質問主意書

第158回国会(特別会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一五八第三号
  平成十六年三月二日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員中村敦夫君提出ETCに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中村敦夫君提出ETCに関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の長距離割引、時間帯割引及び特定区間割引を含め、「ノンストップ自動料金支払いシステム」(以下「ETC」という。)の利用者に特化した多様な料金施策は、料金所周辺の渋滞の解消及び環境の改善、料金徴収経費の縮減等の様々な目的の達成に資するETCの普及の促進を図るとともに、簡易に利用の時間や経路を把握できるなどのETCの機能を活用することによってきめ細かな料金の割引の円滑な実施が可能となることから、ETC利用者に特化した料金施策として実施することとされているものである。

二について

 ETCの一般運用が開始された平成十三年三月三十日以降におけるETCの保守費(以下「ETC保守費」という。)とETCの導入による料金収受員経費削減額(以下「経費削減額」という。)についてみると、平成十三年度においては、ETC保守費が経費削減額を約十七億円上回っているが、平成十四年度においては、経費削減額がETC保守費を約一億円上回り、平成十五年度以降五か年間の各年度における経費削減額からETC保守費を控除した額は、平成十五年度が約十一億円、平成十六年度が約五十六億円、平成十七年度が約八十三億円、平成十八年度が約百六十七億円、平成十九年度が約二百二十八億円となると予測している。

三について

 日本道路公団からは、ETCカード発行の契約を結んでいるクレジットカード会社に対して平成十五年十月に行ったETCの不正利用に対する聞き取り調査の結果、「クレジットカードの偽造や使用停止カードなどによるETCの不正利用は、一般のクレジットカードにおける不正利用よりも約十倍多く発生している」ような事実はないと聞いている。
 ETCは、ハイウェイカードやクレジットカードで採用されている磁気カードよりも安全性の高いICカードを採用しており、また、使用停止となったETCカードについては、システム上ETC利用ができないような措置が講じられていることから、偽造や使用停止カードなどによるETCの不正利用がクレジットカードより多くなることはないと考えている。

四について

 お尋ねの交通事故については、和歌山県警察において、所要の捜査を行い、平成十五年十一月二十一日、業務上過失致死事件として和歌山地方検察庁検察官に送致したものと承知している。
 また、運転免許に係る行政処分については、道路交通法施行令(昭和三十五年政令第二百七十号)別表第一の定めるところにより点数を付すべき違反行為は認められないとの判断がなされたものと承知している。

五について

 御指摘の「料金に係る社会実験」は、高速自動車国道に係る長距離割引及び首都高速道路に係る夜間割引を対象として、一般道路から有料道路への交通の転換等を促進する効果がどの程度あり、有料道路の事業の採算性にどのような影響を与えるのか、また、その交通の転換等により沿道環境の改善や渋滞対策等にどのような効果があるのかを把握するために行っているものであり、現在行われているETC前払割引のほか特定の路線や区間におけるETC利用者に限定した割引などを対象とするものではない。
 また、お尋ねの「二○○三年度のETC関連予算」のうちの「「料金に係る社会実験」予算である一○○億円」の内訳は、平成十五年度予算において、長距離割引の社会実験の実施に係る費用として九十億円、夜間割引の社会実験の実施に係る費用として十億二百万円である。

六について

 財団法人道路システム高度化推進機構(以下「ORSE」という。)の調査により把握している範囲では、お尋ねの五か国におけるETC利用に伴う費用負担の形態及びその金額は、別表のとおりである。

七について

 ORSEの調査により把握している範囲では、日本と同様に利用者が車載器を完全に買い取る方式を採用している国は、シンガポール、マレーシア及びタイであり、乗用車についての車載器の価格は、それぞれ、百五十シンガポールドル、路線により五十マレーシアリンギット又は二百二十マレーシアリンギット及び二千バーツとなっている。なお、それぞれ道路事業者から車載器を購入することになる。

八について

 御指摘のような措置を採った場合、まとめ買いした者が一万円券五枚及び五千円券一枚を分割して販売することにより、最大五千円の利益を得ることが可能となり、本来利用者が享受すべき割引による利益を利用者以外の者が享受することとなるおそれが大きいことから、不適当であると考えたものと承知している。

