質問主意書

第163回国会(特別会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質一六三第七号
  平成十七年十月十一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員近藤正道君提出放射性廃棄物のクリアランス制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員近藤正道君提出放射性廃棄物のクリアランス制度に関する質問に対する答弁書

一について

 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会報告書「原子力施設におけるクリアランス制度の整備について」(平成十六年九月十四日、同年十二月十三日一部改訂)において、ガス冷却型の実用発電用原子炉の廃止措置に伴い発生する廃コンクリートの推定発生量が約三万六千トンであると報告されているところである。クリアランス制度は、このような原子力施設において用いた資材その他の物の合理的な処分及び資源の有効利用を可能とするため、平成十七年五月十三日に成立した核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律(平成十七年法律第四十四号)において導入することとしたものである。

二について

 平成十七年三月三十日の衆議院経済産業委員会の武田良太委員の質疑において行った「影響のないレベル」という答弁は、クリアランスレベルを算出する際の線量の目安値である年間○・○一ミリシーベルトという値が健康に対する影響を無視できるレベルであるとの趣旨のものである。

三について

 御指摘の引用は、原子力安全委員会がクリアランスレベルを算出するための線量の目安値として年間○・○一ミリシーベルトを設定した理由を述べたものである。

四について

 国際放射線防護委員会(以下「ICRP」という。)は、千九百九十年に出版した報告書(Publ.60)において、広島及び長崎の被ばく者に関する追跡調査期間の延長、被ばく線量算定方式の変更、生涯リスク予測モデルの変更等により、名目致死確率係数の見直しを行っているが、年間○・○一ミリシーベルトというレベルについては、その後、ICRPや国際原子力機関(以下「IAEA」という。)において見直されておらず、このレベルが現在でも、国際的に共通のものであると認識している。

五について

 原子力安全委員会では、平成十一年三月に、IAEAの技術文書のクリアランスレベルや評価方法を参考にして、我が国における自然環境や社会環境の実態及び生活態様を考慮しつつ、クリアランスされた物から受ける個人被ばく線量が年間○・○一ミリシーベルト以下となるように、クリアランスレベルを算定し、トリチウムについては、クリアランスレベルを一グラム当たり二百ベクレルとした。
 その後、IAEAが新たな知見を取り入れてクリアランスレベルを見直したため、原子力安全委員会は再検討を行い、その結果、平成十六年十二月に、トリチウムのクリアランスレベルを一グラム当たり六十ベクレルとしたものである。
 なお、御指摘の「七ベクレル」という値については、承知していない。

六について

 原子力安全委員会は、クリアランスされた物が様々な形態で再利用又は埋設処分されることにより一般公衆が現実的に被ばくすると想定される評価経路ごとに個人被ばく線量を評価し、最も高くなる評価経路でも個人被ばく線量が年間○・○一ミリシーベルト以下となるようにクリアランスレベルを算定したものである。

七について

 原子力事業者が定める放射能濃度の測定及び評価の方法については、国が定める技術基準に照らして妥当であることをあらかじめ国が審査して認可するとともに、測定及び評価の結果については、国が当該結果の記録を確認し、かつ、クリアランスの対象物について抜き取り測定を行うことにより確認することとしており、信頼性を確保することとしている。

八について

 改正後の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第七十二条の二の二において、環境大臣は、廃棄物の適正な処理を確保するため特に必要があると認めるときは、原子炉等規制法第六十一条の二第一項又は第二項の規定の運用に関し文部科学大臣、経済産業大臣又は国土交通大臣に意見を述べることができる旨規定されているところである。

九について

 クリアランスされた廃コンクリート等の再生利用については、クリアランス制度が社会に定着するまでの間、原子力事業者が、電力業界を中心に率先して進めることを予定しているものと承知している。
 また、一についてで述べたとおり、ガス冷却型の実用発電用原子炉の廃止措置に伴い発生する廃コンクリートの推定発生量は約三万六千トンであるとされているところであるが、平成十四年度における工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物の排出量は約五千五百三十六万トンとなっていることから、各都道府県に設置されている最終処分場の容量に対し、当該推定発生量が与える影響はわずかなものであると思料する。

十について

 クリアランス制度が社会に定着したか否かについては、今後、クリアランスされた物の安全性、クリアランス制度の実施状況等について、国民に対する積極的な情報の提供及び理解の促進に努めながら、国が適切な時期に総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会等の公開の場において、広く意見を伺いつつ判断していきたいと考えている。

十一について

 これまで、原子炉等規制法第二十三条の二第一項に規定する外国原子力船が我が国に入港した実績はなく、当面、我が国において、外国原子力船が解体されることは想定し難いことから、外国原子力船へのクリアランス制度の適用について、検討会を設けて検討を行ったことはない。
 なお、アメリカ合衆国軍隊の原子力艦船において用いた資材等については、原子炉等規制法第二十三条の二第一項の規定において、軍艦は外国原子力船に含まれない旨が規定されていることから、原子炉等規制法に定めるクリアランス制度の対象とはならない。

十二について

 クリアランス制度については、再検討すべき問題があるとは考えておらず、今後、原子炉施設の廃止措置が本格化すること等にかんがみれば、速やかに導入することが必要であると考えている。