質問主意書

第160回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質一六〇第一四号
  平成十六年八月十一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員櫻井充君提出タクシーの台数規制廃止による弊害に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出タクシーの台数規制廃止による弊害に関する質問に対する答弁書

一について

 平成十一年から平成十五年までの全国と各都道府県別のタクシーの総数、増加数及び増加率の実績は、別表のとおりである。なお、今後五年間についてのこれらの想定は算出していない。

二について

 各タクシー事業者が行うタクシーの台数の増減については、平成十四年二月に施行された道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律(平成十二年法律第八十六号。以下「改正道路運送法」という。)によりタクシー事業に係る需給調整規制が原則として廃止されたことから、各タクシー事業者の自主的な経営判断に基づいて決定されるべきものとなっている。
 なお、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第八条により、国土交通大臣は、特定の地域においてタクシー事業の供給輸送力が輸送需要量に対し著しく過剰となっている場合であって、当該供給輸送力が更に増加することにより、輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認めるときは、当該特定の地域を、期間を定めて緊急調整地域として指定し、当該地域におけるタクシーの台数の増加等について制限を行う措置(以下「緊急調整措置」という。)を発動することができることとなっている。

三について

 緊急調整措置については、国土交通大臣が、平成十四年九月一日から平成十五年八月三十一日までの期間、沖縄本島地域を指定し、平成十五年九月一日から平成十六年八月三十一日までの期間、同地域を再指定している。
 緊急調整措置の発動は、「緊急調整措置の発動要件等について」(平成十三年十月二十六日付け国自旅第百二号国土交通省自動車交通局長通達)において、実車率及び日車営収(一日一台当たりの平均営業収入をいう。)のいずれもが前年度よりも減少しており、かつ、直近五年間平均より十五パーセント以上減少したか、又は平成九年度から平成十二年度までの全国平均より二十パーセント以上減少している場合であって、法令違反及び利用者からの苦情の件数が前々年度よりも二年連続して増加している場合等に行うこととしている。

四について

 タクシー事業の運賃及び料金については、道路運送法第九条の三の規定に基づき、個別に国土交通大臣の認可を受けなければならないものとされている。当該認可に当たっては、事業者から提出された原価計算書等を厳正に精査し、同条第二項に定める基準に従って審査をしているところであり、御指摘のように「行き過ぎた値下げ競争」が生じているとは考えていない。
 また、政府としては、タクシー運転者の賃金、労働時間等の労働条件の向上を図ることは重要な課題であると認識しており、関係省庁において連携を図りつつ、引き続き、タクシー事業者に対する監査指導等を行ってまいりたい。

五について

 全国のタクシー乗り場の状況については、必ずしも十分に承知しているわけではないが、利用者が自由にタクシーを選択できることが基本と考えており、利用者が選択乗車することにより、タクシー乗り場において輸送の安全や利用者の利便が脅かされるような事態が生じる場合には、各乗り場の設置者等により地域の実情に応じた適切な措置が採られることを期待する。

六について

 二についてで述べたとおり、各タクシー事業者が行うタクシーの台数の増減については、改正道路運送法によりタクシー事業に係る需給調整規制が原則として廃止されたことから、各タクシー事業者の自主的な経営判断に基づいて決定されるべきものとなっているが、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成四年法律第七十号)の対象地域である場合においては、御指摘の告示に定める措置の中から個々の事業活動の規模、種類等の事情、事業活動を行う地域の環境の状況及び技術的可能性を踏まえて適切に選択した措置を講ずることにより、事業活動に伴う自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制を図ることとしているものである。

七について

 国土交通省が、関東、中部及び近畿の各地方運輸局の管轄地域の一般利用者を対象として、平成十五年度に行った「需給調整規制廃止後のタクシー運賃多様化等の効果検証調査」によれば、タクシーの規制緩和の評価として、運賃の多様化については、三地域とも「よかった」という評価が半数近くを占め、旅客サービスについては、三地域とも「悪くなった」は数パーセントにとどまる一方で「よくなった」は四分の一以上を占める等の結果となっている。

八について

 タクシー事業に係る需給調整規制の廃止等を内容とする改正道路運送法については、施行後まだ二年半を経過したところであり、現時点では、まだ明確な評価を行い得る段階にはないものと考える。
 一方で、その間、全国で二百四十八社の新規の事業許可申請が行われ、既存事業者においても八千三百八十両の増車が行われており、新規参入が進んできている。また、運賃面でも、外国人観光客等が安心して利用できることを企図した空港発着の定額運賃や、遠距離客の割安感を打ち出した大幅な遠距離割引等のほか、京都府における「きもの割引」、香川県における「うどん割引」等地域色豊かな運賃が導入されるなど、規制緩和による一定の成果が現れているものと考えている。
 他方、近年、都市部の繁華街や駅周辺で客待ちタクシーが行列をなし、アイドリングによる周辺環境の悪化や違法な駐停車による渋滞を引き起こしている例もあると承知しており、関係省庁において連携を図りつつ、引き続き、タクシー事業者に対する指導等を行ってまいりたい。

別表 タクシーの総数、増加数及び増加率の実績(1/3)

別表 タクシーの総数、増加数及び増加率の実績(2/3)

別表 タクシーの総数、増加数及び増加率の実績(3/3)