質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

在上海総領事館領事の自殺に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年二月三日

喜納 昌吉   


       参議院議長 扇 千景 殿



   在上海総領事館領事の自殺に関する質問主意書

 在上海総領事館で電信官としての職にあった領事(以下「電信官」という。)が二〇〇四年五月六日、中国情報機関から脅迫されたことを苦にして自殺した事件は、「外交機密」や「遺族の要望」を理由に真相が隠蔽されたまま今日に至っている。だが本件は、中国当局のウィーン条約違反によって、人命を含む日本外交の国益が著しく犯された重大事件であり、真相が隠蔽され続けることは許されない。
 そこで、以下質問する。

一 政府、特に外務省は、この事件を昨年一二月に「週刊文春」が報じるまで、なぜ公表しなかったのか。また、このような重要事案を小泉内閣総理大臣ら政府首脳陣に報告すべきであったのにしなかったのは誰で、いかなる理由の下に報告をしなかったのか、明らかにされたい。

二 この事件を政府首脳にも報告せずに隠蔽した外務省、とりわけ当時の川口順子外務大臣ら同省幹部の責任は重い。いまからでも責任を明らかにすべきではないか。

三 外務省は、事件発生直後に中国当局に抗議したとしているが、いつ、誰が、誰を相手に、どのような抗議をしたのか。また、事件発生直後から週刊文春で暴露報道がなされるまでに何回抗議をしたのか、明らかにされたい。

四 仮に川口順子元外務大臣(現参議院議員)の証人喚問を野党から提案された場合、政府としては反対しないか。もし反対する場合、その理由を示されたい。

五 先月二八日付の「読売新聞」によると、外務省幹部は「類似の事件は過去にも起きていた」と語ったとされている。その「類似の事件」についての具体的内容を、少なくとも日中国交正常化以降の期間について明らかにされたい。

六 一九七〇年以降、日本人外交官及び在外日本公館勤務の現地採用職員に「電信官」のように脅迫されて自殺に追い込まれた例はあるか。また、あるとすれば具体的に事件内容を明らかにされたい。

七 政府は、「電信官」自殺事件に対する外交上の報復措置として、中国政府に対し、どのような具体的行動を採ったのか明らかにされたい。また、政府、特に外務省には、「臭いものには蓋をせよ」といった、事件の重大性と職責を忘れた安易な姿勢がなかったか。仮にあったとすれば、そのような姿勢は一掃されたと考えてよいのか。

八 昨年一二月二九日付の「産経新聞」社説は、「橋本龍太郎元首相も平成一〇年、北京市公安局に勤務経験のある中国人女性通訳との関係を野党から追及された」事実に触れている。政府は、中国もしくは他国の当局から、この種の醜聞がらみで陥れられた政府要人等の実態を把握しているか、明らかにされたい。

九 前述の「読売新聞」によると、政府は機密情報の取扱いに関する対応策をまとめたが、これをもって「電信官」自殺事件の幕引きを図りたい考えだという。政府は、真相を調査し直して公表する意思があるのか。もしある場合、どのように調査し直し、公表するのか、具体的に明らかにされたい。

  右質問する。