第158回国会(特別会)
質問第三号 ETCに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成十五年十一月二十六日 中 村 敦 夫
参議院議長 倉 田 寛 之 殿 ETCに関する質問主意書 これまで、三回にわたりETCに関する質問をしてきたが、依然として施策の合理性・正統性・妥当性を理解できない。むしろ施策への疑念が増している。 したがって、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目内及び各項目間の論理的整合性に注意しつつ、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。 一、ETCに特化した多様な料金施策について、長距離割引、時間帯割引及び特定区間割引は、高速道路進入時にインターチェンジ及び時刻をチケットに記録するため、ETCに特化せずとも実施可能である。なぜETCに特化した料金施策としているのか、合理的な理由を示されたい。 二、ETC導入によって削減できる料金徴収費用について、ETCの導入によって増加した運用及び維持のための費用を差し引いた上で、これまでの実績と今後の予測を年度ごとに示されたい。 三、報道によると、クレジットカードの偽造や使用停止カードなどによるETCの不正利用は、一般のクレジットカードにおける不正利用よりも約十倍多く発生しているという。偽造防止を理由に高額ハイウェイカードを廃止したことを踏まえ、ETCの不正利用に対する政府の所見を示されたい。 四、二〇〇三年九月一一日、阪和自動車道和歌山インターチェンジ料金所(和歌山県和歌山市栗栖)にあるETC専用レーンにおいて、レーン通過車両によって料金所職員がはねられて死亡するという痛ましい事故が発生した。この事故について、警察は、職員をはねた運転手に対し、刑事若しくは行政上の過失を問うたか。過失を問うたならば、その結果を示されたい。過失を問うていないならば、その理由を示されたい。 五、本年七月二九日に受領した「ETCに関する第三回質問に対する答弁書」(以下「第三回答弁書」という。)の「四について」によると、政府は「ETC利用者に特化した多様な料金施策については、(中略)有料道路の事業の採算性に影響を与えない範囲で行われている」との認識を示している。しかし、二〇〇三年度のETC関連予算を見ると、「料金に係る社会実験」一〇〇億円が計上されている。これは、明らかに「ETC利用者に特化した多様な料金施策」の損失を補てんするための予算であり、「有料道路の事業の採算性に影響を与えない範囲で行われている」とする第三回答弁書と矛盾しているのではないか。また、「料金に係る社会実験」予算である一〇〇億円の詳細な内訳についても併せて示されたい。 六、第三回答弁書「六及び七について」によると、「海外においても、ETCを利用するためには一定の費用負担が伴うことが一般的」としている。この答弁を踏まえ、主要先進国であるアメリカ、フランス、イギリス、イタリア及びオーストラリアの各国のETCについて、どのような費用負担形態でいくらの費用負担を伴っているのか、それぞれ明らかにされたい。 七、ETCを導入している国のうち、日本と同様に利用者が車載器を完全に買い取る方式を採用しているすべての国を明らかにされたい。また、車載器の最低価格はそれぞれいくらか。 八、第三回答弁書「十について」によると、高額ハイウェイカードの廃止について「あくまで偽造対策として実施される」としている。そうであれば、一万円券(一万五百円分)を五枚まとめ買いした場合に限り、五千円券(五千二百円分)一枚をセットとすれば、使用できる額面の合計が五万七千七百円となり、従来の五万円券の額面である五万八千円に及ばないまでも、ほぼ同等の割引料金とすることができ、偽造対策とサービス低下防止が両立できた。なぜ、このような措置を採らなかったのか。 九、現在、二輪車用ETCのモニター実験として、料金所での停車を必要とするいわゆる「タッチアンドゴー方式」が実施されていると聞く。しかし、第三回答弁書「十一について」によると、「ETCは、料金所での料金支払いのための停車を不要とすることにより料金所の処理能力を向上させるもの」として、いわゆる「タッチアンドゴー方式」の提案を退けている。二輪車用ETCとしていわゆる「タッチアンドゴー方式」を採用することは、ETCの目的に反するのではないか。 十、現在、ETCカードでいわゆる「タッチアンドゴー方式」に対応できるものは存在しない。いわゆる「タッチアンドゴー方式」を二輪車用ETCとして採用した場合、どのようなカードの導入を想定しているのか。 十一、いわゆる「タッチアンドゴー方式」を二輪車用ETCとして採用するならば、「ICカード技術を利用したプリペイド式」を導入することは技術的に可能となる。本方式は、信販会社の審査を通らずとも利用できることから、多くの高速道路利用者が利用可能となり、ETCの目的達成に大いに資すると思われるが、どうか。 十二、政府、特殊法人若しくは独立行政法人の運営する公共施設を利用する際、信販会社の審査を通った者のみが享受できる割引料金は、ETCの他に何があるか。 十三、二〇〇四年一月二〇日より、障害者割引制度がETC利用時にも適用されるようになると聞く。本制度では無人のゲートをノンストップで通過することになり、障害者本人以外が利用しても、現行のように障害者本人であることを確認できない。よって、不正利用の温床となると思われるが、その対策を示されたい。 十四、ETCを利用しようとする障害者が未成年である場合、ETC機能を持つクレジットカードは誰の名義で発行されることになるのか。障害者本人の名義でなくとも可とする場合、不正利用の温床となると思われるが、その対策を示されたい。 十五、ETC障害者割引制度の実施によって、障害者割引の受けられるETC利用車は一台に限定される。しかし、一世帯において複数の車を所有することやボランティアの車による送迎、ワゴン車などレンタカーを利用することなど、障害者割引の適用が一台に限定されるために、障害者割引を利用できなくなるケースが容易に想定される。これでは、ETCカードさえ本人のものであれば、どんな車に乗ってもETCを利用できる健常者に比べ、利便性の点で大きく劣り、障害者と健常者の間に新たな差別を生じさせるものと考えるが、どうか。 右質問する。 |