質問主意書

第159回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質一五九第一四号
  平成十六年五月七日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員畑野君枝君提出最低賃金額の引上げと最低賃金審議会委員の公正な任命等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員畑野君枝君提出最低賃金額の引上げと最低賃金審議会委員の公正な任命等に関する質問に対する答弁書

一について

 最低賃金制度は、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の規定に基づき、使用者に対し最低賃金額以上の賃金の支払を罰則をもって強制するものであり、最低賃金は労働者の生計費や類似の労働者の賃金に加え通常の事業の賃金支払能力を考慮して定めることとされている。一方、生活保護制度は、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)の規定に基づき、要保護者の最低限度の生活に必要な需要について、所得、資産等を活用してもなお補うことのできない不足分に限って公費によって保護するものである。このように両制度はその性格等を異にしており、最低賃金と生活保護の水準を単純に比較することは適切ではなく、また、仮にかかる比較を行うとしても、生活保護の給付額は、要保護者の住宅費の実費等の要素を勘案して決定されるため、どのような具体例を想定して比較を行うかを決定することが困難であるという問題があると考えている。
 他方、右に述べたとおり、最低賃金を定めるに当たっては、労働者の生計費も考慮すべき一要素とされているところであり、現在、中央最低賃金審議会において進めている地方における最低賃金決定の際の参考となる目安の在り方の検討の中で、最低賃金の水準について、生活保護の水準との関係も含め幅広く検討しているところである。

二から四までについて

 最低賃金審議会の労働者を代表する委員については、最低賃金法第二十九条及び最低賃金審議会令(昭和三十四年政令第百六十三号)第三条の規定に基づき、中央最低賃金審議会については厚生労働大臣が、地方最低賃金審議会については都道府県労働局長が、関係労働組合の推薦を受けた者の中から、いわゆるパートタイム労働者や中小企業の労働者を含む労働者一般の利益を代表するに最もふさわしいものを任命しているところであり、これまでの委員の選任について特段問題があるとは考えていない。
 また、最低賃金審議会の委員に占める女性委員の割合については、中央最低賃金審議会においては三十パーセントを超えているものの、地方最低賃金審議会においては全般に低くなっており、その理由としては関係労働組合及び関係使用者団体が推薦する委員の候補者について女性の占める割合が低いことなどが挙げられるものと考えているが、今後、「男女共同参画基本計画」(平成十二年十二月十二日閣議決定)で定められた平成十七年度末までのできるだけ早い時期に女性委員の割合について三十パーセントを達成するという政府の目標の実現に向けて、女性委員の積極的な登用に努めてまいりたい。
 地方労働委員会の委員については、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第十九条の十二第三項の規定に基づき都道府県知事が任命することとされており、その任命については、お尋ねのパートの代表としての女性の委員の数を含め都道府県知事において判断されるべき問題であると考えている。

五について

 最低賃金審議会の委員の選任について、いかなる者が行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四条第一項の規定に基づく不服申立てをする法律上の利益を有するのかは、個別の事例に即して判断すべき問題であり、一概にお答えすることは困難であるが、最低賃金審議会令第三条第一項において厚生労働大臣又は都道府県労働局長が労働者を代表する委員を任命するときに関係労働組合に対し候補者の推薦を求めなければならないこととしているのは、任命権者の恣意的な権限の行使を防止することなどによって労働者一般の利益という公益を保護するためであって、特定の候補者が委員に任命されることについて当該候補者や当該候補者を推薦した労働組合の利益を保障するものではなく、一般に、かかる候補者や労働組合が委員の選任について法律上の利益を有するとは言えないと考えている。