質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第七二号

韓国・朝鮮人元BC級戦犯者への人道的措置に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年六月九日

福島 みずほ   


       参議院議長 扇 千景 殿



   韓国・朝鮮人元BC級戦犯者への人道的措置に関する質問主意書

 第二次世界大戦後、連合軍側が実施した軍事裁判により、有罪とされ処罰された者は五千七百名である。このうち死刑とされた者は九百八十四名である。この中には、朝鮮人百四十八名と台湾人百七十三名を含んでいる。
 戦後、軍人、戦争犯罪人及び公職追放者については、軍人恩給の支給が行われなくなったが、サンフランシスコ講和条約の発効により、戦争裁判受刑者及びその家族への様々な援護措置が行われた。しかしながら、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者については、国籍条項を理由に援護措置は実行されず、放置されてきた。
 その後、在日韓国・朝鮮人の方に対して、帰還手当の支給、見舞金や生活資金の一時支給、また生業の確保や公営住宅入居への便宜措置が採られ、二〇〇〇年に「平和条約国籍離脱者等である戦没者遺族等に対する弔慰金等の支給に関する法律」が成立した。しかしながら、これらの処置は、補償の対象を重度戦傷病者と戦没者の遺族としていることから、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者は補償の対象外とされ、放置されたままとなっている。このような韓国・朝鮮人元BC級戦犯者のおかれた状況について、一九九九年、最高裁判所は「我が国の統治下で半ば強制的に応募させられ、深刻かつ甚大な犠牲ないし損害を被った」と判示している。
 戦後六十年以上の時間がたち、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者も高齢となる中で、人道的措置を採るために残された時間も少なくなっている。韓国・朝鮮人元BC級戦犯者は、当時の日本政府が遂行した戦争の軍務中の責任を問われて戦犯となり、処罰された。それにもかかわらず、国籍条項を理由に援護政策から排除され、差別されてきた。この幾重の苦難をかんがみれば、今こそ日本政府として、人道的措置を採るべきと考える。
 以上の趣旨から、以下質問する。

一 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者問題に対する日本政府による研究・検討について

1 二〇〇五年、韓国政府は、日韓基本条約・請求権協定に関する関連文書を公開した。この中で、一九五二年二月、「韓国側から、現在巣鴨刑務所に服務中である韓国人戦犯者に対し、日本政府の方針を問い合わせたところ、日本側から本件は別問題であり、別途研究するつもりであるとの答弁があった」と聞いている。このような答弁があったことは事実か。
2 1で述べた日本政府の答弁が事実であれば、どのような研究がなされ、どのような結論が導き出されたのか。

二 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者問題に関する日韓両国政府の認識の違いについて

1 これまで日本政府は、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者問題について、一九六五年の日韓基本条約・請求権協定によって「解決済み」としている。一方、韓国政府は「戦犯は戦後問題として対象になっていない」と、日本政府とは異なった認識を示している。韓国・朝鮮人元BC級戦犯者問題の解決については、日韓基本条約・請求権協定において、日韓両国政府の合意が正しく形成されているのか。
2 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者問題の解決について日韓両国政府の合意が正しく形成されているのであれば、日韓基本条約・請求権協定における交渉の過程に関する文書を示し、日本政府としての説明責任を果たすことができるはずである。具体的に文書の所在を示し、それに基づき説明されたい。

三 韓国政府から日本政府への要請の有無について

 これまで、韓国政府から、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者への名誉回復、謝罪及び補償措置について、日本政府に要請があったか。あったならば、その日付と内容を示されたい。

四 日韓基本条約・請求権協定に関する議事録及び外交文書等の公開について

 日韓基本条約・請求権協定が締結されてから、すでに四十年以上が経っている。韓国政府は、昨年、日韓基本条約・請求権協定に関する文書の公開を開始した。日本政府も、日韓基本条約・請求権協定に関する議事録及び外交文書等について公開すべきと考えるが、いかがか。

五 中国で処刑された韓国・朝鮮人元BC級戦犯者の遺骨について

1 日本政府は、中国で処刑された韓国・朝鮮人元BC級戦犯の遺骨収集及び返還に関して、どのような役割を果たしたのか、具体的に示されたい。
2 中国で処刑された韓国・朝鮮人元BC級戦犯の遺骨は、中国政府から、韓国政府及び朝鮮民主主義人民共和国政府に返還されたのか。返還されたのであれば、それぞれの国に何体が返還されたのか。またその内、遺族の元に返還されたのは何体か。

  右質問する。