質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第三三号

沖縄のジュゴンの保護に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年六月十四日

岩佐 恵美   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   沖縄のジュゴンの保護に関する質問主意書

 沖縄周辺に生息するジュゴンは、世界北限のジュゴンとして国際的にも注目されているが、個体数が減少して危機的なレベルにある。ジュゴンは、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下「種の保存法」という。)の制定の際、当時の環境庁と農林水産省の覚書によって、法の指定対象から除外された。その後、二〇〇一年三月二三日の参議院予算委員会で、私の質疑に対し、当時の谷津農林水産大臣が「覚書からジュゴンを外してもよい」と答弁し、ジュゴンを種の保存法の対象にする道が開かれた。その後、「ジュゴンと藻場の広域的調査」を三年がかりで行ったが、ジュゴンはいまだに種の保存法の希少野生動植物種に指定されていない。このままでは、ジュゴンを覚書から外した趣旨がいかされず、ジュゴンの絶滅のおそれが一層深刻になることが危惧される。
 よって、以下質問する。

一、ジュゴンを覚書から外したのは、ジュゴンを種の保存法の対象にするためではなかったのか。また、ジュゴンと藻場の広域的な調査は、ジュゴンを種の保存法の希少野生動植物種として、絶滅を防ぐ保護方策のための資料を得る目的で行ったのではないか。

二、閣議で決定された希少野生動植物種保存基本方針(以下「基本方針」という。)は、「国内希少野生動植物種については、その本邦における生息・生育状況が、人為の影響により存続に支障を来す事情が生じていると判断される種で、以下のいずれかに該当するものを選定する。」として、「その存続に支障を来す程度に個体数が著しく少ないか、又は著しく減少しつつあり、その存続に支障を来す事情がある種」「分布域が限定されており、かつ、生息地等の生息・生育環境の悪化により、その存続に支障を来す事情がある種」を掲げている。
 広域的調査の結果、ジュゴンの生息数は極めて限られていることが確認された。ジュゴンは、種の保存法の国内希少野生動植物種に選定する要件に該当するのではないか。あるいは、広域的調査で、この要件に該当しないと判断される事実が判明したのか。

三、政府は、近く、種の保存法の国内希少野生動植物種を拡大する予定と伝えられているが、ジュゴンはその候補に入れられていない。政府は、沖縄のジュゴンについて、絶滅のおそれはないと判断しているのか。もしそうだとすれば、その根拠は何か。

四、基本方針は、「今日、野生動植物の種を圧迫している主な要因は、(中略)人間の生活域の拡大等による生息地若しくは生育地の消滅又は生息・生育環境の悪化等であり、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図るためには、まず、これらの状況を改善することが必要である。」と述べている。
 二〇〇三年度の広域的調査の中間報告では、名護市東海岸における米軍の軍事演習や戦闘機の騒音がジュゴンに与える影響は大きいと指摘している。また、ジュゴンが魚網に混獲される危険は依然としてなくなっていない。
 米軍の演習等によるジュゴンの生息環境の悪化や魚網による混獲などの状況を改善するために、どのような措置を講じたのか。あるいは今後どのような措置を講ずる方針か。

五、基本方針は、「種を絶滅の危機から救うためには、圧迫要因を除去又は軽減するだけでなく、生物学的知見に基づき、その個体の生息又は生育に適した条件を積極的に整備し、個体数の維持・回復を図ることも必要となる。」としている。
 沖縄のジュゴンについて、生息条件の積極的な整備、個体数の維持・回復のために、どのような措置を講じているか。あるいは、今後どのような措置を講ずる方針か。

六、基本方針は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存施策は、生物学的知見に立脚しつつ、時期を失うことなく適切に実施される必要がある。」と明記している。今日まで個体数を減少させてきたジュゴンは、このまま保護の時期を失すれば、絶滅のおそれはますます大きくなることが強く危惧される。一刻も早く、適切な保全策を採ることが必要であり、早急にジュゴンを種の保存法の国内希少野生動植物種に選定すべきではないか。

  右質問する。