質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第四八号

関西電力美浜発電所三号機事故における保安規定遵守義務違反に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年八月八日

近藤 正道   


       参議院議長 扇 千景 殿



   関西電力美浜発電所三号機事故における保安規定遵守義務違反に関する質問主意書

 五名もの死者を出した国内最悪の関西電力美浜発電所三号機(以下「美浜三号機」という。)二次系配管破断事故から、早くも一年になろうとしている。
 関西電力は、八月四日、経済産業省に対し「美浜発電所三号機配管取替等の技術基準適合確認の実施計画書」を提出しており、国の許可を受けた後に破断した配管部位の取替を約一か月かけて行い、早々と美浜三号機の運転を再開しようとしている。
 この配管取替等の実施計画書提出は、昨年九月二七日付けの経済産業大臣による「美浜発電所三号機に対する技術基準適合命令について」を受けてのことであり、減肉で薄くなって破断した配管を新品に交換することによって、技術基準で定められた肉厚を満足したことを確認するというものである。
 しかしながら、当該配管を交換することで、美浜三号機事故に関する法的問題は終了するのであろうか。原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)がまとめた事故に関する報告書からも、この事故は、関西電力が保安規定遵守義務に違反して引き起こしたものであると言わざるを得ない。保安規定遵守義務違反は、原子炉等規制法で規定されているように、原子炉の設置・運転の許可の取消に至るほどの重大な問題である。
 事故から一年を経過しようとしているにもかかわらず、保安院から関西電力に対しては、保安規定遵守義務違反の指摘と、それに伴う何らの措置も出されていない。よって、以下質問する。

一 保安院は、二〇〇五年三月三〇日に「関西電力株式会社美浜発電所三号機二次系配管破損事故について(最終報告書)」をまとめた。この最終報告書では、事故の直接的原因について、二次系配管の管理を定めたPWR管理指針が適応されていなかったこと、さらに、不適切な外注管理を放置してきた関西電力の管理体制に問題があったと指摘している。
 また、保安院が二〇〇四年九月二七日にまとめた「関西電力株式会社美浜発電所三号機二次系配管破損事故に関する中間とりまとめ」では、「現行の制度においては、二次系配管の肉厚管理に関する社内規定は、事業者の『保安規定』の下部規定と位置づけられている。したがって、保安院としては、各事業者に対して、継続的に実施する保安検査において、事業者による社内規定の遵守状況を入念に確認していくこととする」旨を示している。この「二次系配管の肉厚管理に関する社内規定」とはPWR管理指針の事を指しており、そのため、PWR管理指針は「保安規定の下部規定」と位置づけられているはずである。また、適切な外注管理も、保安規定の重要な要素である。
 そうであれば、PWR管理指針に従わず、二八年間もの点検リストからの記載漏れによって配管の破断を引き起こし、五名もの死者を出した美浜三号機事故は、関西電力が保安規定遵守義務に違反して引き起こした事故ではないのか。政府の見解をその理由とともに具体的に示されたい。

二 東京電力による検査データのねつ造事件を受けて、原子炉等規制法が改正された。この改正では、トップマネジメントによる品質保証体制の構築を保安規定に明記することとなった。同時に、それまでの自主検査を定期事業者検査と位置づけ、記録の保存が義務づけられた。二次系配管の検査も定期事業者検査の対象となった。
 関西電力は、二〇〇四年六月七日に美浜発電所の保安規定変更申請書を提出し、保安院は二〇〇四年六月十六日に認可した。美浜三号機事故が発生した二〇〇四年八月九日時点では、品質保証体制を明記した新しい保安規定が実効性を持つものとなっていた。
 「美浜発電所原子炉施設保安規定」第一条では、この規定が美浜発電所原子炉施設の保安のために必要な措置を定め、核燃料物質等又は原子炉による災害の防止を図ることを目的として定めている。
 美浜三号機事故は、関西電力がこの「保安のための必要な措置を定め」、「原子炉による災害の防止を図る」保安規定を遵守しなかったことによって起こったのではないのか。政府の見解をその理由とともに具体的に示されたい。

三 原子炉等規制法第三十七条第四項では、「原子炉設置者及びその従業者は、保安規定を守らなければならない」と規定されている。そして同法第三十三条第二項では、「主務大臣は、原子炉設置者が次の各号の一に該当するときは、第二十三条第一項の許可を取り消し、又は一年以内の期間を定めて原子炉の運転の停止を命ずることができる。」とされ、同条同項第四号では「第三十七条第一項若しくは第四項の規定に違反し、又は同条第三項の規定による命令に違反したとき」が挙げられている。
 美浜三号機事故が関西電力による保安規定遵守義務違反によって引き起こされたのであれば、原子炉等規制法の規定により、関西電力の美浜三号機に係る原子炉設置・運転の許可は取り消されるべきと考える。政府の見解をその理由とともに具体的に示されたい。

  右質問する。