質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第六八号

ドミニカ共和国移民国家賠償請求訴訟の判決に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年六月八日

喜納 昌吉   


       参議院議長 扇 千景 殿



   ドミニカ共和国移民国家賠償請求訴訟の判決に関する質問主意書

 二〇〇六年六月七日、東京地方裁判所において、ドミニカ共和国移民国家賠償請求訴訟の判決があった。東京地方裁判所は、賠償責任は「時効」として棄却したが、外務、農林両省の責任を認めた。原告たちは判決後、「祖国の司法に捨てられた」、「移住者の無念に時効はない」、「祖国にだまされるとは誰一人思っていなかった」などと無念の気持ちを深く苦く表している。原告の移民たちにとっては、いまだ問題は終わっておらず、控訴を決めていると伝えられている。
 そこで、以下質問する。

一 国がこれだけ多くの日本人移住者に苦悶を強いる移住政策を実施し、移住開始から半世紀経った今日でもその問題が続いているからには、国の責任は言うまでもなく重大である。なかんずく、移住開始前に移住先を調査した外務、農林両省の担当職員たちの職務怠慢の責任及びずさんな調査結果に基づいて移住実施の判断を下した両省幹部及び両大臣らの責任は厳しく問われなければならない。
 そこで政府は、当時、調査を担当した職員、調査報告を受けた幹部、移民開始を最終的に決めた閣僚等、責任を負うべき関係者たちの氏名を明らかにされたい。

二 責任を負うべき関係者たちの中に、国から叙勲されたり他の表彰を受けたりした者がいれば、それを取り消すのが妥当と思われるが、政府の見解を示されたい。

三 政府は、時効で賠償責任を逃れることは道義上許されないと考える。しかるべき形で、慰謝すべきである。裁判所の判断には限界があるため、国会及び政府の政治的決断が鍵となる。政府は、賠償の代わりとなる金銭的補償など慰謝的措置を実施するための法案を国会に提出する意思はないか、理由とともに明らかにされたい。

四 原告移民は「自分たちは棄民だった」と指摘している。実際、ずさんな調査に基づき安易に移民を送り込んだ政府には、人口減らしのための棄民政策があったとしか思えない。政府はこれを認めるべきと考えるが、政府の見解を理由とともに明らかにされたい。

五 政府は、ドミニカ共和国への日本人移住開始五〇周年にかんがみ、支援事業を行うと伝えられている。この支援事業の具体的内容を明らかにされたい。

六 移民が求めているのは、公共建築物の建設などの支援事業ではなく、慰謝としての賠償、補償である。政府が意図している支援事業だけで事足りると考えているのか、理由とともに明らかにされたい。

七 日本人移住が開始された一九六〇年代半ば、ドミニカ共和国はラファエル・トルヒーリョ独裁下にあった。同政権は、隣国ハイチとの国境地帯に居住者を増やし、国境地帯の実効支配を強化し、ハイチ人流入を阻止するという政策を維持していた。外務省は、当時この政策の存在を知っていたか否か、明らかにされたい。

八 トルヒーリョ政権は、国境地帯の住民を増やす政策の一環として、日本人移住者の一部を国境地帯に入植させた。外務省は、当時この事情を知っていたか否か、明らかにされたい。

九 日本人移住開始に先立ち現地調査をした外務、農林両省及び現地公使館の職員は、当時トルヒーリョ政権の国境固め政策を知りながら、移民政策を進めたのか否か、それとも同政策を知らずに移民政策を進めたのか、明らかにされたい。

  右質問する。