質問主意書

第161回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二五号

新たな信託業法の運用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年十二月三日

藤末 健三   


       参議院議長 扇 千景 殿



   新たな信託業法の運用に関する質問主意書

 本臨時国会において、信託業法の全面改正及び関係する法律の改正が行われた。しかし、これらの法律の詳細な運用に関しては、政省令により定められることになっており、改正案審議の段階では明確にされていない。
 そこで、グループ企業内管理型信託を中心とした新たな信託業法の運用について、政府の方針を明らかにしたいため、以下のとおり質問する。

一 グループ企業内管理型信託については、製造メーカーなどによりグループ企業内において設立されるものと思われる。しかし、これらの企業では十分な信託管理の経験やノウハウが蓄積されておらず、厳しい管理を義務付けると実際の運営は難しいと思われる。また、信託業法で想定している分別管理義務や忠実義務について、知的財産特有の性質から従来の信託財産とは異なったものが必要と思われる。
 そこで、グループ企業内管理型信託における信託財産について、従前の信託銀行と同様の管理を必要とするのか、あるいは何らかの緩和を想定しているのかを明らかにされたい。

二 グループ企業内管理型信託において、信託受益権に基づきグループ会社が受領した収益は、特許法第三十五条に従い発明者に支払われるべき対価算定のベースとして認定される可能性があるものと思われる。そうであれば、グループ企業内管理型信託を活用するに当たってのデメリットとなり、積極的に採用しようとする企業は少なくなるのではないかと考えられる。グループ内子会社が信託受益権に基づき得た収益と、職務発明による発明の対価との関係はどのように考えているか。

三 グループ企業内管理型信託では、異なる子会社の知的財産を組み合わせて運用すること、すなわちライセンスすることが考えられるが、この場合の収益分配には個別知的財産の評価が必要となるものと思われる。クロスライセンスの場合は表面上金銭のやり取りはないが、信託財産となった場合には、個別の信託受益権との関係でどう認識すればよいかによって、対応はかなり異なると思われる。
 そこで、知的財産戦略大綱や知的財産推進計画でうたわれている知的財産権の評価手法の確立について、現状を示されたい。
 また、クロスライセンスなど直接収益を生まないものについては、どのように信託による収益を考えればよいのか。クロスライセンスによって相殺されているとみなすべき収益算定が必要となる可能性があるのか。

四 信託の対象について、既に特許として権利化されたものが信託の対象となることは理解しているが、出願中の特許(未審査又は審査中のもの)及び出願前のもの(特許を受ける権利の状態)については信託の対象となり得るのか。 

五 信託業法第五十一条の同一の会社集団における特例は国内関連会社にのみ有効と考えられるが、海外関連会社の知的財産権も一括管理する場合、国内同様のグループ企業内管理型信託は可能となるか。

六 グループ企業内管理型信託会社が関連会社の知的財産を受託し、それを訴訟によって権利行使する場合、特許法では特許権者又は専用実施権者しか権利行使が行えない。グループ企業内管理型信託会社がこのような権利行使を行う場合、受託した知的財産権については当該信託会社が特許権者である旨の特許庁への名義変更手続が必要となるか。仮に名義の変更が必要であるとすると、高額な費用が発生することとなるが、それをどう考えるか。

七 政府への届出については、特例であるグループ企業内管理型信託の場合単に届出のみでよいとされている。届出に当たっては、関連会社との信託契約書、参入資格証明等が必要とされているが、信託業の届出を親会社名で行うことで、別途信託会社を立ち上げることなく、親会社内の知的財産部が信託業務を行うことができることとなるのか。

  右質問する。