質問主意書

第160回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質一六〇第一五号
  平成十六年八月二十四日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員櫻井充君提出国立大学法人化後の問題点に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出国立大学法人化後の問題点に関する質問に対する答弁書

一について

 国立大学の法人化は、自律的な環境の下で国立大学をより活性化し、優れた教育や特色ある研究に積極的に取り組む個性豊かな魅力ある国立大学を育てることなどをねらいとするものであるところ、国立大学法人への運営費交付金においても、一定の経営改善努力を求めることは必要なことと考えている。もとより、その算定に当たっては、効率化係数を適用しつつも、「大学の教育研究機関としての本質が損なわれることのないよう、国立大学法人と独立行政法人の違いに十分留意すること」との国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)の国会審議における附帯決議等にのっとり、その対象から大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)等により必要とされる専任教員の給与費相当額を除外するなど、大学における教育研究の特性に配慮した仕組みとしているところである。
 また、各大学の教育研究上の努力に応じ運営費交付金を措置できる仕組みとして「特別教育研究経費」を設けたところであり、これにより、各大学の個性や特色をいかした教育研究上の意欲的な取組を予算面から支援することとしている。

二について

 国立大学が法人化し、国の施設等機関ではなくなることに伴い新たに必要となる賠償責任保険などの経費については、平成十六年度予算において、所要の措置を講じたところである。
 また、一についてで述べたとおり、国立大学法人への運営費交付金については、「特別教育研究経費」を設け、教育改革、大規模基礎研究の推進や新たな研究分野・領域への挑戦など、各大学の教育研究上の意欲的な取組を支援することとしており、今後とも、国立大学法人の業務が着実に実施されるとともに教育研究活動の活性化が図られるよう、所要の運営費交付金を措置していくこととしている。

三について

 国立大学法人評価委員会の評価は、国立大学法人法第三十五条において読み替えて準用する独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第三十四条第一項及び第二項の規定に基づき、中期目標の期間における中期目標の達成状況の調査及び分析をし、その結果を考慮して当該中期目標の期間における業務の実績の全体について総合的な評定をして行うものであり、国立大学法人に対して国が責任を持って予算を措置することを踏まえ、その国費が有効かつ適切に使用されたかどうかを国として検証する視点から行うものである。
 一方、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会は、政府全体の立場から、国立大学法人法第三十五条において読み替えて準用する独立行政法人通則法第三十四条第三項において、国立大学法人評価委員会の行った評価の結果について、必要があると認めるときに国立大学法人評価委員会に対して意見を述べることができることとされており、国立大学法人の評価を直接行うものではない。
 また、国立大学法人の教育研究の評価については、教育研究の特性に十分配慮しつつ、専門的な観点から評価を行う必要があることから、国立大学法人法第三十五条において読み替えて準用する独立行政法人通則法第三十四条第二項の規定に基づき、国立大学法人評価委員会から独立行政法人大学評価・学位授与機構にその評価の実施を要請し、その結果を尊重することとされている。
 より具体的な評価の在り方については、「国立大学の評価に当たっては、明確かつ透明性のある基準に従って行うとともに、基礎的な学問分野の継承発展にも十分配慮すること」との国立大学法人法の国会審議における附帯決議等にのっとり、国立大学法人評価委員会及び同機構において今後とも検討を行うこととしている。

四及び五について

 国立大学の法人化により、各国立大学法人の自主的な判断に基づき柔軟かつ機動的な組織編成や人員配置、多様な雇用・勤務形態の活用が可能となったことから、各国立大学法人自らが、超過勤務の縮減など教職員の負担軽減を図りつつ、教育研究活動を着実に実施することが重要であると考えている。もとより、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十七条第一項及び第三項に規定する割増賃金については、使用者である各国立大学法人において適切に支払うべきものである。

六について

 各国立大学法人の運営状況については、学長会議等の会議や日常的な情報交換等を通じ把握に努めているところであるが、今後とも、社団法人国立大学協会等と連携しながら、実態の把握を行うとともに、必要に応じ、適切な施策を推進してまいりたい。