質問主意書

第159回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九号

内閣参質一五九第二九号
  平成十六年六月二十九日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員畑野君枝君外四名提出国際連合女性差別撤廃条約選択議定書の批准等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員畑野君枝君外四名提出国際連合女性差別撤廃条約選択議定書の批准等に関する質問に対する答弁書

一について

 いわゆる個人通報制度とは、人権に関する条約に定める権利の侵害を個人等が条約に基づき設置された委員会に通報し、この通報を委員会が審議の上、委員会としての見解を締約国等に通知する制度である。例えば、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)の選択議定書や、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(昭和六十年条約第七号。以下「女子差別撤廃条約」という。)の選択議定書は、この個人通報制度について規定している。
 個人通報制度については、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えられるが、司法権の独立を含め、我が国の司法制度との関連で問題が生じるおそれがあり慎重に検討すべきであるとの指摘もあることから、平成十一年十二月以降、外務省の主催により、外務省及び法務省の関係部局が参加し、お尋ねの個人通報制度に関する研究会において、個別具体的な事案等も見つつ、個人通報制度が我が国にも適用された場合の影響等について検討を進めているところである。このように現在検討を行っているところであるので、検討内容の詳細や検討の終了時期について明らかにできる段階にはない。
 個人通報制度について定める女子差別撤廃条約の選択議定書の締結については、その締結の是非につき真剣かつ慎重に検討しているところであり、同選択議定書の締結見込みについて申し上げることはできない。

二及び七について

 女子差別撤廃条約第十七条1に基づいて設置された女子に対する差別の撤廃に関する委員会(以下「委員会」という。)は、女子差別撤廃条約の実施状況につき締約国から提出された報告を検討することとしている。我が国が提出した第四回及び第五回報告に対する検討を踏まえ、委員会が平成十五年七月八日に採択した最終コメントという文書に、お尋ねのような趣旨の記述があることは事実である。最終コメントは法的拘束力を有するものではないが、その内容等を十分に検討した上、適切に対処していく必要があると考えている。
 女子差別撤廃条約の選択議定書が定める個人通報制度については、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えられるが、司法権の独立を含め、我が国の司法制度との関連で問題が生じるおそれがあり慎重に検討すべきであるとの指摘もあることから、我が国は現在のところ同選択議定書を締結していない。その締結の是非については、一についてで述べたとおり、個人通報制度に関する研究会等において真剣かつ慎重に検討しているところである。

三について

 委員会が採択する最終コメントは、「序論」、「肯定的側面」及び「主要関心事項及び勧告」の三つに大きく分けられているが、その「主要関心事項及び勧告」を含む最終コメントについて、次のように周知及び広報を行った。
 平成七年に委員会が採択した最終コメントについては、その英語の原文とともに、日本語仮訳を作成の上、外務省ホームページに掲載したほか、最終コメントの原文及び日本語仮訳を関係府省に配布し、各府省の講ずる施策や取組の参考とするよう周知した。また、総理府編「女性の現状と施策」や総理府の広報誌で委員会の審議の概要を紹介すること等により、広く国民への周知及び広報に努めた。
 平成十五年に委員会が採択した最終コメントについては、その英語の原文とともに、日本語仮訳を作成の上、内閣府男女共同参画局ホームページ及び外務省ホームページに掲載したほか、最終コメントの原文及び日本語仮訳を関係府省に配布し、各府省の講ずる施策や取組の参考とするよう周知した。また、男女共同参画推進連携会議の会合や内閣府の広報誌で委員会の審議の概要を紹介すること等により、広く国民への周知及び広報に努めた。さらに、平成十五年九月の男女共同参画会議において、最終コメントの内容について報告を行う等、周知に努めた。

四について

 これまで出された二十五の一般勧告については、すべて日本語仮訳を作成の上、関係府省に配布し、各府省の講ずる施策や取組の参考とするよう周知した。今後は内閣府男女共同参画局ホームページに掲載する等、国民への周知及び広報に努めたい。
 女子差別撤廃条約の周知及び広報のための具体的手段は、例えば条約の日本語仮訳の関係府省への配布、ホームページへの掲載等であり、その経費に係る予算額及び決算額を他の経費に係る予算額及び決算額と区分して明らかにすることは困難である。

五について

 お尋ねの国際会議については、平成七年に北京で開催された第四回世界女性会議に法務省職員が参加している。国際会議に我が国政府としていかなる構成で代表団を派遣するかについては、その時々の個別の事情に応じて政府内で調整を図っているところである。
 なお、法務省の意見は、政府としての見解に反映されている。

六について

 お尋ねの「「国際規範・基準の国内への取り入れ・浸透について」(案)」は、男女共同参画会議苦情処理・監視専門調査会が、男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)に基づき、女子差別撤廃条約の積極的遵守や、男女共同参画にかかわりの深い未締結条約に関する検討等の状況について調査検討を行い、その調査検討結果を取りまとめているものである。同専門調査会は、書面調査、関係府省及び有識者からの説明聴取等により取りまとめを行い、意見の募集を行ったところであり、更に議論が行われているところである。なお、お尋ねの委員会の意見及び勧告が法的拘束力を持たないことに関する記述については、女子差別撤廃条約の選択議定書は、締約国が委員会の意見及び勧告に妥当な考慮を払うことを義務付けるにとどまっており、意見及び勧告それ自体を履行することを義務付けていないことを踏まえたものであると考えられる。また、お尋ねの関係者の意見を平等に聴いた上で結論を出すという仕組みが確立していないことに関する記述については、そのような指摘がある旨を述べたものであり、同専門調査会としての評価を述べたものではない。