質問主意書

第163回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質一六三第一六号
  平成十七年十一月四日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員藤末健三君提出インターネット等の選挙運動への活用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出インターネット等の選挙運動への活用に関する質問に対する答弁書

一について

 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)に規定する「選挙運動」とは、一般的に、「特定の公職の選挙につき、特定の立候補者又は立候補予定者に当選を得させるため投票を得若しくは得させる目的をもって、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすることをいうものである」(昭和五十二年二月二十四日最高裁判所判決)と解されており、具体の行為が選挙運動に当たるか否かは、当該行為のなされる時期、場所、方法、対象等を総合的に勘案して判断されるべきものである。
 御指摘のような候補者に対する公約アンケートの結果をホームページに掲載する行為について、公示日前にする当該行為は、当該行為によるインターネットのホームページ上の文字等を用いた意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められる場合には、同法第百二十九条及び第百四十二条の規定に違反する。
 また、公示日後にする当該行為は、当該行為によるインターネットのホームページ上の文字等を用いた意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められる場合には、同法第百四十二条の規定に違反する。さらに、当該行為によるインターネットのホームページ上の文字等を用いた意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められない場合であっても、当該行為が同条の禁止を免れる行為と認められる場合には、同法第百四十六条の規定に違反する。
 いずれにしても、個別の行為がこれらの規定に違反するか否かについては、具体の事実に即して判断されるべきものと考える。

二について

 これまでの国政選挙において、都道府県警察が行ったインターネットの使用に係る公職選挙法違反に係る警告は把握している限りでは三十五件であり、検挙はないものと承知している。また、この三十五件のうち、二十八件がホームページ上で候補者に対して支持を求める文言を表示するなどして同法第百四十二条に違反した事案に係る警告、四件が選挙の期日後にホームページ上で当選のあいさつに関する文言を表示するなどして同法第百七十八条に違反した事案に係る警告、二件が選挙運動の目的をもって選挙運動の期間中にホームページ上で候補者の氏名を表示するなどして同法第百四十六条に違反した事案に係る警告、一件がホームページ上で選挙に関する人気投票の集計結果を公表して同法第百三十八条の三に違反した事案に係る警告であると承知している。インターネットの使用に係る同法違反の事案について検察当局による捜査が行われた件数は、把握していない。
 なお、総務省、中央選挙管理会並びに都道府県及び市町村の選挙管理委員会は、警告や捜査を行う権限を有していない。

三について

 都道府県警察においては、公職選挙法違反の取締りに当たり、個別具体の事実に即して、法と証拠に基づき適切に対処しているものと承知している。

四について

 総務省においては、インターネット等を選挙運動で使用することに関するガイドラインを各都道府県選挙管理委員会等に示していないが、従来より、「コンピュータ等のディスプレイ上に表れる文字等の意識の表示が選挙運動のために使用されるものである場合には、これを不特定又は多数人に発信到達させることは、公職選挙法第百四十二条に違反する。その内容が選挙運動のために使用するものと認められない場合であっても、選挙運動期間中に候補者の氏名等を表示したホームページを開設又は書換えをする行為が同条の禁止を免れる行為に当たるときには、同法第百四十六条に違反する。また、政党その他の政治活動を行う団体が、選挙の期日の公示又は告示の日から選挙の期日までの間に政治活動として開設又は書換えをするホームページに当該選挙区の特定の候補者の氏名等が表示される場合には、同法第二百一条の十三に違反する。」との見解を明らかにしてきており、各都道府県選挙管理委員会等から個別の質疑があった場合には、この見解を示して、適切な対応を要請しているところである。

五について

 インターネット等を選挙運動で使用することについては、四についてで述べた見解に基づいて公職選挙法を運用しているところであり、都道府県警察においても同法違反の取締りに当たり三についてで述べたとおり適切に対処しているものと承知しており、御指摘のような取扱いの差異はないものと考えている。
 また、具体の行為が選挙運動に当たるか否かは、当該行為のなされる時期、場所、方法、対象等を総合的に勘案して判断されるなど、当該行為が同法の規定に違反するか否かについては、具体の事実に即して判断されるべきものである。
 総務省では、「IT時代の選挙運動に関する研究会」を設置し、同研究会において、インターネット等を用いた選挙運動を導入する場合のメリット・デメリットや導入する場合の選挙運動規制との関係等について検討を行い、平成十四年八月に、ホームページを活用した選挙運動を認めること等を内容とする提言が行われたところである。インターネットを選挙運動の手段として認める法改正を行うことについては、同研究会の報告書も参考に、各党各会派において積極的に議論していただきたいと考えている。

六について

 公職選挙法第百四十二条に規定する「文書図画」とは、「文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に多少永続的に記載された意識の表示」をいい、スライド、映画、ネオン・サイン等もすべて含まれるものであり、コンピュータ等のディスプレイ上に表れた文字等を用いた意識の表示は、同条に規定する文書図画に該当する。
 ホームページのディスプレイ上に表れた文字等の意識の表示は、同条の規定により選挙運動のために頒布することができる文書図画以外の文書図画であることから、選挙運動のために使用することができないものである。
 インターネット等を選挙運動で使用することについては、インターネットは比較的安価に情報を発信・受信し得る手段である一方、いわゆるなりすましや誹謗中傷等の問題点もあり、各党各会派において議論していただきたいと考えている。