質問主意書

第163回国会(特別会)

質問主意書


質問第六号

在日米軍の施設及び区域で働く駐留軍労働者のアスベスト被害に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年十月三日

糸数 慶子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   在日米軍の施設及び区域で働く駐留軍労働者のアスベスト被害に関する質問主意書

 アスベスト(石綿)の健康被害は、民間企業等から被害実態が次々と明らかにされ、深刻さを増している。そのような状況のなか、政府は被害者の救済を主な目的としたアスベスト新法(仮称)の法案作成に取り組むなど、本格的な対応に乗り出した。
 これまでのアスベスト対策が後手にまわった環境省と厚生労働省は、法令の改正や新たな規則の施行等による対策の強化を打ち出している。環境省では二〇〇六年度中に大気汚染防止法の政省令を改正する動きがみられる。厚生労働省は本年七月、石綿障害予防規則を施行し、石綿ばく露防止策を一段と強化した。
 一方、本年七月には、社団法人神奈川労災職業病センター(横浜市鶴見区豊岡町)が米海軍横須賀基地で働く駐留軍労働者の被害実態を明らかにした。同センターによると、アスベスト被害は、一九九〇年以降、少なくとも九十八人(肺がん二十三人、中皮腫二人、石綿肺(最重症)七人、石綿肺と合併した続発性気管支炎六十六人)に上り、全員日本人男性である。このうち十四人が肺がんで、二人が中皮腫で死亡するなど計二十六人が亡くなっている。
 これらの被害実態を受け、在日米軍の施設及び区域で働く駐留軍労働者のアスベスト健康被害について、以下質問する。

一 在日米軍の施設及び区域で働く駐留軍労働者の雇用主である防衛施設庁は、アスベスト被害の実態調査を実施したのかどうか。

二 アスベスト被害の調査を実施したのであれば、アスベスト患者情報を明らかにされたい。

三 アスベストに関し、雇用主である防衛施設庁と使用主である在日米軍は、その使用や撤去の危険性について、就業者等にどのような措置を講じたのか、具体的に示されたい。

四 アスベストの危険性に関し、日米合同委員会の環境分科委員会で話し合われたことがあるのか。

五 米軍が環境問題への対処に際しての拠り所とする「日本環境管理基準」(JEGS)には、アスベストの処理、対策等がどのように記載されているか。

六 駐留軍労働者の雇用主である防衛施設庁は、アスベストの健康被害に関し、相談窓口等を設置するなど対策に乗り出しているようだが、本年九月現在の相談件数及び具体的な相談内容を明らかにされたい。

七 在沖米軍の施設及び区域で働く全駐留軍労働組合沖縄地区本部は、アスベストの被害等に関し、実態調査に乗り出したが、調査対象の日本人従業員は退職・離職者も含め数万人と予測しており、追跡調査の難しさを指摘している。これらの点を踏まえ雇用主である防衛施設庁は、被害調査を実施する方針はないのか。

八 アスベストの実態調査を円滑に行う方法として、米軍施設及び区域においてアスベストが使われていた現場、また撤去された現場を明らかにすることで調査対象人員を絞り込めるとしているが、政府として米軍側に対し、アスベストの使用箇所や撤去箇所を明らかにするよう申し入れる考えはないのか。

九 駐留軍労働者に対するアスベストの健康被害については、一九九七年度から一九九九年度にかけて、神奈川県横須賀渉外労務管理事務所(当時)が、在日米海軍横須賀基地のアスベスト業務従事退職者を対象に「健康管理手帳制度周知事業」を実施したと聞くが、同様な事業を在沖縄の米軍施設及び区域の退職者にも実施する考えはないか。

  右質問する。