質問主意書

第163回国会(特別会)

答弁書


答弁書第二五号

内閣参質一六三第二五号
  平成十七年十一月十一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員谷博之君提出北朝鮮に移送されたシベリア抑留者に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷博之君提出北朝鮮に移送されたシベリア抑留者に関する質問に対する答弁書

一について

 平成十七年四月にロシア国立軍事古文書館から提供された旧ソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「旧ソ連邦」という。)の地域に抑留された邦人(以下「旧ソ連邦抑留者」という。)であって北朝鮮の地域に移送されたものの名簿(以下「移送者名簿」という。)等については、ロシア語から日本語への翻訳が終了したところであり、これを受け、移送者名簿に記載された者の身元の特定についてその具体的方法を検討し、作業を進めていくこととしている。なお、移送者名簿に記載された者のうち一名については、厚生労働省が保管する人事資料等との照合により、身元が特定されている。

二について

 旧ソ連邦抑留者及び旧ソ連邦によってモンゴル人民共和国の地域に抑留された邦人(以下「旧ソ連邦抑留者等」という。)に係る厚生労働省の推計によれば、旧ソ連邦抑留者等の数から、本邦に帰還した者の数及び旧ソ連邦又はモンゴル人民共和国(以下「旧ソ連邦等」という。)の地域において死亡した者の数を控除した数は約四万七千人となっており、この中に北朝鮮の地域に移送された旧ソ連邦抑留者が含まれるものと考えているが、その具体的な数については承知していない。
 また、お尋ねの「北朝鮮から旧ソ連に補充的に送られた抑留者」の数については、承知していない。

三及び四について

 御指摘の旧ソ連邦抑留者の北朝鮮への移送については、戦後本邦に帰還した者からの情報等から、遅くとも昭和二十一年には、政府として、北朝鮮に移送された旧ソ連邦抑留者がいることについて承知するに至っており、当該移送は、多くの場合、当該抑留者の健康上の問題を理由として行われたものと推測される。
 政府としては、いわゆるシベリア抑留は、人道上問題であるのみならず、当時の国際法に照らしても問題のある行為であったと認識しており、「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」とするポツダム宣言第九項に違反したものであったと考えている。政府としては、終戦直後から、北朝鮮を含め、旧ソ連邦の事実上の支配の下にある地域において終戦を迎えた邦人の安全に重大な関心を払い、これらの邦人を早期に帰還させるべく種々の活動を行い、また、捕虜収容所に収容されていた者に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定(平成三年外務省告示第三百十一号)第一条1及び2に基づき、旧ソ連邦及びこれを承継したロシア連邦の政府に対し、日本人死亡者の名簿及び埋葬地に関する資料の提出を求めてきている。

五について

 お尋ねの北朝鮮で亡くなった旨の通知は、行っていない。

六について

 政府としては、一についてで述べた作業の進ちょく状況、日朝関係の状況等を見つつ、今後、対応を検討していく考えである。

七について

 平成三年に旧ソ連邦から提供された「ソ連邦抑留死亡者名簿」(以下「旧ソ連邦名簿」という。)等には、旧ソ連邦抑留者に係る約四百五十の収容所等の名称が記載されているほか、当該収容所等ごとの埋葬者数及び一部の収容所等の所在地を了知し得る情報が記載されているが、旧ソ連邦名簿等は厚生労働省及び各都道府県において一般の閲覧に供している。
 また、旧ソ連邦抑留者等の数及びそのうち旧ソ連邦等の地域において死亡した者の数については、政府としては、現在のところ、旧ソ連邦名簿等により、それぞれ約五十五万千人、約四万二千人を把握しているが、全体の数については、それぞれ約五十七万五千人、約五万五千人と推計している。