質問主意書

第161回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一六号

徳島県美馬郡脇町佐尾原地区の旧陸軍砲弾貯蔵所跡地における砲弾未処理問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年十二月一日

仁比 聡平   


       参議院議長 扇 千景 殿



   徳島県美馬郡脇町佐尾原地区の旧陸軍砲弾貯蔵所跡地における砲弾未処理問題に関する質問主意書

 徳島県美馬郡脇町の佐尾原地区は、昭和二十年五月ごろ旧陸軍四国軍管区の砲弾貯蔵所が建設された場所である。
 砲弾貯蔵所は、現脇町役場の北方にあたる県道脇大谷線の西側の段丘斜面に、二つの出入り口を設けた奥行き十メートル、奥横十七メートルの坑道をもつ凹形の壕を十数箇所建設したもので、現在壕跡地は第二壕から第八壕までが残されている。当時の建設には「穴掘りは旧制脇町中学生徒が主力で一般町民が奉仕した。」もので、「多量の砲弾が集積されていた」と、脇町誌(昭和三十六年一月十日・脇町誌編集委員会発行)に記録されている。なお、この町誌は当時の町議会で編集と出版が議決され、編集委員長は当時の町長である重本賢一氏が務め、その経費も町が拠出するなど、町の公文書的な町誌である。
 脇町はこれらの経過から、昭和三十三年に「保安区域の指定に関する条例」を策定した。この条例の第一条では「砲弾及びそのスクラップが埋没されていると認められる区域(以下『保安区域』という。)内における行為を規制することによって災害の発生を防止しもって公共の安全を図ることを目的とする。」とされており、町は当時から砲弾等の存在を認めつつ、同条例第三条により「何人も保安区域においては土地を穿掘してはならない。」と規制してきた。
 この旧日本陸軍の砲弾については、戦後「進駐軍」により、大半が焼却爆破処理したとされている。しかし、昭和三十二年三月二十九日に貯蔵所跡近くの民家が火災になり、不発弾が爆発、消火作業中の消防団員が負傷する事件が起きている。これをきっかけに陸上自衛隊による壕外の埋蔵調査が行われ、多数の未処理砲弾が存在していることが確認された。
 昭和三十五年三月に、自衛隊による地雷探知機を使った埋没砲弾の状態調査が行われ、横穴内部にも多量の不発弾のあることが確認されている。同年四月十二日から本格的な発掘が行われ、脇町誌によれば「延べ五百四十余人が四つの穴で三千立方メートルの土を取り除き、七トンの砲弾を掘り出した」。砲弾発掘の責任者をしていた陸上自衛隊中部方面隊武器課弾薬班長の藤本三佐は「あと残っているのは約十トン」とはっきり証言している。それ以降、壕内の砲弾は調査されず、放置されてきた。
 その後も、吉野川北岸用水や徳島自動車道の建設時、二年前の付近民家建設時など最近に至るまで未処理砲弾の発見が相次いでいる。特に数年前の徳島自動車道建設に際して発見されたときは、自衛隊員が大挙して処理に出動した。この徳島自動車道の下に第七壕跡が存在していた。
 旧陸軍砲弾貯蔵所跡前の居住者は、平成十五年十月ごろから雨のたびに、自宅横の砲弾貯蔵所跡をふさぐコンクリート壁の割目から赤さび状の液体が流出しているのを目撃し、「壕に砲弾が残っていて危険」と町や国に指摘している。
 こうした歴史や現状を踏まえるならば、壕内には砲弾が多量に存在していることは確実である。戦後五十九年もの間、不発弾の危険を日々感じながら生活を余儀なくされてきた住民の不安を解消するためにも、この未処理砲弾の処理が急務となっている。また、近い将来予測される南海地震や台風などの災害により、砲弾貯蔵所のあった段丘が崩壊し不発弾が露出するなど、何らかの影響で爆発することも考えられるだけに、この問題を放置することはできない。
 旧日本陸軍の砲弾処理は専ら国の責任に属するものである。ところが、現時点で、この旧陸軍砲弾処理問題を取り扱う国の窓口すら明らかにされていないことは重大な問題である。
 よって、以下のとおり質問する。

一、そもそもこの旧陸軍砲弾処理問題は、国が責任を持って処理すべき問題ではないか。どの中央省庁等が旧陸軍砲弾処理問題を所管し、国の窓口となって処理を促進するのか明らかにされたい。

二、未処理砲弾が直接発見された場合は、国の責任において処理することになるのか。その場合の連絡手続き等一連の処理方法はどのようになっているか。

三、未処理砲弾の処理に係る諸経費の負担はどうなっているか。国が責任をもって諸経費の全額を負担すべきではないのか。

四、未処理砲弾が存在しているかどうか不明な段階で水質・磁気探査調査などを行い、実際に存在することが明らかになった場合は、その調査費は「不発弾等処理交付金」の対象に含まれることになるのか。この費用についても全額国の負担とすべきと考えるがどうか。

五、昭和三十五年の自衛隊による発掘調査時に、十トンの砲弾を埋めたままにしたことが脇町誌で明らかにされている。信管が抜いてあっても不発弾の存在が確認されれば速やかに撤去処理する必要があると考えるがどうか。

六、現在、未処理砲弾や不発弾の調査は自治体任せになっていることから、脇町のように財政基盤の弱い地方自治体では、調査予算が組めず、結果的に放置されているケースが多いのではないか。そこで、国は不発弾が発見されてから行動するだけでなく、過去の目撃情報や不発弾存在情報などに基づき、国が費用も含めて全責任を持って調査・発掘・処理を推進すべきではないか。

七、第二次世界大戦末期、当時の政府は連合軍との本土決戦を想定し、脇町砲弾貯蔵所と同様の軍事施設を全国に建設し砲弾等の弾薬を貯蔵していたと考えられるが、脇町ではこの砲弾処理方法が焼却・埋設などという方法だったために、現在まで砲弾未処理問題が大きく問われることになっている。このように不発弾未処理問題は全国的な問題である。そこで、旧陸軍などの砲弾貯蔵所及びそれぞれの貯蔵不発弾量が全国のどこにどれだけ存在し、これまでに、どこでどれだけの不発弾処理がどのようになされたのか明らかにされたい。

  右質問する。