質問主意書

第165回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八号

政府開発援助の適切な使用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年十月十二日

白 眞勲   


       参議院議長 扇 千景 殿



   政府開発援助の適切な使用に関する質問主意書

 我が国の財政状況が厳しき折、政府開発援助についても適切な執行が確保されることが不可欠である。そのような認識に立ち、スマトラ島沖大地震及びインド洋津波被害に対するノン・プロジェクト無償資金協力事業(以下「本無償資金協力事業」という。)を例に取り上げつつ、政府開発援助に関し、次のとおり質問する。
 なお、答弁に際しては「用語が不明である」、「趣旨が不明である」等の理由で答弁を控えることなく、常識の範囲内で最大限答弁するよう努められたい。

一 援助の使用状況

1 ノン・プロジェクト無償資金協力の現状について
 本無償資金協力事業の現時点での契約締結額、資金供与額に対する支払い率、調達口座の残額をそれぞれ示されたい。
2 援助資金残額約百億円に対する利子がわずか六万円である件について
 本年五月三十一日の参議院政府開発援助等に関する特別委員会において、財団法人日本国際協力システム(以下「JICS」という。)理事長は調達口座に残る資金に利子は付かず、約百億円の資金残高に対する一年半にわたる利子がわずか六万円である旨答弁している。資金を供与してから一年過ぎた後も援助額の大半が未使用のまま残っており、実質的には多大な機会費用の損失が生じていると考えられる。調達口座は管理のためのものであり、利子は付かないとの一般的な説明では、この多大な機会費用の損失について説明しきれないと思われる。政府は、この機会費用の損失及びその防止策についての認識を明らかにされたい。また、JICSに対する損害賠償請求等をすべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 JICSの徴収する手数料について
 「スマトラ島沖大地震及びインド洋津波被害に対する二国間無償資金協力に関する質問主意書」(第一六四回国会質問第二二号)に対する本年二月二十四日付け答弁書では、本年二月十日までに計九千百七十七万三千三百三十三円の調達代理手数料がJICSに対して支払われたとされている。調達代理手数料は契約金額に二パーセントを乗じて得た金額に、管理費二千万円及び事務所維持費五百万円を合計した額であると承知している。仮に、現在までに支払われた調達代理手数料に管理費及び事務所維持費が含まれているとする場合、契約金額に相当する部分は、六千六百七十七万三千三百三十三円を二パーセントで割った約三十三億四千万円と考えることができる。しかしながら、本年九月に会計検査院から参議院に対して提出された「政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果についての報告書」によれば、本無償資金協力事業への供与額は百四十六億円であるが、本年三月末において依然として約百十六億円の残高が調達口座に残っているとのことである。つまり、この時点で執行された金額は約三十億円と見積もることができ、約三億四千万円もの差が生じている。JICSは援助の執行が進んでいない分についても調達代理手数料を徴収する慣行があるように推定されるが、このような慣行が存在するのか否かを含め、JICSの徴収する手数料に関する事実関係について明らかにされたい。
4 援助の適正さについて
 今回の支援において、著しく援助の執行が遅れていることは、本来の緊急支援の趣旨を大きく逸脱していることは否めず、ノン・プロジェクト無償資金協力という援助スキーム自体が不適当だったのではないか。政府は、迅速な援助執行の観点から、他の援助スキームと比して、ノン・プロジェクト無償資金協力が最善の選択であったと考えるか。もし最善であると考える場合、緊急無償や緊急開発調査等、他の援助のスキームとの相違を明らかにするとともに、その理由を詳細に述べられたい。

二 調達の在り方

1 本年五月九日の参議院外交防衛委員会(以下「本委員会」という。)において、JICS理事長は、本無償資金協力事業におけるインドネシアの放送局用家具の調達に関し、「情報省より情報をいただいて、それを、十一社を選んだということでございます。」との答弁を行っている。これではインドネシア側からの情報のみに依拠して調達を行ったということであり、援助の実施過程における汚職の可能性を排除できないのではないかと考えるが、政府の認識を示されたい。また、現時点まで情報提供をしたインドネシア情報省担当者の名前を明かしていない理由についても明らかにされたい。
2 本委員会におけるJICS理事長の答弁では、リスト作成の端緒となるたたき台をJICSが作成したのではなく、インドネシア側から提供があったリストをそのまま受け入れたと解釈できる。インドネシア側から提供のあった業者リストと最終的にJICSが採用したリストの間に違いはあるのか明らかにされたい。また、仮に、JICSの自発的な判断により調達業者のリストを選んだとする場合、本委員会でのJICS理事長の答弁は事実と異なるのではないか。政府の認識を明らかにされたい。
3 放送局用家具の調達は指名競争入札で行われたと思われるが、JICSはノン・プロジェクト無償資金協力における調達業者を決定するに際して、指名競争入札で行うことが許されているのか。また、指名競争入札を許容する、内規を含む規則等は存在しているのか明らかにされたい。
4 他の国に対するノン・プロジェクト無償資金協力において、同様の指名競争入札で物資を調達したケースはあるか。ある場合は、その個々の事例を示されたい。
5 指名競争入札制度は日本国内では種々の法的な制限を受けているが、そのような日本国内の扱いと比してJICSがこれまで認めてきた「指名競争入札制度」は規律が緩すぎるのではないか、政府の認識を示されたい。
6 仮に日本国内において、国が地方自治体から関連業者のリストの提示を求め、そのリストにのみ依拠して指名競争入札をする場合、国内法令上どのような問題点が生じうるか明らかにされたい。なお、上記の条件のみでは答弁が困難な場合、常識の範囲内で一定の条件を設けた上で答弁願いたい。
7 今回のような指名競争入札はインドネシアにおいては合法なのか。また、この点について、政府はインドネシア側と何らかの共通の理解に立っているか明らかにされたい。
8 今回の指名競争入札では事実上一社しか応札がないが、日本国内において、指名競争入札で事実上一社しか応札しない場合のその後の取扱いについて明らかにされたい。なお、今回、応札したものの失格になった業者がいたとの事実をもって、本問に対する答弁を済ませることは控えられたい。また、上記の条件のみでは答弁が困難な場合、常識の範囲内で一定の条件を設けた上で答弁願いたい。

  右質問する。