質問主意書

第162回国会(常会)

答弁書


答弁書第二○号

内閣参質一六二第二○号
  平成十七年六月三日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員近藤正道君提出日本原燃株式会社によるガラス固化体貯蔵設備の崩壊熱除去解析虚偽報告に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員近藤正道君提出日本原燃株式会社によるガラス固化体貯蔵設備の崩壊熱除去解析虚偽報告に関する質問に対する答弁書

一の1、2及び7について

 お尋ねの「平成十三年七月三十日付けの変更申請書」(以下「平成十三年廃棄事業変更許可申請書」という。)は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第五十一条の五第一項の規定に基づく廃棄事業に係る変更の許可(以下「廃棄事業変更許可」という。)を求める申請書であるが、原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)においては、廃棄事業変更許可を行うに当たっては、廃棄物管理施設の仕様の概略を基に基本設計又は基本的設計方針について審査を行っているところであり、より具体的な施設の安全性については、原子炉等規制法第五十一条の七第一項又は第二項の規定に基づく特定廃棄物管理施設に関する設計及び工事の方法の認可(以下「廃棄物管理施設設工認」という。)を行う段階で、詳細設計を基に確認しているところである。お尋ねの「ガラス固化体等の温度」については、廃棄物管理施設設工認を行う段階で安全性確保の観点から審査を行っているところであり、廃棄事業変更許可の申請書の添付書類には、施設の仕様の概略を基に申請者が計算したガラス固化体等の温度が参考として記載されているものの、廃棄事業変更許可を行う段階で、その妥当性等を検証しているわけではないことから、お尋ねの点にお答えすることは困難である。
 なお、平成十六年十月二十九日に日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)が経済産業大臣に提出した廃棄物管理施設設工認の申請書については、保安院において、お尋ねの「B棟」(以下「B棟」という。)に係る崩壊熱除去解析の結果に誤りがあった理由等につき日本原燃から説明を受けたところであるが、当該説明に特に問題とすべき点はなく、日本原燃が故意に誤った内容の申請を行ったとは考えていない。

一の3及び5について

 平成十三年廃棄事業変更許可申請書において、お尋ねの「A棟」の迷路板部断面積は、シャフト断面積からシャフト内に設置された迷路板の面積を除いた面積であり、このため、シャフト断面積の値と迷路板部断面積の値は異なるものとなっているところであると承知している。
 また、B棟においては、迷路板がシャフト内ではなくシャフトと下部プレナムを結ぶ導管の内部に設置されているところ、お尋ねの「入口迷路板部断面積」は、当該導管の断面積から迷路板の面積を除いた面積であると承知している。
 B棟の入口迷路板部断面積が約四・○平方メートルである旨の平成十三年廃棄事業変更許可申請書の記述については、実際には迷路板部断面積を約二・七平方メートルとする予定であったにもかかわらず、日本原燃において平成十三年廃棄事業変更許可申請書を作成する際、誤って「約四・○平方メートル」と記述してしまったものであると承知しており、平成十五年十月一日に日本原燃が経済産業大臣に提出した「再処理事業所廃棄物管理事業変更許可申請書本文及び添付書類の一部補正について」により、入口迷路板部断面積は約四・○平方メートルではなく、約二・七平方メートルである旨の訂正がなされているところである。その際、平成十三年廃棄事業変更許可申請書のその他の部分については、B棟の入口迷路板部断面積が約二・七平方メートルであるとの前提で作成されていたところ、ガラス固化体の温度等に関する記述については、特に訂正を行う必要がなかったものであると承知している。

一の4について

 お尋ねの「a、b、BC及びLBC」の数値については、承知していない。

一の6について

 お尋ねは、平成十七年一月二十八日に日本原燃が保安院へ提出した「特定廃棄物管理施設のガラス固化体貯蔵建屋B棟及び再処理施設においてガラス固化体を貯蔵する類似の冷却構造を有する設備における崩壊熱の除去解析の再評価結果報告書」(以下「再評価結果報告書」という。)の記述に関するものと考えるが、保安院としては、再評価結果報告書の内容に特に問題とすべき点があるとは考えていない。
 また、B棟の入口迷路板部断面積が約四・○平方メートルから約二・七平方メートルに訂正された件については、一の3及び5についてで述べたように、「文献式の解釈間違い」により生じた誤りを訂正したものではないと承知している。

