質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第三二号

内閣参質一六四第三二号
  平成十八年三月十七日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員前川清成君提出貸金業規制法に基づく消費者金融業者に対する行政指導、行政処分等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出貸金業規制法に基づく消費者金融業者に対する行政指導、行政処分等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 財務局からの報告及び都道府県からの提出資料に基づき集計した平成十二年度から平成十六年度までの財務局及び都道府県において受け付けた貸金業者に係る苦情、相談等の件数と種類は、金融庁ホームページにおいて掲載しているところである。貸金業者に対する行政処分は、苦情、相談等のほか、立入検査や報告徴収を含めた様々な手段により事実関係を把握した上で行われているため、行政処分が苦情、相談等に基づくものか否かといった対応関係に基づく分類は行われておらず、新たに調査を行うことについては膨大な作業を必要とすることから、苦情、相談等に基づく行政処分の件数等についてお答えすることは困難である。

一の2について

 苦情、相談等と行政処分との対応関係については、一の1についてで述べたとおりである。なお、苦情、相談等の内容には様々なものがあり、金融庁としては、苦情、相談等の件数と行政処分の件数を単純に比較することは適当でないと考えている。

一の3について

 金融庁及び財務局においては、その監督の対象である貸金業者、社団法人全国貸金業協会連合会及び財団法人日本クレジットカウンセリング協会(以下「貸金業者等」という。)に対して、貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号。以下「貸金業規制法」という。)等に基づき厳正に監督を行っている。

一の4について

 国家公務員の退職後における再就職の状況は、公務を離れた個人に関する情報であり、一般に政府が把握すべき立場にないことから、お尋ねの全ての事項についてお答えすることは困難であるが、金融庁及び財務局に在籍していた職員で、保存期間内の文書で確認できる過去三年間において、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百三条第三項の規定に基づく人事院の承認を得て、貸金業者に再就職した者の再就職先及び人数は、平成十四年度に株式会社ひろぎんディーシーカードに一名、平成十五年度に株式会社ニッシン及びプロミス株式会社に、それぞれ一名の合計三名である。また、保存期間内の文書で確認できる過去五年間において、貸金業に関する金融庁所管の公益法人に再就職し、その後、役員となった者の再就職先及び人数は、平成十六年度に社団法人全国貸金業協会連合会に一名である。

一の5について

 金融庁及び財務局としては、その所属する職員が、貸金業者等から国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)に違反する供応接待を受けた事例はないと承知している。

二の1について

 貸金業規制法第三十七条第一項第六号の「前条各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき」に該当するかどうかは、具体的事案における行為の内容、態様等を総合的に勘案して判断されることとなる。

二の2について

 お尋ねについては、具体的事案における行為の内容、態様等を総合的に勘案して判断されることとなる。

二の3について

 一般に、貸金業者に対して行政処分を行うに当たっては、関係者に対するヒアリング、貸金業規制法に基づく立入検査及び報告徴収、関連する民事裁判及び刑事裁判等により事実関係の把握に努め、行政処分をするに足りる事実関係が認められると判断した場合には、貸金業規制法に照らし、厳正に行政処分を行い、これを公表しているが、行政処分を行っていない個別の事案に対する対応については、これを公にすることにより、当該貸金業者の権利又は競争上の地位を害するおそれがあるため、答弁を差し控えたい。

二の4について

 平成十六年度において、財務局長又は財務支局長の登録に係る貸金業者(以下「財務局登録貸金業者」という。)に対し、貸金業規制法第三十七条第一項第一号又は第二号に該当するものとして三件の登録取消処分を行い、また、貸金業規制法第十七条、第十九条若しくは第二十一条又は出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)の規定に違反し、貸金業規制法第三十六条第一号又は第九号に該当するものとして五件の業務停止処分を行っている。

二の5について

 お尋ねについては、具体的事案における行為の内容、態様等を総合的に勘案して判断されることとなる。

三の1について

 金融庁においては、平成十七年十一月に、「金融監督等にあたっての留意事項について-事務ガイドライン- 第三分冊:金融会社関係」(以下「事務ガイドライン」という。)3-2-2(6)を改正し、貸金業規制法第十三条第二項に該当するおそれが大きい場合として「顧客、顧客に代わり保証債務を履行しようとする者若しくはこれらの者以外の者であって顧客の同意を得た上で顧客に代わり債務の弁済を行おうとする者(以下「顧客等」という。)又は顧客等の代理人が、債務額の検証等、債務内容の正確な把握のために貸金業者に取引履歴の開示を求めた場合において、これを不当に拒む」行為を行う場合を追加し、貸金業者の業務の適正化を図ることとしている。これまでに、財務局登録貸金業者に対して、取引履歴の不当な拒否という具体的な事実を把握して行政処分を行った事例はない。

