質問主意書

第162回国会(常会)

答弁書


答弁書第四一号

内閣参質一六二第四一号
  平成十七年八月五日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員前川清成君提出違法年金担保に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出違法年金担保に関する質問に対する答弁書

一について

 年金担保融資の被害等については、金融庁、財務局及び都道府県において貸金業者に係る苦情・相談等を受け付けており、うち年金担保融資に係るものの合計件数は平成十七年一月から三月までの間で三十一件であり、前年同期比二十件の減となっている。また、貸金業の規制等に関する法律の一部を改正する法律(平成十六年法律第百五十八号。以下「改正法」という。)の成立を受け、平成十六年十二月九日付けで社団法人日本新聞協会等の広告関係団体に対し、「貸金業規制法の改正に伴う貸金業者の広告規制について」を発出し、違法な年金担保融資を助長する広告等を行っている貸金業者に関する情報があった場合における財務局又は都道府県への連絡について傘下会社に周知するよう要請したほか、財務局に対し、同日付けで事務連絡文書を発出し、都道府県と連携の上、関連する広告関係団体に対し同様の要請を行うよう指示し、当該情報の連絡を受けることとしている。さらに、財務局及び都道府県にあっては、貸金業者に係る苦情・相談等や情報の連絡を基に、当該貸金業者に対して事実確認等を求めることとしている。
 今後とも、このような実態把握を通じて、改正法の執行状況及びその効果を見極めてまいりたい。

二について

 金融庁においては、一についてで述べた「貸金業規制法の改正に伴う貸金業者の広告規制について」において、社団法人日本新聞協会等の広告関係団体に対し、改正法により貸金業者が公的な年金、手当等の受給者の借入意欲をそそるような表示又は説明をしてはならない旨の規定が新設されたこと及び違法な年金担保融資を助長する広告等を行っている貸金業者に関する情報があった場合における財務局又は都道府県への連絡について傘下会社に周知するよう要請した。
 また、一についてで述べた事務連絡文書において、財務局に対し、都道府県と連携の上、関連する広告関係団体に対し同様の要請を行うよう指示するとともに、改正法の内容を各登録貸金業者に通知するよう指示した。
 さらに、都道府県に対し、平成十六年十二月九日付けで事務連絡文書を発出し、改正法の内容を各登録貸金業者に通知することについて、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十五条の四第一項に基づき、助言及び勧告をした。
 また、都道府県からは、貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号。以下「貸金業規制法」という。)について、第十六条第二項第四号違反に係るものを含め、行政処分については随時、苦情・相談等の件数については四半期ごとに、通知を受けている。

三について

 警察庁においては、都道府県警察に対し、改正法の内容を通知するとともに、いわゆる闇金融事犯の取締りにおいて公的給付に係る預金通帳等の保管等の制限に関する規定を的確に適用するよう指示しているところである。当該規定に係る検挙件数については、改正法施行後平成十七年六月末までに二件(立件した事件に係る被害者数は十名)である。警察庁としては、引き続き、都道府県警察に対し、いわゆる闇金融事犯の取締りにおいて当該規定を的確に適用するよう指導していく方針である。
 また、金融庁においては、一についてで述べた事務連絡文書において、財務局に対し、関係機関との連携強化及び資金需要者に対する広報活動の充実について指示するとともに、二についてで述べた事務連絡文書において、都道府県に対し、関係機関との連携強化及び資金需要者に対する広報活動の充実について、地方自治法第二百四十五条の四第一項に基づき、助言及び勧告をした。改正法施行後平成十七年六月末までに、貸金業規制法第十六条第二項第四号又は第二十条の二に違反するとして、都道府県が貸金業規制法に基づき行政処分を行った貸金業者の数は八業者であり、その内訳は業務停止処分については二業者、登録取消処分については六業者である。なお、同期間中、これらの規定の違反に係る金融庁による行政処分事案は発生していない。金融庁としては、引き続き、関係機関とも連携を図りながら、貸金業者に対する厳正かつ適切な監督に努めていく方針である。

四について

 違法な年金担保融資に係る広報については、金融庁及び社会保険庁のホームページのほか、テレビ番組、ラジオ番組、新聞広告・新聞折り込み紙、雑誌、音声CD等の広報手段により行うとともに、原則として年一回、年金の支払予定日及び支払予定金額について社会保険庁が年金受給者に対して送付する年金振込通知書において、「年金証書や預貯金通帳・印鑑等を預けるよう要求し、高金利で融資を行う違法かつ悪質な貸金業者には十分注意してください。」と記載するなどにより、年金受給者に対する注意喚起を行っている。
 また、年金の受給権を担保として小口の資金の貸付けを行う独立行政法人福祉医療機構においても、当該貸付けの受付を行う金融機関において配布するリーフレット等により、年金受給者に対する広報及び注意喚起を行っている。

五について

 債務者が自らの便宜のために、年金その他の貸金業規制法第二十条の二に規定する公的給付が払い込まれる預金又は貯金の口座に借入金返済のための自動振替を設定している場合もあり得ることから、公的給付の払い込まれる口座に貸金業者への自動振替が設定されていることをもって、直ちに当該貸金業者による脱法的行為と断定することはできないが、政府としては、寄せられた苦情等も参考に、貸金業者に係る検査や報告徴収等を通じ、貸金業者の債権回収方法が貸金業規制法上問題があることが把握された場合には、貸金業規制法に基づき厳正かつ適切に対処してまいりたい。

六について

 政府としては、引き続き、資金需要者等の利益の保護等の観点から、貸金業者に対して厳正かつ適切な監督を行うとともに、貸金業者の業務の実態を踏まえ、必要な場合には御指摘の事務ガイドラインの改正の検討をも含め、適切に対応してまいりたい。