一の8について

 B棟に関する1から7までの各質問項目に沿ってお答えすると、次のとおりである。
①1及び7について
 お尋ねの「平成八年の変更申請」(以下「平成八年再処理事業変更許可申請」という。)は、原子炉等規制法第四十四条の四第一項の規定に基づく再処理事業に係る変更の許可(以下「再処理事業変更許可」という。)を求める申請であるが、旧科学技術庁においては、再処理事業変更許可を行うに当たっては、再処理施設の仕様の概略を基に基本設計又は基本的設計方針について審査を行っているところであり、より具体的な施設の安全性については、原子炉等規制法第四十五条第一項又は第二項の規定に基づく再処理施設に関する設計及び工事の方法の認可(以下「再処理施設設工認」という。)を行う段階で、詳細設計を基に確認しているところである。お尋ねの「ガラス固化体等の温度」については、再処理施設設工認を行う段階で安全性確保の観点から審査を行っているところであり、再処理事業変更許可の申請書の添付書類には、施設の仕様の概略を基に申請者が計算したガラス固化体等の温度が参考として記載されているものの、再処理事業変更許可を行う段階で、その妥当性等を検証しているわけではないことから、お尋ねの点にお答えすることは困難である。
 なお、平成十一年二月二十四日及び平成十五年三月六日に日本原燃が旧科学技術庁長官及び経済産業大臣に提出した再処理施設設工認の申請書については、保安院において、お尋ねの「東棟」(以下「東棟」という。)及び「西棟」(以下「西棟」という。)に係る崩壊熱除去解析の結果に誤りがあった理由等につき日本原燃から説明を受けたところであるが、当該説明に特に問題とすべき点はなく、日本原燃が故意に誤った内容の申請を行ったとは考えていない。
②2、3及び5について
 平成八年再処理事業変更許可申請に係る申請書には、シャフト断面積及び迷路板部断面積は記載されていない。
③4について
 一の4についてで述べたように、東棟及び西棟に係る「a、b、BC及びLBC」の数値については、承知していない。
④6について
 一の6についてで述べたとおり、保安院としては、再評価結果報告書の内容に特に問題とすべき点があるとは考えていない。
 また、②で述べたとおり、平成八年再処理事業変更許可申請に係る申請書には、シャフト断面積及び迷路板部断面積は記載されていない。

二の1について

 日本原燃からは、再評価結果報告書に示されている西棟に係る崩壊熱除去解析の再評価の結果を踏まえ、平成十五年三月六日に経済産業大臣に提出した再処理施設設工認の申請書(以下「平成十五年再処理施設設工認申請書」という。)の補正を行う予定であると聞いており、当該補正がなされた後、西棟に保管されるガラス固化体の中心温度に係る部分を含め、補正後の当該申請書の内容について審査を行うこととなる。

二の2について

 日本原燃からは、西棟については、設計上、一貯蔵ピット当たりのガラス固化体の貯蔵本数が東棟よりも多いこと及び迷路板の寸法、形状等が東棟と異なっていることから、西棟に貯蔵されるガラス固化体の温度が東棟のものよりも高くなるという評価結果になったと聞いている。

二の3について

 お尋ねの点については、再評価結果報告書において、西棟の「ガラス固化体の貯蔵密度を増大したため、迷路板の寸法・形状等の変更を行った」際に、「迷路板の圧力損失を再度計算した」が、計算方法に誤りがあったため「圧力損失計算結果が小さくなる方向になった」旨の記述がある。

二の4及び5について

 お尋ねの「平成十三年七月の変更申請」は、再処理事業変更許可を求める申請であるが、一の8についての①で述べたように、ガラス固化体等の温度については、再処理事業変更許可を行う段階で、その妥当性等を検証しているわけではないことから、お尋ねの点にお答えすることは困難である。
 なお、一の8についての①で述べたように、平成十五年再処理施設設工認申請書において西棟に係る崩壊熱除去解析の結果に誤りがあった点については、日本原燃が故意に誤った内容の申請を行ったものであるとは考えていない。

三について

 保安院としては、再評価結果報告書の内容に特に問題とすべき点があるとは考えておらず、お尋ねの点については、特に確認をしていない。

四について

 お尋ねの費用については、承知していない。

五の1について

 お尋ねの「解析誤り」は、廃棄物管理施設設工認等の申請書に係るものであり、当該申請書の内容については、申請者である日本原燃が責任を負うべきものであると考えている。

五の2について

 一の1、2及び7について、一の8についての①及び二の4及び5についてで述べたように、お尋ねの「解析誤り」に係るガラス固化体等の温度については、再処理事業変更許可及び廃棄事業変更許可の段階で審査を行うこととはしておらず、これらの許可については、許可を行った旧科学技術庁及び保安院並びに当該許可について意見を述べた原子力安全委員会の対応に、「解析誤り」との関係で問題が生じることはないものと考えている。
 また、平成十年六月二十六日及び平成十一年二月二十四日に日本原燃が旧科学技術庁長官に提出した再処理施設設工認の申請書については、申請書で用いられている解析方法等に基づき適切な計算がなされていることを前提に、当該解析方法等の妥当性について審査を行ったところ、計算の過程における誤りを発見できなかったところであるが、今後、申請書に用いられている解析方法と異なる方法を用いて解析結果の妥当性を確認するクロスチェック解析などにより保安院における審査に万全を期するとともに、日本原燃に対し、適切な事業実施のための体制を確立するよう指導するなど、今回のような事態の再発の防止に万全を期してまいる所存である。