九について

 二輪車へのETCの導入に当たっては、四輪車と異なり、料金所の開閉バーと接触した際の安全対策や、車載器に耐振性、耐水性、盗難防止等の措置を講ずる必要があることなどから、国土交通省、日本道路公団、首都高速道路公団及び阪神高速道路公団では、平成十五年度において、料金所を一時停止することなく通行することができる現行のETCの方式(以下「現行ETC方式」という。)に加え、料金所での一時停止を前提とする御指摘のいわゆる「タッチアンドゴー方式」による試行運用を実施している。
 この試行運用の結果、仮に二輪車へいわゆる「タッチアンドゴー方式」が採用されたとしても、有料道路の全交通量の大部分を占める四輪車については、引き続き「現行ETC方式」の普及促進を図ることとしており、「二輪車用ETCとしていわゆる「タッチアンドゴー方式」を採用することは、ETCの目的に反するのではないか」との御指摘は当たらないものと考えている。

十について

 九についてで述べたとおり、現在、「現行ETC方式」といわゆる「タッチアンドゴー方式」の試行運用を実施しており、その結果を踏まえ、二輪車にいずれの方式を導入するかを決定することとしている。「現行ETC方式」が採用された場合には既存のシステムが利用可能であるが、いわゆる「タッチアンドゴー方式」が採用された場合には個々のシステムの仕様等の検討が行われることとなるため、お尋ねのICカードの有する機能についてもこの段階で確定されていくものと承知している。

十一について

 第三回答弁書(平成十五年七月二十九日内閣参質一五六第三○号)十一についてで述べたとおり、ETCは、料金所での料金支払いのための停車を不要とすることにより料金所の処理能力を向上させるものであり、料金所での停車が必要な御指摘の「ICカード技術を利用したプリペイド式」に比べ、料金所周辺の渋滞の解消及び環境の改善、料金徴収経費の縮減、多様な料金施策の実施等の様々な目的の達成に資するものであると考えている。したがって、有料道路の全交通量の大部分を占める四輪車について「ICカード技術を利用したプリペイド式」を採用することは、御指摘のように「ETCの目的達成に大いに資する」こととなるとは考えない。

十二について

 調査した範囲では、政府、特殊法人又は独立行政法人の運営する公共施設を利用する際、信販会社の審査を通った者のみが享受できるETC以外の割引として、独立行政法人日本芸術文化振興会(以下「振興会」という。)が運営する劇場等の主催公演への会員割引があると承知している。
 なお、本会員割引は、入会金及び年会費を支払い、振興会が組織する会員組織に入会することにより適用されるサービスの一つであり、会員が観劇チケットを購入する際、購入代金の後払いを認めていることから支払の確実性を担保するために、会員組織に入会する際に振興会の審査と併せて、信販会社の審査が行われているものと承知している。

十三及び十四について

 有料道路の料金の身体障害者等に対する割引(以下「障害者割引」という。)のETC利用時の適用に当たっては、まず、障害者割引の対象となる者(以下「障害者割引対象者」という。)は、車載器に個別に付与される番号(以下「車載器番号」という。)及びETCカードに個別に付与される番号(以下「カード番号」という。)を有料道路事業者が設置する窓口へ事前に登録することとし、その登録に当たっては、車載器は障害者割引の対象となる自動車(以下「障害者割引対象自動車」という。)に搭載されたもの一台に限定し、ETCカードはその名義人を障害者割引対象者本人に限定し(障害者割引対象者が未成年の場合は、本人が運転をしない場合においても障害者割引の適用が認められている重度の身体障害者等である場合についてのみ、その親権者又は後見人の名義のETCカードでの登録を認めている。)、かつ、一枚のみとするとともに、実際のETC利用時においては、車載器番号とカード番号がともに登録されたものと合致した場合にのみ障害者割引の適用を行うこととしていると承知している。さらに、障害者割引においては、二年の有効期間を設け、二年ごとの更新手続の際に障害者割引対象者である旨等の確認を行っていると承知している。
 なお、不正利用が行われた場合は、有料道路事業者は、障害者割引の二年間の利用停止を行うとともに、道路整備特別措置法(昭和三十一年法律第七号)第十四条の二又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百二十八条の規定に基づき、料金を不法に免れた者から、その免れた額のほか、割増金を徴収し、又は過料を科することとなると承知している。

十五について

 障害者割引については、ETCを利用するか否かにかかわらず、障害者割引対象自動車を障害者割引対象者一人につき一台としていると承知しており、「障害者と健常者の間に新たな差別を生じさせるもの」との御指摘は当たらないものと考えている。

別表