質問主意書

第165回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

消費者金融利用者及び多重債務者等の実態解明等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年九月二十九日

荒井 広幸   


       参議院議長 扇 千景 殿



   消費者金融利用者及び多重債務者等の実態解明等に関する質問主意書

 今般議論が行われている、いわゆる貸金業規制法及び出資法の見直しに当たり、グレーゾーン金利の問題や貸金業に係る登録制及び検査体制の整備、あるいは信用情報等の個人情報の適切な取扱いと消費者金融各社の適切な情報開示スキームの整備等を図るべきと考える。そしてその前提として、まず、消費者金融を中心とした無担保金融の利用者の全体像、多重債務者の借入の実態、消費者信用団体保険の現状、消費者金融各社と大手金融機関及び金融庁の関係等を明らかにする必要がある。これらの実態に関しては、本年五月十八日の参議院行政改革に関する特別委員会における小泉前内閣総理大臣との質疑のため、金融庁に調査依頼をしたところであるにもかかわらず、それ以来、明確な回答が返って来ておらず、質問主意書にて、その実態解明を改めて求めるものである。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 新聞報道によれば、全国信用情報センター連合会の調査により、消費者金融の利用者実態について、消費者金融利用者数約千四百万人、一人当たりの平均借入残高約百一万円、五社以上の利用者約二百三十万人という数字が示されているものの、その詳細はもとより、銀行系ローンやクレジットカード利用者等を含めた消費者向無担保金融の利用者実態の全体像が明らかとなっていない。政府は責任を持って、その全体像を明らかにすべきである。

1 全国信用情報センター連合会以外の各信用情報機関のデータも踏まえ、消費者向無担保金融利用者数の最新の推計を明らかにされたい。
2 1で示した利用者について、一人当たりの平均借入社数、借入額、借入残高、延滞の状況を示されたい。また、借入社数別の人数、借入額、借入残高、延滞の状況についても同様に示されたい。
3 1で示した利用者について、利息制限法上の上限金利を超える借入をしている者の人数、件数、一人当たりの平均借入金額を示されたい。また、利息制限法上の上限金利を超えて支払われる一人当たりの平均利息金額を示されたい。

二 新聞報道によれば、消費者金融各社は貸付に当たり消費者信用団体保険への加入を利用者に強制しており、一般的な保険金は三百万円とされている。昨年度の自殺による債権回収は三千六百四十九件に上っているが、消費者金融各社は裁判で確定した債権金額を上回る保険金を受け取っており、これは、債務者の命を担保に返済を確保しているといえる。こうした中、政府においては、社団法人生命保険協会(以下「生命保険協会」という。)に対し、被保険者の同意確認や死亡診断書の確認等のガイドラインの策定等を要請していると承知しているが、消費者信用団体保険の実態、消費者金融各社の保険契約の利用状況の全体像及び生命保険各社から消費者金融各社への保険金支払の実態を、責任を持って明らかにすべきである。

1 貸付契約に際し、消費者金融連絡会に加盟する消費者金融各社(以下「大手消費者金融各社」という。)の消費者信用団体保険の付保状況、また、中小消費者金融各社の付保状況をそれぞれ示されたい。さらに、消費者向無担保金融の利用者のうち、消費者信用団体保険の被保険者数及びその割合を明らかにされたい。
2 1で示した被保険者について、一人当たりの平均保険契約件数及び保険金額を明らかにされたい。また、保険契約件数別の人数及び一人当たりの平均借入額を示されたい。
3 利用者の借入金額や借入機関等によって、消費者信用団体保険の保険金額、保険期間、保険料に違いはあるのか。その実態を明らかにされたい。また、実際に支払われる保険金が本来の債務額を超えることがないよう担保される仕組みであるのか。実際に保険金が支払われているケースについて、利用者の借入金額別にみた支払件数及び一人当たりの平均支払金額を明らかにされたい。
4 借入契約の際の被保険者の同意確認や死亡保険金の支払に当たっての死亡診断書の確認等の方法を明らかにするとともに、すべての支払事案に関してその確認が行われているのか示されたい。
5 保険金支払に当たって、死亡診断書の確認を不要とし、家族に知らせないなど、不当に消費者金融側に有利な運用ルールが作られているのではないか。適正な保険金支払のための規制を政府はどのように行っているのか明らかにされたい。

三 消費者金融各社は金融機関から二パーセントにも満たない超低金利で資金調達を行いながら、二十パーセントを超える高金利で利用者に貸付け、利益を上げている。消費者金融各社の背後には銀行、保険会社等といった大手金融機関の存在があるが、多重債務者の問題は、単に消費者金融業界の問題ではなく、銀行、保険会社等が、金融という資金循環を利用して、最終的に多重債務者からの資金を利益として得ているという点に、問題の本質がある。したがって、議論の前提として、このような金融業界の実態、そしてそれを監督する金融庁との関係を明確にする必要がある。なお、答弁に当たっては、金融機関の社会的責任を踏まえ、固有名詞を示されたい。

1 いわゆる都市銀行のほか、生命保険協会又は社団法人日本損害保険協会に加盟する会社(以下「大手金融機関各社」という。)と大手消費者金融各社間における貸付額及び貸付金利を明らかにされたい。
2 大手金融機関各社と大手消費者金融各社の資本関係について、出資関係を個別に明示されたい。また、相互間の役職員の派遣状況及びそれ以外の人的交流の状況について、役職名、時期・期間、人数をそれぞれ示されたい。
3 大手金融機関各社、大手消費者金融各社に対する金融庁からの天下りの実態について、金融庁離職後二年以内に限らず、すべての金融庁出身者の人数及び役職をそれぞれ示されたい。

四 新たな金融規制を導入するに当たって、その実態が明らかにされていなければ、新たな金融規制の効果すら検証することができない。にもかかわらず、金融庁の対応は、「問題が生じると業界にヒアリングや報告徴求を行う」という場当たり的な対応にとどまっている。さらに、金融行政は、事前規制から事後規制へ、事前の許認可から事後の監督へと移行したというが、実態の把握がなければ、事後監督に効果など期待できない。今回の消費者金融・多重債務者の問題をめぐり、金融の実態把握の必要性が指摘されていることを踏まえ、政府として、責任を持って金融の実態を把握し、その情報をデータベース化するシステムを構築して情報開示を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。