質問主意書

第160回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一六〇第二号
  平成十六年八月十日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員小川敏夫君提出平成一六年年金改正法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川敏夫君提出平成一六年年金改正法に関する質問に対する答弁書

一について

 国民年金法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百四号。以下「改正法」という。)附則第二条第一項においては、国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)による年金たる給付及び厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)による年金たる保険給付について、同条第一項第一号に掲げる額と同項第二号に掲げる額とを合算して得た額の同項第三号に掲げる額に対する比率が百分の五十を上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保するものとしているが、これは、老後の生活の基礎的な部分を支える公的年金の役割及び総務省の「平成十三年家計調査年報」における現役世代の平均的な可処分所得に対する無職の高齢夫婦世帯の平均的な消費支出の割合が約百分の五十となっていることを踏まえて規定したものである。
 また、年金の給付水準は、代表的な世帯類型の水準を用いて規定すべきところ、改正法附則第二条第一項においては、平成十四年における男子の老齢厚生年金の受給者のうち、その妻が老齢厚生年金の受給権を有しない者の割合が百分の五十を超えていること、女性の就労形態が多様であり共働きの世帯について標準的な類型を設定することが困難であること、政府では従来から夫のみ就業してきた世帯に係る年金の給付水準に着目してきたこと等から、現在の我が国における年金受給者の世帯類型のうち、夫が平均的な収入で四十年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯について規定したものである。

二について

 改正法第七条の規定による改正後の厚生年金保険法第八十一条第四項に規定する厚生年金保険の保険料率及び改正法第二条の規定による改正後の国民年金法第八十七条第三項に規定する国民年金の保険料の額は、将来の現役世代や企業負担が過大なものとならないように配慮しつつ、現時点における今後の経済社会の変化の見通しの下で適切な給付水準を確保していくために必要な水準として規定されたものである。

三及び四について

 改正法附則第二条第二項においては、少なくとも五年ごとに行う国民年金事業及び厚生年金保険事業の財政の現況及び見通しの作成に当たり、次の財政の現況及び見通しが作成されるまでの間に同条第一項に規定する比率が百分の五十を下回ることが見込まれる場合には、同項の規定の趣旨にのっとり、調整期間の終了について検討を行い、その終了等の措置を講ずるものとすると規定しており、この同条第二項に規定する措置により当該比率について百分の五十を上回る水準を維持しつつ同条第三項の規定により給付及び費用負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずることとなる。
 当該所要の措置は、同条第一項の規定の趣旨を踏まえつつ、その時点における経済社会の動向を総合的に勘案した上で講ずるものであり、現時点でその内容を特定しているものではない。

五について

 国民年金制度は、自営業者や農業従事者等の多種多様な就業形態の者を対象としていることから、制度創設時において、一般的に就労していると考えられた年齢により一律に区分することとし、二十歳以上六十歳未満の者を被保険者としたものである。
 他方、厚生年金保険制度においては、基礎年金制度の導入と併せて老齢厚生年金が老齢基礎年金の上乗せ給付として位置付けられたことを踏まえ、老齢基礎年金が給付される六十五歳以上の者は被保険者としないこととされていたが、少子高齢化の進展等の社会経済状況の変化により若年世代の保険料負担が上昇する中で、就労し、賃金を得ている高齢者については、現役世代として保険料を負担し、年金制度を支える側に立つという観点から、平成十四年四月以降、適用事業所に使用される七十歳未満の者を厚生年金保険の被保険者とすることとしたものである。

六について

 内閣官房長官が主宰する社会保障の在り方に関する懇談会(以下「懇談会」という。)は、三党合意(平成十六年五月六日付け自由民主党幹事長、民主党幹事長及び公明党幹事長による年金制度改革に関する合意をいう。)、改正法附則第三条第一項等を踏まえ、年金制度の一元化を含む社会保障制度全般について、制度横断的な観点から、基本的考え方や税、保険料等の負担と給付の在り方などに関して議論する場と考えており、今後の検討スケジュール及び取りまとめの時期については、当面、懇談会を一か月に一回程度開催し、大きな論点に関し意見を聴いた上で検討してまいりたい。
 一方、介護保険制度については、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)附則第二条において、「この法律の施行後五年を目途としてその全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきもの」とされており、また、医療保険制度については、平成十五年三月二十八日に閣議決定した「健康保険法等の一部を改正する法律附則第二条第二項の規定に基づく基本方針」において、「この基本方針に基づく医療保険制度体系に関する改革については、平成二十年度に向けて実現を目指す」こととし、「法律改正を伴うものについては、概ね二年後を目途に順次制度改正に着手する」こととしている。したがって、これらの法律の規定や閣議決定に従い、介護保険制度については平成十七年、医療保険制度については遅くとも平成十八年の通常国会に関係法律案を提出する方向で、検討を進めてまいりたい。