質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第三二号

地方公務員の給与制度の在り方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年六月十四日

浅尾 慶一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   地方公務員の給与制度の在り方に関する質問主意書

 政府は、いわゆる「聖域なき構造改革」を実際にはいくつかの聖域を残したままで進めている。その結果、国民には痛みばかり押し付け、将来への展望は開けないという、構造改革本来の趣旨とは明らかに違った方向へと進みつつある。
 政府の「構造改革」の聖域となっている代表的な例が公務員制度である。公務員制度には、国民の目には触れにくい形で様々な民間との不均衡が存在する。公務員に労働基本権を付与した上で、これら公務員制度に隠された「歪み」を正し、民間部門との公平性を確保してこそ初めて真の構造改革が実現し、また、憲法第一五条第二項にいう「全体の奉仕者」との趣旨が達成されるものと考える。
 このような観点から、標記について以下質問する。

一、地方公務員の給与については、先般閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇四」(以下「基本方針二〇〇四」という。)においても「地方公務員の給与等について、その適正化を強力に推進する」とされているが、民間給与との格差の実態については明らかにされてはいない。
 この点に関しては、政府は毎年、地方公務員給与実態調査により都道府県別に地方公務員の給与の実態を、賃金構造基本統計調査により都道府県別に主要産業の常用労働者の賃金の実態を、それぞれ明らかにしている。
1 地方公務員給与実態調査における都道府県職員の平均給与月額(男女計、全職種の平均額で諸手当を含めたもの)と、賃金構造基本統計調査における都道府県別の賃金(きまって支給する現金給与額で、産業計、男女計)を比較した場合、前者は後者を何パーセント上回っているか又は下回っているか。直近の数値により、都道府県ごとに給与及び賃金の金額と併せて示されたい。
2 1の比較において、賃金構造基本統計調査における都道府県別の賃金を企業規模一〇〇人以上(全産業、男女計)の場合に限定した場合にはどうなるか、1と同様に示されたい。
3 1の比較において、賃金構造基本統計調査における都道府県別の賃金を「金融・保険業」(企業規模計、男女計)に限定した場合にはどうなるか、1と同様に示されたい。

二、地方公務員給与実態調査では、特別区及び市町村の給与の実態も明らかにされている。

1 地方公務員給与実態調査における特別区及び市町村の平均給与月額(男女計、全職種の平均額で諸手当を含めたもの)の都道府県別の平均額と、賃金構造基本統計調査における都道府県別の賃金(きまって支給する現金給与額で、産業計、男女計)を比較した場合、前者は後者を何パーセント上回っているか又は下回っているか。直近の数値により、都道府県ごとに給与及び賃金の金額と併せて示されたい。
2 1の比較において、賃金構造基本統計調査における都道府県別の賃金を企業規模一〇〇人以上(全産業、男女計)の場合に限定した場合にはどうなるか、1と同様に示されたい。
3 1の比較において、賃金構造基本統計調査における都道府県別の賃金を「金融・保険業」(企業規模計、男女計)に限定した場合にはどうなるか、1と同様に示されたい。

三、政府は、現在、都道府県及び市町村の地方公務員給与と民間給与との格差を、どのような方法でどのように把握しているか。また、その把握の方法にどのような問題点があると考えるか。さらに、今後それをどのように改めるのか。

四、「基本方針二〇〇四」では、地方自治体の人事委員会の機能強化と在り方の見直しが打ち出されている。しかし、人事委員会の給与勧告制度の実態については明らかでない。

1 人事委員会が設置され、その勧告を踏まえて職員の給与が改定されている地方自治体をすべて示されたい。
2 人事委員会の勧告は完全に実施されているのか、人事委員会勧告の給与改定率と実際の給与改定率を、人事委員会を置く地方自治体ごとに示されたい。
3 人事委員会の勧告は、その対象が一般行政職等に限られると聞く。人事委員会の勧告を踏まえて給与水準の改定がされている地方自治体の職員数は全国で何人か。また、その数は全国の地方公務員の総数の何パーセントに当たるかを、全国の地方公務員の総数と併せて示されたい。
4 人事委員会の勧告がされない地方自治体では、どのような基準により職員給与水準が決定されているのか。

五、政府は、現在の人事委員会勧告による地方公務員の給与改定制度について、どのような問題点があると考えるのか。また、今後それをどのように改めるのか。

六、「基本方針二〇〇四」では、国が地方公務員の給与水準の参考となる指標を整備するとされ、それは地域の物価や生活費を反映したものとなると聞く。しかし、地域の物価や生活費の水準と公務員給与がどの程度乖離しているかは明らかではない。
 他方、生活保護法においては、厚生労働省告示により「生活保護法による保護の基準」が定められ、物価や生活費に応じて六段階の生活扶助基準(級地)が設けられている。
1 「生活保護法による保護の基準」による3級地-1及び3級地-2に含まれる地方自治体の総数をそれぞれ示されたい。また、そのうち、直近の統計で、ラスパイレス指数一〇〇以上の地方自治体の総数並びに該当する地方自治体の名称及び同指数をそれぞれの級地ごとにすべて示されたい。さらに、同指数九五以上の地方自治体についても同様に示されたい。
2 政府は、市町村職員の給与水準がその地域の物価や生活費の水準から大きく乖離している場合があることについて、どう考えるか。また、今後どのように是正を図るのか。

七、給与水準の参考となる指標を示すだけでは実効性が疑わしい。そこで、地方交付税を交付する際に、給与費に相当する部分については、物価や生活費を基にした補正係数により補正して交付すべきと考えるが、この方策についてはどのような問題点があると考えるのか。

  右質問する。