第162回国会(常会)
答弁書第一九号 内閣参質一六二第一九号 平成十七年五月二十四日 内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議長 扇 千景 殿 参議院議員福島みずほ君提出長野県南木曽町で起きたヘリコプター墜落事故に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島みずほ君提出長野県南木曽町で起きたヘリコプター墜落事故に関する質問に対する答弁書 一の1について 「送電線等に係る航空障害標識の設置等について」(平成十六年三月二十六日付け国空保第五百二十七号・国空航第千二百四十五号)に基づき実施した送電線に関する調査により国土交通省において把握している限りでお答えすると、昼間障害標識が設置されている三か所の送電線に係るお尋ねの事項については、別紙一のとおりである。 一の2について 地表又は水面から六十メートル以上の高さの送電線については、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号。以下「法」という。)及び航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号。以下「規則」という。)の規定に基づき、その設置者は、原則として、航空障害灯及び昼間障害標識(以下「航空障害標識」という。)を設置しなければならないところ、航空障害灯については法第五十一条第一項ただし書の規定により国土交通大臣の許可を受けた場合、昼間障害標識については規則第百三十二条の二第一項の規定により国土交通大臣が昼間障害標識を設置する必要がないと認めた場合には、それぞれ航空障害標識を設置しなくてもよいこととされている。 送電線への航空障害標識の設置については、送電線の構造、航空障害標識の重量等による技術的な課題があることから、地理的条件によって航空障害標識の設置が必要でないと認められる場合、鉄塔に航空障害灯が設置されている等送電線への航空障害標識の設置に代わる措置がとられその効果が認められる場合等については、法第五十一条第一項ただし書の規定による許可等により、航空障害標識の設置を免除することとしてきたところである。 一の3について 平成十六年三月七日の長野県南木曽町でのヘリコプター墜落事故(以下「本件事故」という。)が発生する以前に、国土交通省において、地表又は水面から六十メートル以上の高さの送電線を対象として、航空障害標識の設置の有無の調査を行ったことはない。また、御指摘の全国調査以外に、例えば、平成十三年七月の規則改正に当たり、同省において、航空障害標識の設置年度別及び高さ区分別の調査を行っている。 一の4について 送電線に直接設置する航空障害灯については、送電線の構造、航空障害灯の重量等による技術的な課題があることから、現在のところ、送電線への航空障害灯の設置の基準は具体的に設定されていない。 一の5について 本件事故を踏まえて設置した「送電線等の航空障害標識のあり方検討会」において、平成十六年五月二十六日から同年九月三十日までの間に、ヘリコプターの操縦士を対象に実施した「送電線等航空障害物件の周辺における小型機運航実態調査」では、回答者の約七十五パーセントに相当する百八十名から、「山間部における夜間飛行はほとんどない。」との回答があり、また、多数の回答者から、送電線の存在が予想される地域については危険を回避するために谷間には入り込まないが、やむを得ず谷間を飛行する場合は鉄塔の上を飛行しているとの回答があった。 これらの結果を踏まえて、同検討会の報告において、「山間部の送電線への航空障害灯の設置は必要ないと考える。」とされたところである。 一の6について 国土交通省において把握している限りでお答えすると、御指摘の六十件の送電線に係るお尋ねの事項については、別紙二のとおりである。 一の7について 国土交通省において把握している限りでお答えすると、御指摘の五百八十六件及び六十七件の送電線に係るお尋ねの事項については、それぞれ別紙三及び別紙四のとおりである。 二の1について 航空事故調査官による中日本航空株式会社長野運航所(以下「長野運航所」という。)に対する調査により、送電線の場所を記載した地図が長野運航所に備え付けられていたことは確認しているが、同地図が何冊備え付けられていたかは確認していない。また、事故機の機長が同地図を複写して携行していたかについては、機体が炎上し機内の書類が焼失していたため確認できなかった。 二の2について 本件事故に関する「航空事故調査報告書」(以下「報告書」という。)の2・13・7に記載されているとおり、中日本航空株式会社(以下「中日本航空」という。)に対する聴き取り調査の結果、「指導していなかった。」との回答を得ている。 二の3について 報告書の2・13・7に記載されているとおり、中日本航空に対する聴き取り調査の結果、「送電線の場所を記入した地図を示しながら危険な場所の説明をすることで周知を行っていた。」との回答を得ている。 二の4について お尋ねの根拠については、報告書に記載されているとおりである。 二の5について 本件事故は、取材撮影中に発生したものではないことから、本件事故の原因の究明に当たり、撮影機材の性能等に関する詳細な調査は行っておらず、お尋ねについてはお答えすることは困難である。 二の6について 報告書の2・1に記載されているとおり、墜落したヘリコプターは、取材現場に向けて、通常は飛行しない谷間を飛行していたことが目撃されている。このような通常とは異なった飛行をした理由の一つとして、取材のために高度を下げて飛行した可能性も考えられるため、御指摘のような記述としたものである。また、信越放送株式会社に対しては、この件に関しての調査は行っていない。 二の7について 法第百三十四条第二項の規定に基づく立入検査により、長野運航所では、中日本航空が定めた「報道取材飛行実施要領」に規定する「送電線、索道等の障害物を地図上にプロットすること」が実施されていなかったこと等、航空障害物件の情報を確実に把握するための体制に不備があったことを確認している。 二の8について 平成十三年五月十九日の三重県桑名市上空での空中衝突事故の発生を受けて、国土交通省大阪航空局長は、中日本航空に対し、同年六月二十七日、法第百十二条の規定に基づき、運航の管理体制の改善、空中衝突事故等を防止するための外部監視の徹底、全社的な安全に対する取組の強化及び安全意識の再徹底を内容とする事業改善命令を行っている。 国土交通省大阪航空局では、同年七月十八日、中日本航空から改善報告を受けた後、同月二十三日及び二十四日に行った法第百三十四条第二項の規定に基づく立入検査において、改善報告の実施状況を確認するため、事故航空機の基地である中日本航空の本社を実地に検査したほか、平成十四年度及び平成十五年度は、中日本航空の七か所の運航所において、同様に立入検査を行っている。 また、本件事故の発生を受けて、国土交通省大阪航空局長が平成十六年四月二十三日に行った事業改善命令については、国土交通省大阪航空局では、同年五月二十一日に中日本航空から改善報告を受けた後、長野運航所及び本社を始め七か所の運航所に対する立入検査を実施しており、今年度においても、中日本航空の五か所の運航所に対する立入検査を計画している。 二の9及び11から13までについて 信越放送株式会社は、法第百二十五条第二項の航空機使用事業者ではないことから、同社に対する詳細な調査は行っておらず、お尋ねの同社の航空取材に関する体制等については承知していない。 二の10について 御指摘の「航空取材ハンドブック」の存在については、新聞報道により承知しているが、同ハンドブックが信越放送株式会社内でどのように取り扱われているのかについては承知していない。 別紙一 別紙二 1/2 別紙二 2/2 別紙三 1/12 別紙三 2/12 別紙三 3/12 別紙三 4/12 別紙三 5/12 別紙三 6/12 別紙三 7/12 別紙三 8/12 別紙三 9/12 別紙三 10/12 別紙三 11/12 別紙三 12/12 別紙四 1/2 別紙四 2/2 |