質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第七○号

内閣参質一六四第七○号
  平成十八年六月二十日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員谷博之君提出シベリア抑留の真相究明に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷博之君提出シベリア抑留の真相究明に関する質問に対する答弁書

一について

 平成三年に旧ソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「旧ソ連邦」という。)から提供された「ソ連邦抑留死亡者名簿」(以下「旧ソ連邦名簿」という。)及び同年にモンゴル人民共和国から提供された「モンゴル抑留死亡者名簿」(以下「モンゴル名簿」という。)については、厚生労働省としては、同年に各都道府県に対し、一般の閲覧に供するよう要請したものであるが、必ずしも十分な対応が行われていなかったため、本年二月に各都道府県に対し、旧ソ連邦名簿及びモンゴル名簿(以下「旧ソ連邦名簿等」という。)を一般の閲覧に供することを改めて要請したところである。

二について

 厚生労働省としては、平成三年から旧ソ連邦名簿等について一般の閲覧に供してきたところであるが、旧ソ連邦名簿等のインターネットの利用による公表については、今後、検討してまいりたい。

三について

 御指摘の「一般閲覧に供しているもの」は、旧ソ連邦名簿等である。
 また、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)附則第十条第一項の規定により、都道府県においては、軍人軍属であった者の身上についての照会に応ずる事務、恩給の請求のための履歴証明の事務等が行われている。また、同条第三項の規定により国が都道府県に交付決定した額は、平成十三年度が約九百六十万円、平成十四年度が約八百八十万円、平成十五年度が約八百五十万円、平成十六年度が約八百五十万円、平成十七年度が約八百五十万円である。

四について

 捕虜収容所に収容されていた者に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定(平成三年外務省告示第三百十一号。以下「協定」という。)に基づく遺骨の収集、墓参等に係る政府の支出額については、それ以外の遺骨の収集、墓参等に係る政府の支出額と一体的に経理しており、平成三年度から平成十二年度までの額についてお答えすることは困難であるが、平成十三年度から平成十七年度までの額の合計は約十一億三千万円である。

五について

 協定に基づく措置の実施については、これまでも、日本側関係省とロシア側関係省庁・機関との間で個別に資料提供等に関する打合せ等が行われてきたが、日本側からロシア側に対し、これらをさらに効果的に実施するためには、日本側関係省とロシア側関係省庁・機関のすべてが一堂に会する協議を行うことが必要である旨日本側からロシア側に提案した結果、平成十五年十月に御指摘の協議が実現されるに至った。

六について

 政府としては、ロシア側に対し、いわゆるシベリア抑留について早急な対応を引き続き求めていくとともに、協議を早期に開催するよう引き続き申し入れていく考えである。

七について

 外務省においては、ロシア連邦政府では、外務省が窓口となって、内務省、国防省、ロシア国立軍事古文書館等の関係省庁・機関がいわゆるシベリア抑留問題に取り組んでいると承知しているが、お尋ねの「何人体制」であるかについては、ロシア連邦政府の内部の問題であり、お答えすることは差し控えたい。政府としては、ロシア連邦政府に対し、いわゆるシベリア抑留について責任を持って対応するよう求めてきている。

八について

 お尋ねの意味が必ずしも明らかではないが、ロシア連邦政府は、協定に基づき、日本人死亡者の名簿及び埋葬地に関する資料等を日本国政府に提出している。

九について

 外務省においては、御指摘の「戦後旧ソ連邦社会の建設に寄与・貢献した総額」が何を意味するか必ずしも明らかではないので、お答えすることは困難である。

十について

 外務省においては、御指摘の「労働証明書」については、ロシア連邦政府が抑留者個人の要請に基づいて発給したものと承知している。

十一について

 平成十七年にロシア国立軍事古文書館から提供された旧ソ連邦の地域に抑留された邦人(以下「旧ソ連邦抑留者」という。)であって北朝鮮の地域に移送されたものの名簿(以下「移送者名簿」という。)に記載された者のうち、身元が特定された者の数は、現在のところ十七名であり、その内訳は、本邦に帰還せず死亡した者が七名、本邦に帰還した者が十名である。また、本邦に帰還せず死亡した者の遺族等への通知は、現在のところ行っていないが、当該遺族等が判明した際には行う予定である。

十二について

 いわゆるシベリア抑留については、これまで、ロシア連邦政府から関連の資料が提供されてきており、引き続き、同政府に関連の資料の提供を求め、いわゆるシベリア抑留の実態の把握や死亡したいわゆるシベリア抑留者の身元の特定等の作業の進展に努めていく考えであるが、お尋ねについては、移送者名簿に記載された者の身元の特定の作業の進ちょく状況等を見つつ、今後、対応を検討していく考えである。

十三について

 いわゆるシベリア抑留者に対する慰労金の支給に関し、お尋ねの旧ソ連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された事実について判断が困難な事案については、移送者名簿も判断のための資料になり得ると考えており、現在どのように活用できるのかを検討しているところである。

十四について

 厚生労働省においては、御指摘の文書は「対日理事会」において作成されたものであるため、お尋ねの死亡者数の算定方法及び根拠については、承知していない。

十五について

 厚生労働省においては、お尋ねの死亡人員数の具体的な算定方法及び根拠については、調査した限りではこれらを把握することができる資料がなく、お答えすることは困難である。

十六について

 御指摘のヴィクトル・カルポフ氏及びセルゲイ・I・クズネツォフ氏に、旧ソ連邦の地域において抑留中に死亡した邦人(以下「旧ソ連邦抑留死亡者」という。)の数等についての意見及び情報は、求めていない。政府としては、旧ソ連邦抑留死亡者については、そのうち約四万人を旧ソ連邦名簿により把握しているが、残る約一万三千人を把握していないため、協定第一条1に基づき、ロシア連邦政府に対し、日本人死亡者の名簿の提出を求めてきている。
 また、政府としては、現在のところ、旧ソ連邦抑留者の数については約五十六万千人、旧ソ連邦抑留死亡者の数については約五万三千人と推計している。旧ソ連邦抑留者のうち北朝鮮の地域において死亡した者の数については、承知していない。

十七の1について

 「援護五十年史」(厚生省社会・援護局援護五十年史編集委員会監修)の付表「地域別・身分別(軍人軍属と邦人)引揚者数」によれば、「旧ソ連」からの引揚者の数は、平成八年一月一日現在で、「軍人・軍属」が四十五万三千七百八十七人、「邦人」が一万九千百五十八人である。

十七の2から4までについて

 お尋ねの人数については、把握しておらず、お答えすることは困難である。

十七の5について

 お尋ねの人数については、把握しておらず、お答えすることは困難である。なお、平成元年十月現在で認可法人平和祈念事業特別基金が行った調査によれば、旧軍人軍属であって年金たる恩給又は旧軍人軍属としての在職に関連する年金たる給付を受ける権利を有しない者の推定生存者数は、約二百五十三万人である。

十七の6について

 お尋ねの「旧満州及び北朝鮮にそれぞれシベリアから逆送された推定人数」については、旧満州及び北朝鮮別には把握していないが、合計数は約四万七千人と推計している。