質問主意書

第161回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質一六一第一二号
  平成十六年十二月七日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員糸数慶子君提出在日米軍の再編と沖縄の負担軽減に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員糸数慶子君提出在日米軍の再編と沖縄の負担軽減に関する質問に対する答弁書

一の1について

 アメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)は、新たな安全保障環境における課題に対処するため、合衆国軍隊の全世界的な軍事態勢の見直し作業を行っており、我が国を含め、同盟国、友好国等と緊密に協議してきている。我が国に駐留する合衆国軍隊(以下「在日米軍」という。)の兵力構成の見直しについては、我が国は、在日米軍が有している抑止力の維持とともに、在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の過重な負担の軽減が十分に念頭に置かれるべきであると考えており、この点については、合衆国側も共通の認識を有しているところである。

一の2から4までについて

 我が国をめぐる安全保障環境については、我が国に対する本格的な侵略事態の生起の可能性は低下する一方、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展及び国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威並びに平和と安全に影響を与える多様な事態への対応が国際社会の差し迫った課題となっている。また、我が国が位置するアジア太平洋地域の状況については、冷戦終結後も軍事力の拡充や近代化が見られるなど、依然として不安定で不確実な状況が存在している。我が国は、自らの防衛力のみでは、自国の安全が脅かされるようなあらゆる事態には対処できない以上、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号。以下「日米安保条約」という。)を引き続き堅持し、その抑止力の下で前述のような新たな脅威等に対処し、我が国の安全を確保することが必要であると考えている。在日米軍の兵力構成の見直しに関する合衆国との協議においては、このような抑止力の維持が在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の過重な負担の軽減とともに十分に念頭に置かれるべきであると考えており、在日米軍の兵力構成の見直しについては、様々な可能性を検討しているところであるが、現時点で何ら決定はしていない。

一の5及び三の1について

 沖縄に駐留する合衆国軍隊を含め、在日米軍は、抑止力を通じ我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与していると認識している。また、在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の負担については、政府としてこれを十分に認識している。在日米軍の兵力構成の見直しに関する合衆国との協議においては、在日米軍が有している抑止力の維持とともに、在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の過重な負担の軽減が十分に念頭に置かれるべきであると考えており、このような観点から、合衆国政府との協議を進めていく考えである。現在、沖縄の在日米軍の施設及び区域の沖縄以外の国内あるいは海外への移転等の可能性を含め、どのように沖縄の負担の軽減を実現するかについて、様々な可能性を検討しているところであるが、現時点で何ら決定はしていない。

二の1について

 御指摘のように日米間で累次にわたり確認されているとおり、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化に対応して、在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢について日米両政府間で緊密に協議することは、一般論として当然のことであり、一の2から4までについてで述べた合衆国との協議もそのようなものの一つである。

二の2について

 一の2から4までについてで述べたとおり、アジア太平洋地域においては、冷戦終結後も依然として不安定で不確実な状況が存在している。我が国は、自らの防衛力のみでは、自国の安全が脅かされるようなあらゆる事態には対処できない以上、日米安保条約を引き続き堅持し、その抑止力の下で我が国の安全を確保することが必要であると考えている。沖縄に駐留する海兵隊は、高い機動力、即応性等を通じ、在日米軍の重要な一翼を担っており、我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与していると認識している。他方において、沖縄等在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の過重な負担の軽減を図ることは重要であり、沖縄に駐留する海兵隊を含む在日米軍の兵力構成の見直しについても、抑止力の維持とともに在日米軍の施設及び区域が所在する地方公共団体の過重な負担の軽減の重要性を踏まえて、合衆国側と協議している。

三の2について

 御指摘の「都市型訓練施設」とは、合衆国陸軍がキャンプ・ハンセン内のレンジ4という射撃場に建設している複合射撃訓練場のことであると考える。合衆国側によれば、合衆国陸軍が現在キャンプ・ハンセン内のレンジ16という射撃場に設置している射撃用建物、突破訓練施設及び屋外射場のうち、射撃用建物及びそれに附帯する突破訓練施設について、その損耗により代替施設を建設する必要があり、この機会に、合衆国陸軍が現在キャンプ・ハンセン及びキャンプ・シュワブにおいて分散実施している訓練を効率的かつ効果的に実施し得るようにするため、キャンプ・ハンセン内のレンジ4に射撃用建物、突破訓練施設、屋外射場、訓練塔及び管理地区から構成される複合射撃訓練場を建設するとのことである。在日米軍が、我が国において提供されている施設及び区域においてこのような複合射撃訓練場と同様の訓練場を有しているとは承知していない。また、自衛隊は、このような複合射撃訓練場と同様の訓練場は有していない。

三の3について

 在日米軍は、三の2についてで述べたキャンプ・ハンセンにおける複合射撃訓練場の建設に際して、公共の安全や地元住民の懸念にも配慮することとしており、具体的には、在日米軍は、流弾・跳弾対策として、射撃用建物内では、標的の後方に高密度ゴム製の弾丸トラップという安全設備等を設置すること、射撃用建物外では、施設及び区域の境界線とは反対の北西方向に対してのみ射撃を行うこと等の措置をとると承知している。
 なお、特定の地域や施設から本訓練場までの具体的な距離等については、明らかにされておらず、お答えすることは困難である。

四について

 在日米軍の兵力構成の見直しに関する日米間の協議の現状については、合衆国軍隊の軍事態勢の見直しについての基本的考え方、地域の情勢認識や日米の役割と任務といった基本的な論点について包括的な議論を行いつつ、日米それぞれの考え方に係る理解を深めるための意見交換を行っている段階である。その中で種々の具体的な見直しのアイデアについても議論してきているが、提案のやりとりを行っているわけではない。合衆国側との議論の内容については、合衆国政府との関係もあり、申し上げることはできないが、いずれにせよ、個別の施設及び区域についていかなる決定も行われておらず、仮定に基づくお尋ねに対してお答えすることは困難である。