質問主意書

第160回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質一六〇第一一号
  平成十六年九月十日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員福島みずほ君提出財団法人日本原子力文化振興財団のプレスレリーズ「劣化ウラン弾による環境影響」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出財団法人日本原子力文化振興財団のプレスレリーズ「劣化ウラン弾による環境影響」に関する質問に対する答弁書

一、二、八、九、十二及び十三について

 財団法人日本原子力文化振興財団(以下「財団」という。)から聴取したところ、御指摘のプレスレリーズ(以下「本文書」という。)は、国際原子力機関や国際連合環境計画の報告等を参考としつつ、放射性物質である劣化ウランの放射線影響及び化学的毒性に関する基礎情報を報道関係者に提供する目的で作成された文書であるとのことである。財団がこのような目的から本文書を作成し、配布することは、財団の寄附行為に定められた目的の範囲内にあるものと認められ、また、政府としては、本文書の具体的内容の適否に関し、見解を述べる立場にない。

三の1について

 財団の平成十六年度事業計画書及び財団からの聴取結果によれば、財団が国の委託事業として行っている活動以外の活動に関する各活動項目、その概要及び平成十六年度の予算額は、別表のとおりである。
 また、財団からの聴取結果によれば、財団は、平成十六年度において、国の委託により、「草の根広報・教育支援事業」、「全国広報事業」、「核燃料サイクル広報事業」等の事業を実施することとしており、これらの事業に係る収入として、十億八千万円を見込んでいるとのことである。

三の2について

 財団からは、財団のプレスレリーズは、報道関係者に対し、原子力に関係する最新の話題について的確な情報を迅速に提供することを目的に発行されているものであると聞いている。また、昭和四十四年度から発行が開始され、不定期に発行されてきたが、最近十年間ではおおむね年間一回程度発行されており、主として、社団法人日本新聞協会加盟の新聞社、放送関係者のうち希望者及び財団の賛助会員に対して配布されていると聞いている。

三の3について

 財団がこれまで発行しているプレスレリーズは、財団の責任において発行されているものと承知している。財団からは、プレスレリーズの執筆及び編集は、財団の企画部において行われ、必要に応じ、外部の有識者に対し、主として技術的事項に係る記述の妥当性について、検討を依頼していると聞いている。

三の4について

 財団からは、本文書が作成されたのは、劣化ウラン弾の放射能影響について国民の関心が高まる中、財団として、劣化ウランに関係する基礎情報を報道関係者に提供する必要があると判断したためであり、財団が平成十六年二月三日に「第三十五回報道関係者のための原子力講座」として開催した「劣化ウランと放射線」を主題とする講演会の内容並びに国際原子力機関及び国際連合環境計画が作成した報告書等を参考に、財団の企画部において執筆及び編集を行ったと聞いている。また、財団からは、本文書は、財団の企画部が発案し、常勤の理事の指揮の下、理事長の了承を得て作成されたものであると聞いている。

四について

 文部科学省は、米国による劣化ウラン弾の使用に対する見解を述べる立場にない。

五について

 本文書は、劣化ウランの取扱いに関し、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)の規定に違反するか否かについて言及するものではないと承知しており、「本プレスレリーズの解釈は、この法律の定めと明らかに対立する」との御指摘は当たらないと考える。また、お尋ねのような外国における劣化ウランの環境中への放出につき、その安全性をいかに評価し、また規制するかについて、政府として答える立場にない。

六の1及び3について

 政府として、これまでのところ、劣化ウラン弾の影響により健康への被害が増大した事実を確認する情報を有していない。
 また、劣化ウラン弾の影響による健康への被害については、国際機関等による調査が行われているが、これまでのところ国際的に確定的な結論が出されているとは承知していない。
 関係する国際機関等は、劣化ウラン弾の影響に関して更なる調査を検討していると承知しており、政府としては、このような動向を注視していく考えである。

六の2について

 劣化ウラン弾の影響による健康への被害について、知識と経験を有する国際機関等が調査を行うのが適当であり、独自に調査を行うことは考えていない。

七について

 イラク復興支援群の自衛隊員には、万が一に備え、①放射線検知器類を携行させること、②通常と異なる放射線レベルを検知した場合には当該地域には立ち入らない等の対応をとること、③砂嵐が発生した場合には、防塵マスクを着用すること等としており、仮に劣化ウランが活動地域に存在したとしても、自然界の放射線量を大きく超える放射線を浴びたり、劣化ウランの粉塵を大量に吸い込むような事態が起きることは考えにくいと認識している。
 したがって、現時点では、イラク復興支援群の自衛隊員が、帰国後に受ける健康診断としては、海外派遣後等の際に受ける一般的な検査項目で問題ないと考えており、尿中の劣化ウラン検査などを行うことは考えていない。いずれにせよ、今後とも、自衛隊員の健康については万全を期してまいりたい。

十について

 土壌中に劣化ウランが存在している場合、土壌及び大気の有するアルファ線に対する遮蔽効果のため、地表から一メートル離れた所で当該劣化ウランからのアルファ線を検出することは極めて困難であると承知しており、地表から一メートル離れた所でアルファ線の検出により当該劣化ウランの存在を確認できる方法は承知していない。他方、土壌中の劣化ウランから放出されるベータ線又はガンマ線を地表から一メートル離れた所で検出するために必要な劣化ウランの数量については、お尋ねの劣化ウラン塊の土壌中の深度、形状その他の試算上必要な条件が明らかでないため、お示しできない。

十一について

 原子炉等規制法等において、アルファ核種による汚染が考えられる場合における放射能の測定方法は定められていないが、人の触れるおそれのある物であって、アルファ核種により汚染されたものについて、表面の放射性物質の密度の上限として表面密度限度が規定されており、原子力施設の管理区域において、その遵守が義務付けられている。
 したがって、我が国の原子力施設においては、お尋ねの場合、「地上一メートルからのベータ・ガンマ線の測定」のみをもって安全性を確認すべきものとはされていない。

十四について

 本文書に関連して、財団に対し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第六十七条及び第七十一条の規定に基づいて処分等を行うことは考えていない。

別表