質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第一四号

日中戦争等における中国人被害者による損害賠償請求訴訟等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年四月二十一日

喜納 昌吉   


       参議院議長 扇 千景 殿



   日中戦争等における中国人被害者による損害賠償請求訴訟等に関する質問主意書

 旧日本軍の細菌戦部隊「七三一部隊」による生体実験や、南京虐殺・無差別爆撃などによって家族を殺傷されるなどの被害があったとして、中国人とその遺族計十人が、日本政府を相手取って謝罪と賠償を求めた訴訟の控訴審判決が本年四月十九日、東京高等裁判所で言い渡され、原告側の控訴は棄却された。
 そこで、以下質問する。

一、一九九九年九月に東京地方裁判所において言い渡された一審判決では、「日中戦争は、中国及び中国人民に対する弁解の余地ない帝国主義的、植民地主義的意図に基づく侵略行為」「日本の侵略占領と、これに派生する非人道的行為が長期間続き、南京虐殺と言うべき行為があったのはほぼ間違いなく、七三一部隊が人体実験をしていたのも疑う余地がなく、多数の中国人民に甚大な戦争被害を与えたのは疑う余地のない歴史的事実」「我が国は真摯に中国人民に謝罪すべきだ」「日中間の友好関係と平和を維持発展させるには、相互の民族感情の宥和を図るべく我が国が更に最大限の配慮をすべきだ」などと戦時の事実関係を認め、日本政府に配慮を勧告している。今回の控訴審判決にはこうした事実認定の言及がないが、一審の事実認定自体を否定してはいないことから、事実認定は維持されたものと受け止めることができる。
 今回の控訴審判決を政府がどのように受け止めているか、見解を示されたい。また、一審判決における事実認定が控訴審判決でも維持されているか否かについての政府の見解も示されたい。

二、控訴審判決は棄却だが、政府は一審判決の「最大限の配慮をすべきだ」という勧告にも従いつつ、本件の謝罪と賠償に関して政治的決着を図る決断はできないか。その理由も含めて明らかにされたい。

三、本件以外にも同種の訴訟がいくつかあり、これまでに判決が出たものはいずれもほぼ同様の判決内容となっている。本件と同様の判決が出た過去の訴訟、あるいは今後判決が出る訴訟に関して、政府に政治的決着を図る意思はないか。

四、本件一審判決の事実認定があるにもかかわらず、文部科学省検定の歴史教科書の中に、認定された事実に全く触れなかったり、日中戦争自体を日本に都合のいいように解釈したりする記述のある教科書があるため、対中関係をこじらせている。今月の外務大臣訪中時の提案の結果、今後、日中間で歴史専門家による歴史認識共有のための会合が開かれる可能性が出ているが、将来、そのような会合で共有された歴史認識が教科書の記述に反映されるべきだと政府は考えるか。

  右質問する。