三の2について

 過去五年間に財務局登録貸金業者に対して虚偽の取引履歴の開示という具体的事実を把握して行った行政処分は一件であり、他の違反と合わせ、店舗ごとに二十日間ないし三十日間の業務停止処分を行っている。

三の3について

 金融庁においては、三の1についてで述べた事務ガイドラインの改正の際に、パブリックコメントを行い、そこでの意見に対して平成十七年十月十四日付けで公表した回答において、「業務に関する帳簿の保存期間については、貸金業規制法はもとより、諸法令を遵守すべきである」旨及び「保存義務期間を超えているか否かにかかわらず、保存されている取引履歴の開示を不当に拒む場合は貸金業規制法第十三条第二項の適用対象となる」旨の見解を示している。
 これまでに、財務局登録貸金業者について、御指摘の「内規」を理由に取引履歴の開示を不当に拒んでいるとの具体的事実を把握して行政処分を行った事例はない。

三の4の(一)について

 商法(明治三十二年法律第四十八号)は、商人一般について、営業上の財産及び損益の状況を明らかにするため、商業帳簿を作成し、これを十年間保存することを義務付けているが、その違反については、罰則等が設けられていない。
 他方、貸金業規制法は、貸金業者について、その業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を図る観点から、業務に関する帳簿を保存することを義務付けており、その違反については、行政処分及び罰金に関する規定が設けられている。
 商法における商業帳簿の保存義務と貸金業規制法における業務に関する帳簿の保存義務については、右に述べたように、その目的等に相違があるため、直ちに整合性の問題が生じるわけではない。

三の4の(二)について

 貸金業規制法第十九条の帳簿については、貸金業の規制等に関する法律施行規則(昭和五十八年大蔵省令第四十号)第十七条第一項において、「貸金業者は、法第十九条の帳簿を、貸付けの契約ごとに、当該契約に定められた最終の返済期日(当該契約に基づく債権が弁済その他の事由により消滅したときにあつては、当該債権の消滅した日)から少なくとも三年間保存しなければならない」と規定されており、金融庁及び財務局においては、この点について厳正かつ適切な監督を行っている。

三の4の(三)について

 財務局登録貸金業者について、これまでに、取引日から三年が経過していることを理由に保存されている帳簿の不存在の主張を行っているとの具体的事例を把握して行政処分を行った事例はない。ただし、取引日から三年が経過しているが、最終の返済期日から三年を経過していない帳簿を廃棄していたため、貸金業規制法第十九条違反として行政処分を行った事例は一件ある。
 なお、貸金業者による帳簿不存在の主張については、最終の返済期日から少なくとも三年間帳簿を保存していない場合には同条違反となるが、保存されている帳簿の開示を不当に拒む場合については、貸金業規制法第十九条違反ではなく、貸金業規制法第十三条第二項違反となり得るものと考えられる。

三の5の(一)について

 御指摘の事案について、貸金業規制法に基づく行政処分は行っていない。

三の5の(二)について

 個別の事案について、警察当局が捜査するか否か、また、犯罪の嫌疑を認めるか否かについては、答弁を差し控えたい。

三の5の(三)及び(四)について

 金融庁としては、一般に、貸金業者に対して行政処分を行うに当たっては、関係者に対するヒアリング、貸金業規制法に基づく立入検査及び報告徴収、関連する民事裁判及び刑事裁判等により事実関係の把握に努め、行政処分をするに足りる事実関係が認められると判断した場合には、貸金業規制法に照らし、厳正に行政処分を行い、これを公表しているが、行政処分を行っていない個別の事案に対する対応については、これを公にすることにより、当該貸金業者の権利又は競争上の地位を害するおそれがあるため、答弁を差し控えたい。
 また、個別の事案について、警察当局が捜査するか否か、また、犯罪の嫌疑を認めるか否かについては、答弁を差し控えたい。

三の5の(五)について

 貸金業者による虚偽の取引履歴の開示については、事務ガイドライン3-2-2(6)において、貸金業規制法第十三条第二項違反に該当するおそれが大きい場合として示されており、金融庁としては、貸金業者に係る立入検査や報告徴収等を通じ、問題事例が把握された場合には、貸金業規制法に基づき厳正かつ適切に対処してまいりたい。
 また、警察当局としては、刑罰法令に触れる行為を認めた場合には、法と証拠に基づき適切に対処することとしている。

四について

 特定調停の新受件数の減少につき確たる理由を承知しておらず、御指摘の「協力」についての答弁は差し控えたい。また、金融庁に寄せられる特定調停に係る苦情、相談等への対応については、貸金業者による取引履歴の開示の不当な拒否に関する苦情、相談等への対応である場合には、一般に、財務局において所要の事実確認を行うこととしている。その他の苦情、相談等への対応については、具体的事情等により様々であるため一概にお答えすることは困難であるが、一般論として言えば、金融庁及び財務局が私人間の法律関係に介入することは困難である。