質問主意書

第162回国会(常会)

答弁書


答弁書第三二号

内閣参質一六二第三二号
  平成十七年七月一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員広中和歌子君提出小児・幼児に対する向精神薬の投与に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員広中和歌子君提出小児・幼児に対する向精神薬の投与に関する再質問に対する答弁書

一について

 平成十五年度に厚生労働科学研究費補助金の交付を決定した石川洋一氏を主任研究者とする「小児薬物療法におけるデータネットワークのモデル研究について」(以下「本研究」という。)の当該補助金の額は、八百十万円である。また、同年度以外の本研究に対する当該補助金の額については、平成十三年度は千万円であり、平成十四年度は九百万円である。

二について

 本研究の対象は、小児科領域における医薬品の適応外使用(薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条の規定に基づく製造販売の承認(以下単に「承認」という。)を受けた医薬品の承認外の効能、効果等を目的とする使用をいう。以下同じ。)の改善及び小児科領域の医薬品の治験・臨床試験の推進に資するため、小児薬物療法におけるデータネットワークモデルを構築するための基礎資料を作成し、その有用性と問題点を検証することであり、本研究の成果は、三十二施設の協力を得て医療現場からインターネットを利用して臨床情報を収集するデータネットワークモデルが構築され、その有用性等が示されたことである。

三について

 本研究の分担研究である「フェンタニール注、塩酸メチルフェニデート錠・散及びマレイン酸フルボキサミン錠に関する処方実績調査」(以下「分担研究」という。)において、塩酸メチルフェニデート錠等の処方実態調査が行われており、政府は、分担研究を含め本研究の報告を受けているところである。しかしながら、分担研究においては、調査対象医療機関が限定されており、また、分担研究は発達障害児(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項に規定する発達障害児をいう。以下同じ。)に対する向精神薬の使用状況の調査を直接の目的としたものではないこと等から、本研究の報告を受けたことのみで向精神薬投与の実態を把握していると判断することはできないとの認識の下、先の答弁書(平成十七年六月十日内閣参質一六二第二三号)においては「把握していない。」と答弁したものである。

四について

 本研究の対象は、小児科領域における医薬品の適応外使用の改善及び小児科領域の治験・臨床試験の推進に資するため、小児薬物療法におけるデータネットワークモデルを構築するための基礎資料を作成し、その有用性と問題点を検証することであり、政府は、本研究について報告を受けていることから、発達障害児に対する向精神薬投与の実態を把握していないことをもって、本研究に対する補助金が「無駄」であることにはならないと考えている。また、小児科領域における医薬品の適応外使用への対応を目的として平成十七年度予算に計上した小児に対する薬物療法の根拠情報収集事業のデータ収集において、本研究の成果が活用できることから、本研究は「行政施策への反映」、「国民の健康水準の向上」につながると考えている。

五について

 医薬品の添付文書は、薬事法第五十二条の規定に基づき医師等の医療関係者に対して必要な情報を提供する目的で作成されるものであり、添付文書において小児等に対し「投与しないこと(安全性が確立していない)」と記載されたとしても、個々の医師の判断による医薬品の適応外使用が禁止されているものではないが、医師が医薬品の適応外使用を行う場合は、医師は、患者に適切な説明を行い、患者の理解を得るよう努めた上で、患者の状態、現在得られている医学的知見等も踏まえた専門的な判断により、個々の事例に即して適切に医薬品の適応外使用を行うべきであると考えている。政府においては、医学的知見を踏まえた小児に対する医薬品の適応外使用の改善等のための環境整備が重要と考えており、本研究もその一環として行っているものである。
 なお、今後、発達障害者(発達障害者支援法第二条第二項に規定する発達障害者をいう。)に対する適切な支援方策の在り方を考える中で、「小児等に対する向精神薬の投与の実態」を把握するための調査が可能かどうか検討してまいりたい。

六について

 自殺した児童について、その原因が薬物治療であるかどうかの特定は極めて困難であると考えており、お尋ねの調査をすることは考えていない。