質問主意書

第158回国会(特別会)

質問主意書


質問第四号

新潟県刈羽村の電源三法交付金事業ラピカ等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年十一月二十六日

中村 敦夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   新潟県刈羽村の電源三法交付金事業ラピカ等に関する質問主意書

 電源三法交付金事業である新潟県刈羽郡刈羽村の生涯学習施設ラピカ(以下「ラピカ」という。)と源土運動広場について、これまで会計検査院などから多くの不正が指摘されてきた。その結果、不当支出二億六千万円及び加算金八千万円の合計三億四千万円が国庫に返納された。
 しかし、会計検査院の検査後も、公開された資料などから様々な新事実が発覚している。
 したがって、本問題は依然として解決に至っていないと考えざるを得ない。
 以上の観点から、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、ラピカ付帯施設の陶芸館長靴室のスチール製棚について

 陶芸館長靴室のスチール製棚は、入札時の設計書では四万円とされていた。しかし、交付金過払いの有無を判断する際、三十九万四千百円と約十倍に増額された。その後、十六万七千六百円に再見直しされ、購入されたことになっている。
 設計書によると製品仕様は既製品となっており、同仕様の既製品は、約一万円程度の価格で広く市場に出回っている。
 このように広く販売されている既製品を何十倍もの価格で購入することは、常識では考えられないことから、なぜ是正されていないのか、強い疑問を抱かざるを得ない。
1 政府は、広く販売されている既製品のスチール製棚について、交付金算定の検証の際に市場価格の四十倍もの価格に再設定した本件を、適切と考えるか。
2 政府は、広く販売されている既製品のスチール製棚について、合見積りを取らず一社の見積りのみで交付金単価を決定した本件を、適切と考えるか。
3 政府は、広く販売されている既製品のスチール製棚について、市場価格の約十六倍もの価格で購入した本件を、適切と考えるか。

二、ラピカの見積単価の不自然さについて

 ラピカ建設工事の工事費積算のための単価の多くは、見積りによって決定されている。そのうち、木製建具及びタイルの単価は、次のとおり三社による見積りで決定されている。
 木製建具の単価は、松岡製作所、森製作所、かなめの三社から見積りを得て決定されている。その項目数は、本館で五十三、茶室で三十五、陶芸館で二十五の合計百十三項目に及ぶ。しかし、採用単価が二万二千円から百八十五万円とそれぞれ異なるにもかかわらず、採用された松岡製作所を一として計算すると、森製作所は一・〇五、かなめは一・〇六と、見積価格差が一定比率となっている。
 また、タイルの単価は、エヌテックス、織部製陶、シンケンの三社から見積りを得て決定されている。その項目数は、本館で三十項目ある。しかし、一平方メートル当たりの採用単価が二千二百円から三万円とそれぞれ異なるにもかかわらず、採用されたエヌテックスを一として計算すると、織部製陶は一・〇五、シンケンは一・一〇と、見積価格差が一定比率となっている。
 このように見積価格差が一定比率となることは、確率的にあり得ないことから、なぜ是正されていないのか、疑問を抱かざるを得ない。
1 政府は、見積価格差が一定比率となっている本件について、把握していたか。
2 政府は、見積価格差が一定比率となっている本件について、適切と考えるか。
3 本件の木製建具及びタイルは、市場価格と比較して著しく割高と思われる。再積算して是正すべきだと考えるが、どうか。

三、ラピカの設計単価の不自然さについて

 公共事業の単価を決定する際、都道府県の指定した単価、建設物価や積算資料などの市場価格、三社からの見積りとの優先順位とするよう指導されていると聞く。
 しかし、ラピカでは、大半の単価が一社からの見積りで決定されているにもかかわらず、設計単価の決定手法を見直して積算することもなく、交付金決定に誤りがないとされている。
 このように設計単価の決定手法が見直されなかったため、市場価格と比較すると割高な工事費を追認したことになっており、なぜ是正されていないのか、疑問を抱かざるを得ない。
1 不正発覚後の検証において、新潟県の指定した単価、若しくは建設物価や積算資料などの市場価格を用いて再積算しなかった理由を明らかにされたい。また、設計単価の決定手法について、問題を指摘しつつも是正しなかったのはなぜか。
2 政府は、不正発覚後の検証において、完工事業を見積りによって単価の再決定をした本件を、適切と考えるか。
3 政府は、公共事業のコスト削減を重要な課題としている以上、ラピカの工事費積算を是正すべきではないか。

