質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第三四号

風力発電の鳥類に与える影響(バードストライク)の防止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年六月十四日

岩佐 恵美   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   風力発電の鳥類に与える影響(バードストライク)の防止に関する質問主意書

 風力発電システムは地球温暖化防止に資する技術の一つと位置付けられ、二〇〇三年四月には電力発電事業者に再生可能エネルギーの購入を義務付ける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)が施行されるなど、その導入促進が図られている。
 風力発電の設備導入量は二〇〇四年三月末時点で約六八万キロワットと対前年度比約五〇%増の伸びで、四一都道府県に七三五基設置されているが、資源エネルギー庁は二〇一〇年までに三〇〇万キロワットにすることを目標としている。
 一方、風力発電施設が増え、また風車が大型化するに従い、鳥類に与える影響とりわけ衝突による死傷(バードストライク)の多発が大きな問題となってきている。
 わが国は、日ロ、日米、日中、日豪の渡り鳥条約を締結する当事国であり、年間約二〇〇万羽以上の渡り鳥が通過する国として、風力発電施設による鳥類、とりわけ渡り鳥や稀少猛禽類への影響は看過できない。
 よって、以下質問する。

一、わが国に設置されている風力発電施設(建設中のものを含む。)について、施設名、設置場所、設置者、最大出力及び基数を明らかにされたい。

二、わが国の風力発電施設による鳥類への影響及びその中でも特に衝突による死傷(バードストライク)の現状をどう把握しているか。また、その実態把握のための現在の方策を明らかにされたい。

三、資源エネルギー庁が掲げる二〇一〇年度三〇〇万キロワットという風力発電設備導入量の目標に向け、バードストライクの防止のためにどのような対策を採るのか。

四、環境省(旧環境庁)の「風力発電導入マニュアル」(一九九七年三月)では、「鳥類への影響」の項目で「渡りの経路については代表的な種について明らかにされているものの、ほとんど明らかになっていないのが現状である。したがって、渡り鳥の種類や経路については現地におけるヒアリング調査等によって明らかにする必要がある」としている。これら調査の進捗状況と今後の取りまとめの目途を示されたい。
 また、渡り鳥の主要な経路を解明し、主要な渡りの経路は風力発電の設置場所を避けるなどの対策を採るべきではないか。

五、移動性野生動物の種の保全に関する条約(ボン条約)第七回締約国会議(二〇〇二年)における風力発電施設の建設に関する決議は、風力を「二酸化炭素排出量の大幅削減につながる自然エネルギー」と位置付けつつ、「餌資源と生息環境だけでなく、渡り鳥や回遊性哺乳類自身にも予測のつかない影響を与える恐れがある」と指摘している。
 また、「海上の渡りや飛行の経路に建設された風力発電施設は、鳥の衝突事故の危険性を高めている。特に、夜間や霧の発生時に、回転翼が最大の脅威となる」「衝突は死を意味するであろう。衝突を避けるために、渡りの経路を変えると、採食地、休息地、繁殖地を失うことになるかもしれない」とし、加盟国に対し「風力発電施設の建設が移動性野生生物に甚大な影響を与える地域を特定することが強く求められている。建設予定地の選定や建設の許認可前に、綿密な環境影響評価を行うことが望ましい」としている。
 わが国においても風力発電が増え続けている今日、条約加盟以前であっても、綿密な環境影響評価を行うべきではないか。

六、福島県会津布引高原に電源開発株式会社が最大級の風力発電施設(最大六万キロワット、四六基)の事業申請を行っている。福島県は全国で唯一、条例で風力発電の環境アセスメントを定めており、同社は環境影響評価準備書、渡り鳥調査報告書等を提出しているが、日本野鳥の会南会津支部は同社の報告書について、渡り鳥の影響調査が十分ではないと指摘しており、日本野鳥の会も今年四月に柳生博会長名で「春の渡りの時期にも調査を行うこと」「猛禽類の渡りの調査を行うこと」などの要望書を同社に提出した。
 また、準備書では県の準絶滅危惧種のノスリの巣は「ない」とされていたが、今年四月に日本野鳥の会南会津支部によって巣が発見され、それを同社に教えた直後に何者かによって巣が落とされる事態となった。
 同事業の現地調査で確認された鳥類九六種のうち、四か国との渡り鳥条約該当種は七二種に上ることから、渡り鳥への影響調査が不十分なまま、電源開発株式会社への補助金交付を行うべきではないと考えるが、どうか。

  右質問する。