質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第九号

印紙税に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年三月七日

櫻井 充   


       参議院議長 扇 千景 殿



   印紙税に関する質問主意書

 印紙税は、課税・非課税の別が明確でないだけでなく、納める際の様々な不公平感があることから、納税現場に混乱をもたらしている。国は、「公平」「中立」「簡素」という税制の基本原則にのっとって、納税者が混乱せず納得して納税できる制度にするよう努力する責任がある。
 そこで、以下質問する。

一 印紙税の課税額は、文書の種類と契約額によって異なっているが、文書の種類ごとに課税基準が変わるため、非常に分かりづらいものとなっている。さらに、そもそもなぜそのような基準になったのか、疑問を禁じえない。

1 同じ契約金額であっても、文書の種類により印紙税額が異なる。例えば、契約金額五十万円の場合、不動産売買契約書など第一号文書であれば印紙税額は四百円であるが、工事請負契約書など第二号文書であれば印紙税額は二百円となっている。このように印紙税額を変えているのはなぜか。また、印紙税額を現行のように決定した際の基準はあるのか。
2 第十七号文書のうち、「売上代金の領収書」においては、三万円未満を非課税としているが、なぜ「三万円」という金額で区切っているのか。どのような経緯及び理由でこの金額が決定したのか。また、今もなお妥当であると考えているのか。

二 同じ金額の文書を作成した場合に、大企業と中小企業とが印紙税を同様に負担している現状は、中小企業に不利なのではないか。また、中小企業に対し印紙税負担を軽減する措置を導入することも必要と考えるが、いかがか。

三 税理士、弁護士、医師等の行為に関して作成される受取書は、営業に関しないものとして印紙税が課せられていない。取引に伴い作成される文書であるにもかかわらず課税されていないことは公平とは言い難いが、政府の見解を示されたい。

四 名刺の裏や請求書に「仮領収書」と書いて交付し、後に本領収書を交付するケースがある。その場合、その都度印紙の貼付が必要となるが、仮領収書に本領収書と差し替える旨を明記していても、印紙を貼り付けなければならないのか。負担軽減の観点から、このような場合に領収行為が一体であることを重視して印紙税の課税をどちらか一方に限るようにすべきではないか。

五 電子商取引でもインターネット上で契約書などが交わされることがあるが、添付ファイルなどの形で交わされる電子文書については印紙税の課税対象外となっている。同じ契約書などであるにもかかわらず、文書か電子文書かで印紙税の課税・非課税を判断することは不公平極まりなく、税の基本原則に反していると言わざるを得ない。電子商取引によって発生する電子文書による契約書などの捕捉が技術的に困難なのであれば、税の基本原則に合うように、印紙税そのものを見直す必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

六 国や郵便局、印紙売りさばき所等で印紙を販売する際、その売上は非課税売上として扱われている。また、三万円以上の印紙を販売しても受領書に印紙は必要ない。一方、民間事業者の契約時等においては、相手先には印紙の持ち合わせがなく、自分が所持している印紙を売り渡すような場面がよくあるが、民間事業者が所持している印紙を他者へ売り渡した際は、課税売上として扱われるだけでなく、三万円以上の印紙を販売すると受領書に印紙税が課税される。これでは、民間事業者に不当な損失を発生させるだけでなく、経済取引の利便性を損ねていると考えられる。よって、たとえ民間事業者であっても、印紙を販売した際には非課税となるよう措置すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

七 石油やガス、酒などのように、流通段階で課税されるものについて印紙税を課税することは、消費税のことも考えれば、三重課税となっているのではないか。このようなことが許されるのか。

八 印紙税の課税判断や還付手続の際必要な文書等について税務署に問い合わせた際、全く同じ事例でも、税務署あるいは担当者によって判断が異なるという看過できない問題がある。このような現状を、政府は認識しているか。また、このような問題が生じる原因は何であると考えているか。さらに、政府は現場で一貫性のある判断がなされるよう対策を講じるべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

九 印紙をもって租税及び国の歳入金を納付するときは、収入印紙を用いる原則である。その一方で、特許印紙、登記印紙、雇用保険印紙、健康保険印紙など、国の歳入金であるにもかかわらず異なる印紙を用いるものも多い。現在は貼付された印紙の区別により納付金の収納先会計が区別されているが、それを明らかにする手段を別途講じた上で、納税者の利便性を重視して一種類にまとめるべきではないか。

十 明治維新の頃における我が国の租税は地租に偏重していたために、商工業を軽く、農業に重く課せられることになり、商、工、農間における租税負担の権衡が失われていた。そこで、この是正を図るために、地租の改正に着手するとともに、商工業に重課されることとなる租税として導入されたのが、我が国における印紙税の起源であると承知している。しかし、現在の租税負担は農業より商工業に重くのしかかっており、導入当初の印紙税の役割は既に果たし終えたと考えられるが、政府の見解を示されたい。

十一 以上の質問で述べたように、印紙税をめぐる問題は山積している。このような印紙税は、果たして税制の基本原則に則していると言えるのか。また、印紙税の廃止を検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。