質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第三五号

鉛弾の全面禁止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年六月十五日

谷 博之   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   鉛弾の全面禁止に関する質問主意書

 一九八九年、北海道美唄市宮島沼において、ハクチョウ類多数が鉛中毒によって死亡する事件があった。調査の結果、それは狩猟に使われた鉛散弾が原因であることが判明した。その後、本州各地でも水鳥が鉛散弾を誤飲したことによる中毒死が確認されている。さらに一九九六年には、北海道東部において、鉛ライフル弾による銃撃後にそのまま放置されたエゾシカを食べたオオワシ等野生鳥類の鉛中毒死が明らかになった。
 この一五年間、野生鳥類の鉛中毒及び鉛による環境汚染に対する社会的関心の高まりに伴い、政府は、鳥類保護及び環境汚染防止の観点から様々な施策を講じてきた。しかし、現在でもなお、鉛散弾及び鉛ライフル弾等による野生鳥類の鉛中毒発生が度々報告されていることは誠に遺憾であり、施策が不十分であることを示している。さらに近年では、発射時の轟音を気にする必要がなく、高齢者でも気軽に楽しめる空気銃による狩猟が静かなブームとなっているが、その銃弾の多くは鉛弾であると聞いている。
 欧米諸国では九〇年代から鉛散弾の使用を禁じる国が増えている一方、米軍は備蓄している鉛入りライフル弾を二〇〇八年までに全部分解して鉛を取り出し、別の金属に詰め替える予定とされている。
 政府は鳥類の鉛中毒発生防止のため、狩猟における鉛製弾丸の使用を全面的に禁止するための具体的な施策の実行を急ぐべきである。このような立場から、以下のとおり質問する。

一、一九八九年以降今日まで、鳥類の鉛中毒を防止するために政府は、いつ、どのような施策を採ってきたか。年度ごとに、時系列で、制定又は改正した関連法令(法律・政令・府省令のすべてを含む。)及び発出した通達類(通達・通知・助言等その表題は問わない。)の件名とそれぞれの概要を示すとともに、毎年度どれだけの経費を使用したか具体的に示されたい。

二、全国の都道府県及び北海道内の市町村において、一九八九年以降今日まで、鳥類の鉛中毒を防止するために、いつ、どのような施策が講じられてきたか。地方自治体ごとに、一に準じて、内容を示されたい。

三、二〇〇四年五月二五日の参議院環境委員会における小池環境大臣の答弁で明らかなように、狩猟における鉛製弾丸の使用はすべて禁止することが政府の方針であると承知している。今後政府はどのようなスケジュールでこの方針を実行するつもりなのか。散弾、ライフル弾及び空気銃弾それぞれについて、いつ、だれが、どのような法令改正を行うのか、あるいはどれだけの予算を投じて行うつもりか、実行する施策を具体的に示されたい。

四、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の規定による「特定鳥獣保護管理計画」に従った鳥獣の捕獲においても、野生鳥類の鉛中毒発生防止及び環境汚染防止の観点から、鉛弾使用を禁止すべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。

五、銃砲刀剣類所持等取締法に基づく指定射撃場は全国に何か所あるか。

六、すべての指定射撃場について、指定の別、射撃場名、管理者、指定者、所在地及び規模を示す情報(面積、年間の利用者数及び発射数)を所在する都道府県ごとに分類して示されたい。

七、自衛隊、海上保安庁及び警察は、銃砲刀剣類所持等取締法による指定を受けていない射撃場及び演習場をそれぞれ何か所持っているのか。また、それらについて、六と同様に射撃場・演習場名、管理者、所在地及び規模を示す情報を所在する都道府県ごとに分類して示されたい。

八、自衛隊、海上保安庁及び警察がそれぞれ年間に使用する鉛を含む銃弾の量を、二〇〇三年度以前の過去五年度分示されたい。

九、自衛隊、海上保安庁がそれぞれ年間に使用する鉛を含む砲弾の量を、二〇〇三年度以前の過去五年度分示されたい。

十、六及び七で示した以外に、例えば銃器製造工場施設内など、指定を受けない射撃場・試射場が我が国に存在するか。存在するならば、その数と名称及び施設の管理者について、所在する都道府県ごとに示されたい。

十一、福岡県、千葉県、埼玉県、静岡県などの県営射撃場における鉛汚染が発覚したことを受けて、環境省は調査を行い、少なくとも七か所の射撃場で鉛汚染の発生が分かったと聞いているが、それは事実か。事実とすれば、調査の時期、対象、内容及び結果について明らかにされたい。

十二、十一で調査対象となっていない七及び十で示したものを含む射撃場・演習場、試射場等において、鉛汚染の状況について具体的に示されたい。

十三、これまでに射撃場等での鉛汚染の状況の調査を行っていないとすれば、政府は指定射撃場及び自衛隊、海上保安庁、警察その他のすべての国内にある射撃場・演習場・試射場等の鉛を含む銃弾・砲弾が使用されている場所の鉛汚染状況を早急に調査すべきではないか。

十四、静岡県及び千葉県は、それぞれ二〇億円を超える多額の県費を投じて県営射撃場の鉛汚染除去・浄化作業を行っている。それ以外の都道府県営射撃場では、土壌の交換などどのような施策がどれだけの費用を掛けて行われているか。また、今後の汚染防止のためにどのような施策が予定されているか。

十五、射撃場では、クレー射撃などの競技会が開催されるだけでなく、狩猟者の技術向上等のための射撃も行われている。したがって、射撃場及びその周辺地域の鉛汚染を防止するためには、クレー射撃の競技会に限らず、射撃場における鉛弾の使用を全面的に禁止すべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。

十六、射撃場における鉛汚染除去・浄化費用は、福岡県営射撃場の場合と同様に、射撃場の利用者もその一部を負担すべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。

十七、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第五八条第三号及び同法律施行規則第六七条第一号の規定に基づく共済事業について、その概要及び二〇〇三年度以前の過去五年度分の収支と毎年の積立額が分かる損益計算書、貸借対照表等を示されたい。

十八、十七で示した共済事業の剰余金の一部は、射撃場の浄化などの鉛汚染除去、あるいは鉛弾の代替促進などの取組み費用に充てられるべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。

十九、散弾、ライフル弾、空気銃弾及びけん銃弾について、種類ごとに鉛を含むものと含まないものそれぞれ二〇〇三年度以前の過去五年度分の輸出入量、主な輸出入先、製造量及び製造場所(都道府県名)を示されたい。また、鉛を含む砲弾についても同様に示されたい。

  右質問する。