質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

十八歳未満に保障されている児童デイサービスの小学校卒業時打ち切りに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年五月二日

足立 信也   


       参議院議長 扇 千景 殿



   十八歳未満に保障されている児童デイサービスの小学校卒業時打ち切りに関する質問主意書

 児童福祉法に基づいて十八歳になるまで受けられることになっている児童デイサービスが、全国の市町村において小学校卒業とともに打ち切られてしまっている。その理由は、平成十五年六月六日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「児童デイサービスに係る居宅生活支援費の支給等の対象となる児童について」により、幼児及び学齢児(小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部に就学している児童)に対象を限定されているためである。
 この件について、三つの観点から以下質問する。

一、障害者福祉の理念からみた問題について

 平成十二年の社会福祉基礎構造改革により、支援費制度が導入され、居宅介護、デイサービス、短期入所を柱とする居宅生活支援は、十八歳未満は児童福祉法、十八歳以上は身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法にそれぞれ規定され、切れ目なく連続して利用できるよう法制化された。これは、「障害者プラン」において国が「ライフステージの全ての段階において全人間的復権を目指す」とした理念の具現化であり、高く評価されているところである。また、それに先立つ「厚生省心身障害研究」では、「障害のある本人を一時的に預かるサービスは、保護者を介護から解放するという面だけではなく、あらゆる背景から必要とされるものであり、大切なことはサービスの利用者(障害を持つ本人を含めた家族)が必要とする一時的な介護サービスを利用者中心に提供することである」とし、このサービスを家族の地域生活全体を支援するものとして「生活支援」と名付けるなど、鋭い考察の結実したものと理解される。
 このようにして整えられてきた優れた制度に、厚生労働省自らが穴をあけ、一生のうち、十三歳から十八歳になるまでの期間だけデイサービスを受けられなくする意図は何か、明確に示されたい。

二、法律の解釈からみた問題について

 十三歳から十八歳になるまでの期間を対象からはずすというのは、十八歳未満を対象とする児童福祉法と矛盾するのはいうまでもない。また、法文上、支援費の支給対象を制限できるのは、市町村が申請者の障害の程度などを勘案して支給の要否を決める時と支給決定を取消す時の二つだけである。支給決定時に勘案する事項は省令で、障害児の障害の種類や程度、保護者の状況、支援費の受給の状況、保健医療サービス等の利用状況、障害児の置かれている環境、児童居宅支援の提供体制の整備の状況となっている。取消しの理由は法律で「本人が居宅支援を受ける必要がなくなったと認められるとき」と「引っ越したとき」の二つに限定されている。いずれにしても、支給対象を定めるときの要件に、本人の状態にかかわらず一律に年齢制限を加えるということは、条文上読めるところがない。したがって、市町村が一律の年齢制限を理由に支援費の支給を拒んだ場合、児童福祉法違反のおそれが強いと思われるが、どのように考えるか、見解を示されたい。
 また、本来であれば、そういう行為を行っている市町村があったなら、地方自治法第二百四十五条の五に基づく「是正の要求」を行うのが厚生労働省の役割であるはずと考えるが、自らの発した通知により、そのような行為を促していることについてどのように考えるか、見解を示されたい。

三、地方と国の関係からみた問題について

 平成十二年に施行された地方分権一括法により、従来、通知・通達などの形で行われてきた行政指導について法的に整理され、自治事務に対して国は個別に法に定めがない限り「技術的助言や勧告」などしか行えないことになり、地方公共団体はそれに従う法的な義務はなくなり、従わない場合に国が不利益な取り扱いをすることを禁止する条項が定められた。当該通知は地方自治法第二百四十五条の四に基づく「技術的助言」である。「技術的助言」は、「助言を受けた地方公共団体が法的に助言に従う義務を負うものではなく、助言に従うか従わないかの選択は地方公共団体の自由意志に任されている。」という解釈がなされているが、それでよいか、明確に示されたい。

  右質問する。