、「・・・agreed on a set of binding measures that both the DPRK and Member States are obliged to comply・・・」と発言しており、国連加盟国すべてが遵守する義務を有する一連の拘束力ある措置に合意したと宣言している。この認識は今でも有効か。
4 本決議においては「要求する(require)」という単語が多用されているが、これは国連安保理決議において拘束力を持つ言葉として理解されるものか。
5 現時点において、本決議の規定をすべての国連加盟国が拘束力ある形で実施しているのか。遵守していない国があるとすれば、把握している限りにおいて明らかにされたい。
6 日本は本決議の提案国として、決議の理念及び規定を実現する推進力となるべきであると考えるが、日本はすべての国連加盟国が決議を遵守するようどのような働きかけを行ったのか。
7 ミサイル発射は日朝平壌宣言違反ではないのか。政府としては、同宣言中の「ミサイル発射のモラトリアム」をどのように解釈しているか。同宣言中の「ミサイル」には、七月に発射されたミサイルは含まれるという理解でよいか。

二 核実験について

 十月九日北朝鮮が核実験を行ったことに関し、日朝平壌宣言との関係、周辺事態に関する認識等について、政府としての解釈をそれぞれ明らかにされたい。
1 日朝平壌宣言は条約であるのか。
2 核実験は日朝平壌宣言に違反したのか。
3 違反したとする場合、宣言のどの部分にどのような形で違反したのか。
4 仮に北朝鮮が日朝平壌宣言を遵守している部分があるとすれば、該当する部分はどこか。
5 2に対する答弁を踏まえ、日朝平壌宣言はすべてが無効となるのか。それとも、同宣言の一部又は全部が有効なのか。将来、仮に日朝国交正常化交渉が行われる場合、日朝平壌宣言は引き続き交渉の基盤になり得る余地があるか。
6 条約法に関するウィーン条約(以下「本条約」という。)第六十条1においては、「二国間の条約につきその一方の当事国による重大な違反があつた場合には、他方の当事国は、当該違反を条約の終了又は条約の全部若しくは一部の運用停止の根拠として援用することができる。」と規定されている。また、同条3においては、「この条の規定の適用上、重大な条約違反とは、次のものをいう。(a)条約の否定であつてこの条約により認められないもの、(b)条約の趣旨及び目的の実現に不可欠な規定についての違反」と規定されている。
 (一) 仮に日朝平壌宣言が条約である場合、政府としては、現時点において本条約の規定にある重大な条約違反がないと判断しているのか。
 (二) 仮に日朝平壌宣言が条約でない場合であっても、二国間の重要な文書として、本条約の規定が一定程度類推適用可能ではないかと考える。政府としては、現時点においては、日朝平壌宣言の否定、宣言の趣旨及び目的の実現に不可欠な規定についての違反は存在しないと判断しているのか。なお、日朝平壌宣言が条約であるかないかの事実のみを示すのではなく、同宣言が無効でないことについての政府の認識に踏み込んで明らかにされたい。
7 今回の核実験は「周辺事態」に該当するか。仮に該当しないとする場合、政府としては今回の核実験を「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と考えていないということか。
8 今後の安保理における議論では、臨検(船舶検査活動)の可能性も検討することになるのではないかと思われる。現行法において、「周辺事態」以外のケースで、日本がその隣接した公海で臨検(船舶検査活動)を行うことは認められているのか。

  右質問する。