四、源土運動広場の使用不能状況について

1 政府は、源土運動広場のゲートボール場について、修繕工事を繰り返しているものの、恒常的に生じる大きな水たまりによってコートの半分が使用不能である事実を把握しているか。また、原因及び責任を明らかにした上で、是正すべきであると考えるが、どうか。
2 源土運動広場のゲートボール場について、設計後の地質調査によって、当初設計とはプレロード盛土の厚さ(増加重量)や軟弱層の厚さが全く異なることが明白となっていたにもかかわらず、当初の設計どおりに施工されていた。地質調査の結果を受けて、設計を見直すべきではなかったのか。
3 源土運動広場のゲートボール場について、設計後の地質調査結果を無視して施工したことが、地盤沈下及び水たまりの原因ではないのか。
4 源土運動広場のゲートボール場について、設計後の沈下動態観測によって、設計条件と実際の地盤状況に大きな隔たりがあると判明したにもかかわらず、当初の設計どおりに施工されていた。沈下動態観測の結果を受けて、設計を見直すべきではなかったのか。
5 政府は、源土運動広場のゲートボール場のトイレについて、既に傾きが生じ、その傾きが年々増大している事実を把握しているか。また、原因及び責任を明らかにした上で、是正すべきであると考えるが、どうか。
6 源土運動広場のゲートボール場のトイレについて、設計計算によると、先端支持と周辺摩擦を考慮した杭となっている。しかし、一九九六年の地質調査で先端支持層の傾斜を確認しながらも、考慮なしに施工されている。これは、適切な工事なのか。
7 圧密沈下の想定される層では、圧密沈下に伴い負の摩擦力が作用すると思われる。しかし、源土運動広場のゲートボール場のトイレでは、この点を考慮なしに施工されている。これは、適切な工事なのか。
8 政府は、源土運動広場の多目的広場及びその周辺について、回収済という刈羽村の説明と異なり、依然として多数の産業廃棄物が露出している事実を把握しているか。また、原因及び責任を明らかにした上で、是正すべきであると考えるが、どうか。
9 政府は、子ども用遊具周辺においてプラスチック網などの産業廃棄物が露出している本件を、国庫補助の公共事業として適切と考えるか。
10 源土運動広場の多目的広場及びその周辺における産業廃棄物について、施工監理者は産業廃棄物の存在を認識していなかったと主張する一方、施工者は産業廃棄物の存在を刈羽村に報告したところ同広場への埋設を指示されたと主張していると聞く。政府は、本件における設計業者、施工監理業者、施工業者及び事業主体である刈羽村の責任について、どう考えるか。
11 源土運動広場は、住民のスポーツ・レクリエーションのニーズに応える屋外施設として計画され、電源三法交付金で整備された。しかし、完工後五年を経ても完全な使用可能状況にない。政府は、本件について、交付先である新潟県及び事業主体である刈羽村に対し、是正を求めたか。求めたならば、その年月日を明らかにされたい。求めていないならば、なぜ求めないのか理由を明らかにするとともに、今後の方針について示されたい。

五、ラピカ及び源土運動広場の問題の説明責任について

 これまで指摘したとおり、ラピカ及び源土運動広場の問題について、新たな疑惑が生じている。よって、政府は、ラピカ及び源土運動広場をめぐる新たな疑惑に対して、今後とも調査し、説明責任を果たしていくべきであると考えるが、どうか。

  右質問する。