質問主意書

第162回国会(常会)

答弁書


答弁書第四二号

内閣参質一六二第四二号
  平成十七年八月五日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員白眞勲君提出北朝鮮貨客船「万景峰九二」号の積荷の情報公開に対する政府答弁等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員白眞勲君提出北朝鮮貨客船「万景峰九二」号の積荷の情報公開に対する政府答弁等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 細田内閣官房長官は、平成十六年十二月二十四日午後の記者会見において、同年十一月九日から十四日までの間に北朝鮮の平壌で開催された日朝実務者協議において北朝鮮側から提供された情報に関する政府による精査の結果を説明し、その中で、政府としては、北朝鮮側に対して迅速かつ誠意ある回答を強く求めていくこととするが、こうした北朝鮮側からの対応がない場合には、厳しい対応をとらざるを得ないと考えている旨述べた。ここでいう「迅速」とは、拉致問題の解決に向けた北朝鮮の一日も早い前向きな対応が必要であるという趣旨を述べたものであり、具体的な期間を示すものではない。

一の2について

 政府としては、北朝鮮から拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向けた前向きな対応を得るために、いつどのような対応をとるべきかについて、諸要素を総合的に勘案しつつ検討してきている。お尋ねの「厳しい対応」とは、北朝鮮から納得のいく対応がない場合に、北朝鮮に対してそのような対応を促すために我が国としてとる対応を指す。この「厳しい対応」には、当然、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法(平成十六年法律第百二十五号)に基づく入港禁止の実施も含まれ得るが、我が国がこうした対応をとることが拉致その他の諸懸案について前進を図る上で適当であるかについては、状況を見つつ引き続き検討していく必要があると考えている。

二の1について

 特定の船舶に係る積荷に関する情報について、現時点において把握している限り、具体的な事項を公にした例はない。

二の2について

 北朝鮮に係る拉致問題は、我が国の国民の生命と安全にかかわる重大な問題であり、政府としては、この問題の解決に向け全力で取り組んできている。他方、万景峰九二号による北朝鮮への貨物の輸出については、関係法令に基づき適正に行われる限り、適法であり、その点で他の貨物の輸出と変わりはないので、その内容を公にするかどうかについても、同様に取り扱うことが適当であると考えている。先の答弁書(平成十七年六月三日内閣参質一六二第二一号及び平成十七年七月一日内閣参質一六二第三四号)において万景峰九二号の積荷の内容をお示しすることを差し控えたのは、個別の船舶、輸出者等に関し通関時に把握した情報については、これらを公にすることにより、今後、正確な事実の把握を困難にし、税関の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあること及び船舶の所有者、輸出者等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、具体的な事項をお示しすることは適当ではないと考えたものである。

二の3について

 個別の船舶、輸出者等に関し通関時に把握した情報については、例えば、品名、価格、数量、取引先等の情報を公にした場合、輸出者の商取引の具体的内容を他の業者が知り得ることから、輸出者がこれらの情報を税関等に適正に申告しなくなるおそれがあるなどのため、これらをお示しすることを差し控えさせていただいたところである。

三の1について

 平成十六年三月から同年六月まで及び平成十七年三月から同年六月までの間における北朝鮮籍船舶の日本への入港回数については、港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)第四条の規定に基づき港長に提出された入港届により把握している限りでお答えすると次のとおりである。
 平成十六年三月は、京浜、名古屋、四日市及び博多港各一回、三河及び大阪港各二回、小樽及び衣浦港各三回、関門港四回、浜田港二十回、境港三十八回、舞鶴港三十九回であり、同年四月は、新潟、三河、衣浦及び四日市港各一回、名古屋及び浜田港各二回、小樽港三回、関門港五回、境港二十七回、舞鶴港三十二回であり、同年五月は、酒田、直江津及び博多港各一回、新潟、三河、衣浦及び名古屋港各二回、浜田港三回、小樽港六回、関門港七回、境港二十二回、舞鶴港三十八回であり、同年六月は、三河、四日市及び姫路港各一回、衣浦及び博多港各二回、新潟及び名古屋港各三回、関門港六回、小樽港八回、舞鶴及び境港各二十六回である。
 また、現時点における集計では、平成十七年三月は、三河及び名古屋港各一回、小樽、浜田及び関門港各三回、境港五回、舞鶴港十三回であり、同年四月は、千葉、衣浦及び東播磨港各一回、小樽及び名古屋港各二回、三河及び関門港各三回、浜田港五回、境港六回、舞鶴港十四回であり、同年五月は、大阪港一回、新潟港三回、小樽及び境港各七回、関門港八回、舞鶴港十六回であり、同年六月は、三河、衣浦及び姫路港各一回、名古屋港二回、新潟港三回、小樽、境及び関門港各五回、舞鶴港十七回である。

三の2について

 日本から北朝鮮へ輸出された積荷の総トン数については、把握していない。
 なお、日本から北朝鮮への輸出額は、貿易統計によれば、平成十七年三月は六億五千五百四十一万七千円、同年四月は四億八千三百六十四万二千円、同年五月は三億七千三百四十八万七千円、同年六月は五億二千七百三十二万千円であり、また、平成十六年三月は七億四千八百五十五万四千円、同年四月は六億二千六百六十七万七千円、同年五月は五億四千九百九十八万二千円、同年六月は九億千四十八万七千円である。

三の3について

 万景峰九二号及び他の北朝鮮籍船舶に係る船舶油濁損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号。以下「油賠法」という。)第三十九条の六において準用する第十七条第四項の保障契約証明書に相当する書面の申請書に記載されている保険者等の名称は、The South of England Protection and Indemnity Association (Bermuda) Limited(以下「South of England」という。)及びMaritime Mutual Insurance Association (NZ) Limited(以下「MMIA(NZ)」という。)である。また、お尋ねの船主責任保険会社に係る「国籍」の意味するところが必ずしも明らかではないが、外交ルートを通じて確認を行ったところ、South of Englandについては英国領バミューダ諸島においてInsurance Act 1978に基づき、MMIA(NZ)についてはニュージーランドにおいてCompanies Act 1993に基づき、それぞれ登録されている。
 同様に、お尋ねの各船主責任保険会社の信頼性に係る「国際的評価」の意味するところが必ずしも明らかではないが、外交ルートを通じて確認を行ったところ、South of Englandについては千九百九十二年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(平成七年条約第十八号)の締約国であるパナマ共和国政府より、MMIA(NZ)については同条約の締約国である英国政府及びインドネシア共和国政府より、それぞれ同条約第七条第二項の規定により発行されている証明書において保険者その他保証を提供する者とされているものである。このため、South of England及びMMIA(NZ)は、船舶油濁損害賠償保障法施行令(昭和五十一年政令第十一号)第二条第二項第一号の規定により、油賠法第三十九条の五第二項の「船主相互保険組合、保険会社その他の政令で定める者」に該当すると判断している。

三の4について

 油賠法第三十九条の四に規定する一般船舶油濁損害賠償等保障契約の締結が強制されない総トン数百トン未満の一般船舶に係る保障契約の締結状況については、承知していない。