質問主意書

第161回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二一号

旧国鉄跡地の鉛等重金属汚染対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年十二月二日

紙 智子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   旧国鉄跡地の鉛等重金属汚染対策に関する質問主意書

 旧日本国有鉄道(以下「旧国鉄」という。)所有地を承継したJR各社及び独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧日本国有鉄道清算事業団(以下「旧国鉄清算事業団」という。))の売却地等において、鉛等重金属汚染が発生している。
 JR西日本では、神戸市須磨区鷹取工場跡地(十九ヘクタール)から基準値の最大七十三倍の鉛汚染、難波駅跡地(〇・五ヘクタール)から二十二倍の鉛汚染、JR貨物関西支社では神戸港跡地(九・三ヘクタール)から鉛とフッ素汚染、JR北海道では旭川運転所跡地(十二・五ヘクタール)から溶出量で三十五倍、含有量で九十三倍の鉛汚染が検出されている。
 旧国鉄清算事業団の売却(予定)地でも、仙台市長町駅貨車区・資材センター跡地から鉛、大阪市湊町駅跡地からフッ素と鉛、大阪市梅田駅北ヤード(二十四ヘクタール)で溶出量基準値に対し四・五倍の鉛、七・四倍の水銀、一・八倍の砒素が検出されている。
 鉛、水銀などは人体に極めて有害であることから、土壌汚染対策法では特定有害物質に指定し、化学工場などの跡地は所有者に土壌調査を義務付けているが、鉄道跡地は対象外であるとして、一部で汚染が明らかになって以後も調査されないまま売却されている。
 旧国鉄跡地の汚染原因は、関係者によると「鉛合金を使った部品の加工作業で出たかす」「昔の鉛塗料」などと指摘されている。このため、汚染された跡地は全国各地にあると推定される。
 跡地が転売され汚染原因者が不明確になる前に、早急にJR各社及び独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)に実態把握させ、汚染除去対策を採らせる必要がある。

一 JR各社が旧国鉄から承継した用地のうち、これまでに鉛等重金属汚染が判明した土地の所在地、面積、汚染が判明した時期と契機、土壌調査の実施者及び実施時期とその結果(特定有害物質名、含有量及び溶出量)、汚染原因、汚染除去対策の内容、売却(予定)時期、売却(予定)先はそれぞれどのようになっているか、示されたい。

二 旧国鉄清算事業団が旧国鉄から承継し、現在鉄道・運輸機構が所有している二百七十二ヘクタールの未売却地のうち、これまでに鉛等重金属汚染が判明した土地の所在地、面積、汚染が判明した時期と契機、土壌調査の実施者及び実施時期とその結果(特定有害物質名、含有量及び溶出量)、汚染原因、汚染除去対策の内容、売却(予定)時期、売却(予定)先はそれぞれどのようになっているか、示されたい。

三 JR各社、旧国鉄清算事業団が承継した用地のうち、重金属汚染の可能性がある土地の所在地、面積及び今後の調査予定はそれぞれどのようになっているか。

四 二〇〇三年八月までに湊町駅跡地、鷹取工場跡地、神戸港跡地などの旧国鉄跡地の土壌汚染が次々と明らかになっていたにもかかわらず、JR北海道は二〇〇三年十二月に旧停車場跡地二百平方メートルを未調査のまま苫小牧市に売却しており、今年十月に苫小牧市が基準値の二十三倍の鉛汚染を検出している。
 北海道内にはこの他にも旧国鉄跡地の汚染対象地域が十八か所あるとされているが、現在、JR北海道は調査する姿勢を示していない。
 汚染調査や汚染除去は第一義的には所有者が行うべきものであり、JR北海道に対し汚染対象地域の調査をさせるべきではないか。

五 土壌汚染対策法で汚染調査を所有者に義務付けていない土地の所有権移転が行われた場合、いつの時点の汚染かを特定することが非常に難しいことが土壌汚染対策法案審議の際、地方自治体関係者から指摘されている。このような場合、転売された後に汚染物質が検出されその時点での所有者が汚染除去しても、汚染原因者を特定できずに除去費用を求償できない懸念もある。旧国鉄跡地についても、将来的にそうした懸念があることから、JR各社及び鉄道・運輸機構に対し、現所有者として売却以前に土壌汚染調査を行うよう徹底すべきではないか。

六 JR各社や旧国鉄清算事業団の土地はもともとは国有地であり、重金属汚染も旧国鉄時代の作業で生じたり特定有害物質の使用履歴によるものと指摘されている。
 これら旧国鉄跡地からの土壌運び出しについても、汚染調査は義務付けられていないが、重金属汚染は健康被害を生ずる懸念がある。
 土壌の汚染調査・除去は所有者が行うべきものだが、JR各社や鉄道・運輸機構が行わない場合には、汚染原因が国鉄時代のものである経過からみて、国として実態を把握し、JR各社や鉄道・運輸機構に汚染除去等の必要な指示をすべきではないか。

  右質問する。